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居場所がなかった私──生きる希望を読者に届ける小説家に 2021年9月13日

  • 聖教電子版オリジナル連載〈POWER of WOMAN〉

 若手小説家として活躍する、京都府の笠原皐月さん=女子部本部長。昨年9月に大手出版サイトで、カテゴリ内の売り上げランキング1位を獲得。電子本は累計2万部購読され、現在、その小説のシリーズはスピンオフも含めて6作品まで続いています。彼女が描く作品は、時代小説やファンタジー等々。一人一人のキャラクターが感情豊かに生き生きと輝いています。

 笠原さんは語ります。「私がずっと願っていたこと。『居場所がほしい』。それがいつの間にか、かなっていた」と――。
 

「ここにいていいんだ」

 頭の中にあふれる物語を言葉に紡ぎ出す作業は、いつも深夜。一通り書き終えると、私はようやく安心して眠りにつくことができる。だから午前中はいつも眠い。

 幼い頃に両親が離婚。信心強盛な祖父母の元で暮らしながら、母は姉と私を育ててくれた。

 小さい頃から、人見知りで引っ込み思案。重いぜんそくを患い、体が弱かった私は、小学校・中学校でいじめの標的になった。

 中学3年の球技大会のことが忘れられない。バレーボールの練習中に、3回失敗してしまった瞬間から、チームメートに疎まれた。ボールが自分のところに飛んできても、「どいて!」と、他の子がレシーブしてしまう。私は、どんどんコートの外へ追い出されていく。「もう、あいつ、いらんよな」の周囲の声を聞いた時、私の居場所は完全になくなっていた。

 私は体育の時間が大嫌いになった。「いらない」と言われたこの学校から、消えてしまいたかった。

 「せめて高校くらいは、学校が大好きになりたい」
 進学の時、題目を一生懸命に唱えた。結果、自分が一番行きたい学校に合格できた。

 期待に胸を膨らませ始まった高校生活。最初の体育の授業は、バレーボールだった。「嫌やなぁ……」

 サーブの順番が回ってきた。みんなに迷惑をかけて嫌われたくない一心で、「私には無理。下手やから代わって」と断った。
 その時、友達は、「できる、できる!」「こうやって打つねんで!」と応援してくれた。
 言われるままにやってみると、何とかサーブが入った!どんなに失敗しても「どんまい!」「次いこう!」と励まし、ゲームの勝ち負けより私を受け入れてくれた。
 

皐月さんを温かく見守る祖父母と
皐月さんを温かく見守る祖父母と

 
 「よかったなぁ」。母は、私のたわいもない話を何でも聞いてくれた。
 私は、母が買ってくれた池田先生の著作やアニメのビデオが大好きで、本は何度も読み、ビデオは擦り切れるほど見た。

 「友とは鏡に映ったもう一人の自分である」との、池田先生の言葉が胸に響いた。

 母は私に言った。
 「あなたが誰かに笑いかけてほしいと思うなら、たとえ作り笑いでもいい。友だちに笑いかけてみなさい」

 それは、なかなか大変な挑戦だった。“みんなに笑いかけられるようになりたい”“変わりたい”。真剣に御本尊の前で祈るようになった。信心を強制されたことは一度もない。でも、全てを乗り越えていく力がこの信心にあることを感じていた。
 

夢を追いかける転機

 高校卒業後は地元で就職したが、社会にはさらにいろんな人がいた。人間関係に悩んだ。体調を崩しながらも6年間、働いた末、退職を決断した。最後は、職場の方々が別れを惜しんでくださり、感謝があふれた。再就職も考えたが、“今が夢を追いかけるチャンスかも”と思い始めた。

 「小説家になる」――それは長年、抱いていた夢だ。

 私は人と話す時、懸命に言葉を発するけれど、思いを伝え切れなくて、その後、何時間も何日も考え込んでしまう。それを手紙に書いて、相手に渡すことが常だった。

 私にとって、文字は特別なものだ。文字でなら、自分を際限なく表現することができる。いつしか、物語を書くようになり、登場人物に思いを語らせた。
 

 
 実は、高校生の頃から、本格的に小説を書きためていた。心の片隅で夢の実現を祈り続けてもいた。
 家族に相談すると、思いっきり背中を押してくれた。

 まず、出版社に自分の原稿を応募した。半年近く結果を待つことしかできない。選考から漏れた作品は、世に出すこともできない。
 私の生み出したものが誰の目にも触れられることがないなんて……どうせ無駄になるならと、電子書籍出版サイトにアップしようと決めた。

 どんどん作品を書いた。思うようにいかず、気持ちが焦る。
 「まだ書ける!」。何度も、何度も書き直した。書いては祈り、祈っては書いた。

売り上げランキング1位

 少しずつ読者が増えていった。昨年9月、ついに売り上げランキング1位! 自分が一つ掲げた目標を達成した瞬間だった。それ以上にうれしいのは、読者の方からの声。

 「待ってました!」「次の話、楽しみにしています」

 多くの作品がある中で一体誰が読んでくれるのか、不安で仕方がなかったけど……私が書いた、わが子のように大切な小説。それが誰かのもとに届いている。何かを感じてくれている。

 私が小説で伝えたいもの。
 「今、悩んでいるのは弱さではない。前に進もう。必ず乗り越えられるから」
 「見守っている人が必ずいる。受け止めてくれる人が必ずいるよ」
 「手を伸ばせば大空だって、つかむことができる」

 つらい記憶が消えるわけではない。でも自分が経験して感じたこと、この信心をしてきて救われたことを全部、行間に込めてきた。
 

仲間は宝物

 女子部の活動は楽しい。
 先輩と話せば、「なるほど」と教えてもらえることばかり。未来部には、「信心ってすごいんだよ」と伝えたい思いがあふれ出す。「皐月ちゃんと話すのがいつも楽しい」。笑顔で応えてくれる女子部の仲間は、私にとって宝物だ。
 

 
 振り返ると、最初は居場所がなくても、いつの間にか自分にとって一番いい所にたどり着いていることに気づく。すぐに形に現れなくても、つらい日々があっても、それは必ず意味のある時間だったと実感できる。

 小学校時代からの友人に、これまでの思いを語った時のこと。
 「なんで皐月ちゃんがそこまで明るいのか、知りたかった」と言い、「私も頑張りたい」と入会してくれた。

 これからも私は等身大で、一人でも多くの人に生きる希望を届けていきたい。小説の世界でも、現実の生活の中でも――。
 

 
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