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〈教育本部ルポ・つなぐ〉第7回=石垣島第1号の児童館 「遊び」を真ん中に
〈教育本部ルポ・つなぐ〉第7回=石垣島第1号の児童館 「遊び」を真ん中に
2024年8月25日
- テーマ:子どもの居場所②
- テーマ:子どもの居場所②
赤瓦の屋根より高く、白いカラーボールが飛んだ。沖縄の空の青にとけこんで、緑の芝生にストンと落ちた。「よっしゃあ!」と少年たちの声。プラスチック製バットを使った野球は、乱打戦の様相を呈している。
そばには、ドッジボールで白熱する小・中学生の姿も。鬼ごっこをする未就学の子、建物内でカードゲームを楽しむグループもいる。今月上旬、石垣島にある児童館は、夏休み中の子どもたちでにぎわっていた。0歳から18歳までが無料で使える施設である。
赤瓦の屋根より高く、白いカラーボールが飛んだ。沖縄の空の青にとけこんで、緑の芝生にストンと落ちた。「よっしゃあ!」と少年たちの声。プラスチック製バットを使った野球は、乱打戦の様相を呈している。
そばには、ドッジボールで白熱する小・中学生の姿も。鬼ごっこをする未就学の子、建物内でカードゲームを楽しむグループもいる。今月上旬、石垣島にある児童館は、夏休み中の子どもたちでにぎわっていた。0歳から18歳までが無料で使える施設である。
児童館の外の庭で小・中学生がドッジボールを楽しむ
児童館の外の庭で小・中学生がドッジボールを楽しむ
館長の山里世紀子さん(女性部副本部長)が案内してくれた。「ここは石垣市で最初の児童館なんです」。開所は2010年。当時、山里さんは子育て中の保護者と共に署名活動を行うなど、設立に奔走したという。
切実な声があった。共働き世帯が増え、ひとり親家庭も多い。「放課後や長期休み中の子どもの居場所が必要なのに、それがない」「精神的にも経済的にも苦しいけれど、相談できる所が分からない」。山里さんもひとり親として、経済苦の中、3人の子どもを育ててきた。市の相談員や創価家族にどれほど支えられたか。郷里に児童館を開所することは恩返しであり、「夢」でもあった。
保育士と幼稚園教諭の資格を生かし、児童館で働き始めた。2012年には「児童厚生一級指導員」の資格も取得。一般社団法人を立ち上げ、学童クラブやフードバンクなどの運営にも携わる。
児童館開所から14年。山里さんが大事にしてきたのは、「日々の遊びの充実」だ。「『子どもの居場所づくり』といっても、楽しくない場所に子どもは来ませんから」
館長の山里世紀子さん(女性部副本部長)が案内してくれた。「ここは石垣市で最初の児童館なんです」。開所は2010年。当時、山里さんは子育て中の保護者と共に署名活動を行うなど、設立に奔走したという。
切実な声があった。共働き世帯が増え、ひとり親家庭も多い。「放課後や長期休み中の子どもの居場所が必要なのに、それがない」「精神的にも経済的にも苦しいけれど、相談できる所が分からない」。山里さんもひとり親として、経済苦の中、3人の子どもを育ててきた。市の相談員や創価家族にどれほど支えられたか。郷里に児童館を開所することは恩返しであり、「夢」でもあった。
保育士と幼稚園教諭の資格を生かし、児童館で働き始めた。2012年には「児童厚生一級指導員」の資格も取得。一般社団法人を立ち上げ、学童クラブやフードバンクなどの運営にも携わる。
児童館開所から14年。山里さんが大事にしてきたのは、「日々の遊びの充実」だ。「『子どもの居場所づくり』といっても、楽しくない場所に子どもは来ませんから」
館内の壁には「今週のオススメしたい遊び」や「外遊び・中遊びの人気ランキング」が張り出されている。子どもたちから「やりたい遊び」について意見を募ったり、子ども同士で相談してイベントを計画したりする。
子どもにとって「遊び」は、自主性や創造性、社会性を身に付ける営みにほかならない。ユニセフ(国連児童基金)のレポートによれば、外遊びをする子どもほど幸福度が高くなるという。
だが、近年の子どもは「遊ぶ時間」「遊ぶ空間(場所)」「遊ぶ仲間」という“三つの間”を失っているといわれている。「だからこそ、異年齢の子どもたちが自由に集って遊べる児童館が、もっと必要なんじゃないでしょうか」(山里さん)
子どもが安心して集まれる場所は、保護者が誰かと安心してつながれる場所でもある。山里さんは何げない子育て相談も日常的に行い、深刻な問題がある場合は専門機関にもつなげてきた。
発達に特性のある小学生の息子のことで、悩む母親がいた。学校では他者との比較や成績という“評価”にさらされ、親子して自信を失うばかり。だが児童館に行くと、少年は“評価のない”遊びの中で生き生きとし始める。中学・高校と進むにつれ、児童館の後輩の面倒を見ることを通して、自信を育んだ。職員の手伝いも買って出た。「将来は保育士になる」と決め、勉強にも積極的になったという。
館内の壁には「今週のオススメしたい遊び」や「外遊び・中遊びの人気ランキング」が張り出されている。子どもたちから「やりたい遊び」について意見を募ったり、子ども同士で相談してイベントを計画したりする。
子どもにとって「遊び」は、自主性や創造性、社会性を身に付ける営みにほかならない。ユニセフ(国連児童基金)のレポートによれば、外遊びをする子どもほど幸福度が高くなるという。
だが、近年の子どもは「遊ぶ時間」「遊ぶ空間(場所)」「遊ぶ仲間」という“三つの間”を失っているといわれている。「だからこそ、異年齢の子どもたちが自由に集って遊べる児童館が、もっと必要なんじゃないでしょうか」(山里さん)
子どもが安心して集まれる場所は、保護者が誰かと安心してつながれる場所でもある。山里さんは何げない子育て相談も日常的に行い、深刻な問題がある場合は専門機関にもつなげてきた。
発達に特性のある小学生の息子のことで、悩む母親がいた。学校では他者との比較や成績という“評価”にさらされ、親子して自信を失うばかり。だが児童館に行くと、少年は“評価のない”遊びの中で生き生きとし始める。中学・高校と進むにつれ、児童館の後輩の面倒を見ることを通して、自信を育んだ。職員の手伝いも買って出た。「将来は保育士になる」と決め、勉強にも積極的になったという。
山里世紀子さん(中央の女性)が、児童館に来た子どもや母親たちと
山里世紀子さん(中央の女性)が、児童館に来た子どもや母親たちと
「せっかく児童館の取材に来たんだから、記者さんも」。そう山里さんに促され、遊びの輪の中に飛び込んだ。筋肉痛が心配だ。けれど「子どもたちと遊ぶ上で大事なのは、大人自身が“子どもに戻る”こと」らしい。
汗だくになって走り回る。ある小学生が、うれしそうに教えてくれた。「今度、家の近くに新しい児童館ができるんだ」
指定管理者に選ばれたのは、山里さんが代表を務める一般社団法人である。「未来の宝である子どもたちの居場所を、この島に」。夢がまた一つカタチになる。
「せっかく児童館の取材に来たんだから、記者さんも」。そう山里さんに促され、遊びの輪の中に飛び込んだ。筋肉痛が心配だ。けれど「子どもたちと遊ぶ上で大事なのは、大人自身が“子どもに戻る”こと」らしい。
汗だくになって走り回る。ある小学生が、うれしそうに教えてくれた。「今度、家の近くに新しい児童館ができるんだ」
指定管理者に選ばれたのは、山里さんが代表を務める一般社団法人である。「未来の宝である子どもたちの居場所を、この島に」。夢がまた一つカタチになる。
石垣島のヤドピケの浜(底地ビーチ)から海を望む。今から50年前の1974年2月、八重山を初訪問した池田先生が友と懇談し、励ましを送った場所でもある
石垣島のヤドピケの浜(底地ビーチ)から海を望む。今から50年前の1974年2月、八重山を初訪問した池田先生が友と懇談し、励ましを送った場所でもある
【ご感想をお寄せください】
kansou@seikyo-np.jp
※ルポ「つなぐ」では、子どもや保護者と心をつなぎ、地域の人と人とをつなぐ教育本部の友を取材しながら、「子どもの幸福」第一の社会へ私たちに何ができるかを考えます。
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