電子版連載〈WITH　あなたと〉　#HSP　#繊細さん　HSP専門カウンセラー・武田友紀さん

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電子版連載〈WITH　あなたと〉　#HSP　#繊細さん　HSP専門カウンセラー・武田友紀さん 2024年11月30日

感じ方は人それぞれ
自分の「好き」「嫌い」を大切にする
感じ方は人それぞれ
自分の「好き」「嫌（きら）い」を大切にする

　約5人に1人がHSPといわれています。
　「HSP」とは、Highly　Sensitive　Personの略語で、「とても敏感な人」という意味です。
　近年、その特徴や向き合い方などが注目されています。
　　
　HSP当事者にとって、生きやすい環境をつくるにはどうすればいいのか。
　自らも当事者であり、HSP専門カウンセラーの武田友紀さんに話を聞きました。（取材＝久保田健一、宮本勇介）

約5人に1人がHSPといわれている

　
■すてきな気質

　――武田さんは2018年、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる　「繊細さん」の本』（飛鳥新社）を出版され60万部のベストセラーとなりました。HSPへの世間の関心の高さがうかがえます。

　HSPは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念です。
　物事の小さな変化に気付いたり、周囲のわずかな音や光を感じ取ったりするなど、感じる力が強い気質です。
　　
　たしかに、HSPの人は、他の人よりも傷つきやすかったり、周囲の感情に振り回されたりすることが少なくありません。
　　
　ただ、私は、本を発刊して以来、「HSPはすてきな気質だよ」と伝えてきました。私は、親しみを込めて、HSPを「繊細さん」と呼んでいます。
　

　――“すてき”とまで言えるのは、どうしてですか？

　HSPの人は、周囲の環境の変化はもちろん、体調や気持ちなど、自身の内面のこともよく感じ取ります。
　HSPには、四つの性質（DOES）があります。
　　
　①深く考える（例「リスクをよく考え、慎重に行動する」「問題を放っておくことが苦手」）
　　
　②過剰に刺激を受けやすい（例「音や光、暑さや寒さ、痛みなどに敏感」「新しい環境に移ると、刺激過多でぐったりする」）
　　
　③感情反応が強く、共感力が高い（例「相手の感情を察しやすい」「事件や事故のニュースなどが苦手」）
　　
　④些細なことにも気付く（例「仕事上のミスや違和感に気付きやすい」「環境の変化によく気付く」）
　　
　HSPにはこの四つが全て備わっているといわれます。
　私は、これらは相手への思いやりや、幸せを深く味わうことにつながる大事な要素だと思っています。
　　
　HSPは病名や発達障がい名ではないため、自分がHSPか否かを知るには、自己診断テストが必要になります。
　よかったら以下のリンクから行ってみてください。
　

【HSP診断テスト】

　自分がHSPかどうかを診断できるサイト（アーロン博士のHSPセルフテスト）は、以下のリンクから。

　http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsp.html

HSPには「些細なことにも気付く」など四つの性質がある

　
　――気質を生かしていくためには、どうすればいいですか。

　私は、繊細さんと非・繊細さんを、よく桃とバナナで表現しています。
　　
　桃は、実が柔らかくて皮が薄い、繊細な人。バナナは、実が硬めで皮が厚く、繊細ではない人というイメージです。桃は皮が薄いので、同じ物事に遭遇してもバナナより刺激や衝撃を受けやすい。
　それなのに、無理して、桃がバナナのふりをするとどうなるか。
　　
　私は以前、メーカーに勤務し、社内一忙しい部署に在籍していました。
　“自分たちは精鋭だ。うちの部がこけたら会社が倒産する”。私は、こういった意識で働く同僚に囲まれ、皆に迷惑をかけたくない一心で、無茶な働き方を続けていました。
　　
　ある日の朝、出社しようとしたら涙が止まらなくなり、その日を境に会社へ行けなくなったんです。
　その後、アーロン博士の本に出合い、「私もHSPなんだ」と知りました。
　　
　繊細さんに必要なのは、痛みやストレスに耐えられるよう、自分をつくり変えたり、平気なふりをしたりすることではありません。
　　
　繊細な感覚をコンパスにして、自分にとって良いもの、悪いものを見分け、「私はこれが好き・嫌い」「こうしたい」という本音にどれだけ向き合えるかが大事なんです。
　“きょうのお昼は何が食べたい？”など、身近なところから自分の本音を探ってみてください。
　

■パフォーマンス重視に

　――誰もが本音を言える世の中っていいですよね。HSPの人が生きやすい社会を皆でつくっていくためには、どうすればいいでしょうか。

　感じ方は人それぞれだと知ってほしいです。
　　
　「気にし過ぎじゃない？」と相手の感覚を否定するのではなく、「そう感じるんだね」と認める。すると、「じゃあ、どうしたらいいんだろう？」と問題解決に視点が向きます。
　　
　これって、相手がHSPであろうとなかろうと、コミュニケーションにおいて大切なことですよね。

感じ方は人それぞれ

　
　――職場での配慮で心がけると良い点は？

　例えば、繊細さんの中には、職場での席の間隔が狭かったり、真向かいの席に人がいたりすると、仕事に集中できないという人がいます。
　　
　上司の方が繊細さんから相談を受けた際は、壁側の席にしたり、空室の時は会議室を使えるようにしたりしてみてほしいです。
　　
　一見、繊細さんだけを特別視しているようですが、彼ら彼女らのパフォーマンスが上がれば、部署・会社の業績もアップします。
　各人の力が発揮できるよう、パフォーマンス重視の視点を取り入れてほしいところです。
　　
　多様性が尊重され、誰もが笑顔で過ごせる世の中になるよう、私自身も尽力したいと思います。
　