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〈Seikyo Gift〉 「子宮頸部すりガラス細胞がん」制す母の覚悟〈生きるよろこび 信仰体験〉  2024年2月4日

  • 明日への命綱を信心でたぐり寄せる!

 【熊本市西区】忘れられない誕生日がある。13年前のその日も、家族の笑い声がにぎやかに響くはずだった。だが、主役である嶋田理枝さん(57)=区副女性部長=は、家族が集まると、がんが見つかったことを告げた。初めて、皆で泣いた誕生日会。希少がんである「子宮頸部すりガラス細胞がん」との闘いが始まった――。(2023年12月14日付)

5年生存率10%

 きっかけは、たまたま受けた子宮頸がん検診。生理不順があり、念のためと思い受診した。2010年(平成22年)8月のことだった。

 エコー検査を行った際、子宮に異常が見つかった。結果が出るのは9月10日。その日が自分の誕生日だったこともあり、“きっと大丈夫”と期待した。

 だが当日、子宮頸がんと診断される。後日、検体の結果も出るという。

 “何で、私が……”。驚きのあまり、声が出なかった。立とうとしても足に力が入らない。踏ん張って、ようやく病院の駐車場まで歩き、人目がないところで夫・雄二さん(58)=支部長=へ電話した。「がんだった」。電話の向こうで絶句したのが分かった。

 家に着いても、頭の整理がつかない。それでも、誕生日会を楽しみにしている子どもらのために準備を始めた。食卓の真ん中には、ケーキとフライドチキン。

 皆がそろうと、嶋田さんは口を開いた。「お母さん、がんやった」「え?」。視線が集まり、全員の表情が固まる。夫がこらえきれず、おえつした。子どもたちも泣き出した。

 嶋田さんは「泣くのは終わり。さあ食べよう」と笑顔をつくるが、会話は続かない。静寂の中、食べる音と鼻をすする音だけが響いた。

 その後の精密検査で「子宮頸部すりガラス細胞がん」と判明した。子宮頸がんの中でも数%という希少がんで、腫瘍がすりガラスのような細胞質を持ち、病変の進行が速く、放射線療法や化学療法が効きにくいとされている。再発率も高く、「5年生存率は10%」と告げられた。

 子どもたちの顔が浮かぶ。末っ子はまだ小学3年生。“あの子たちと離れたくない。まだまだ生きたい……”

師と共に戦う心

 家族の前では笑顔でいた。弱音を吐かなかった。でも、ふいに泣きたくなる。題目を唱えていても、時が止まったように長く感じた。

 苦悩を包み込んでくれる人がいた。女子部(当時)時代から共に笑い、共に涙してきた友。打ち明けると、一緒に泣いてくれた。そして、「絶対に死んじゃダメだよ! 子どもたちのためにも生きて生きて、生き抜くのよ!」と。

 心を蝕んでいた闇が晴れていく。命の奥から力が湧いてくるのを感じた。唱える題目に力がこもった。

1990年(平成2年)9月28日、池田先生が出席した熊本・大分合同の会合に参加した嶋田さん。「先生は“田原坂を歌おう”と提案してくださり、万感の励ましを送ってくださいました。闘病中、何度も、その姿を思い起こし、心の中で“先生”って叫んで、乗り越えてきました」
1990年(平成2年)9月28日、池田先生が出席した熊本・大分合同の会合に参加した嶋田さん。「先生は“田原坂を歌おう”と提案してくださり、万感の励ましを送ってくださいました。闘病中、何度も、その姿を思い起こし、心の中で“先生”って叫んで、乗り越えてきました」

 11月3日に入院。10日に、子宮と卵巣、リンパ節の切除手術。10時間に及んだが、無事に成功する。入院中は、池田先生の指導をむさぼるように読んだ。

 「弱い一念では病魔を破れません。“広宣流布のために師匠と共に”という『戦う心』を忘れては、『魔たよりをうべし』(新1620・全1190)となります」

 「病気が自分自身を見つめ、生命と人生を見つめる大きなきっかけになる場合がある。(中略)病気と闘うからこそ、人生の裏表もわかるし、不屈の精神力も鍛えられるのです」
 命に希望の灯がともる。“そうだ”とうなずくたび、祈りが深まる。“乗り越えてみせる”と誓いになっていく。

夫・雄二さん。妻を陰に陽に支えている。ロックミュージシャン・矢沢永吉の大ファン。子どもたちとライブに参戦する
夫・雄二さん。妻を陰に陽に支えている。ロックミュージシャン・矢沢永吉の大ファン。子どもたちとライブに参戦する

 家族の支えにも心から感謝した。夫の雄二さんは妻に代わって本紙の配達を。終わった後、1時間唱題し、仕事へ。

 子どもたちも、長女の美枝さん(29)=区池田華陽会キャップ=を中心に、長男・雄樹さん(26)=男子部ニュー・リーダー=と力を合わせて家を守ってくれた。

 術後に起きた排尿障害をコントロールする訓練中も、“早く家族のもとへ帰るんだ!”と懸命に。そして、1カ月の入院を経て退院を果たす。

長女・美枝さん。きょうだいたちをまとめる、しっかり者の長女。母が入院中、病院まで自転車で30分かけて通い、母から信心を学んだ
長女・美枝さん。きょうだいたちをまとめる、しっかり者の長女。母が入院中、病院まで自転車で30分かけて通い、母から信心を学んだ
長男・雄樹さん。“癒やし系”担当。「母の愚痴や弱音、文句は聞いたことがないんです。母は無敵です!」と
長男・雄樹さん。“癒やし系”担当。「母の愚痴や弱音、文句は聞いたことがないんです。母は無敵です!」と

 その後、定期的に検査をしていた11年11月、「転移の可能性が高い」と告げられた。がくぜんとした。

 帰宅すると、三女・梨花さん(22)=華陽リーダー=がいた。まだ小学4年。「どうだった?」と聞いてくる。「がんだった」と答えるのが精いっぱい。涙で目の前がかすんだ。娘もぽろぽろと涙をこぼしている。その手をぎゅっと握り締めると、心の中で叫んだ。“私は一家の太陽だ! 絶対に諦めたらいかん!”

三女・梨花さん。お笑い大好きで、行動派。家族のムードメーカー。いつもみんなを笑わせてくれる
三女・梨花さん。お笑い大好きで、行動派。家族のムードメーカー。いつもみんなを笑わせてくれる

 翌月、手術を受けると、転移ではなく、小腸の原発がんだと分かった。ただ、浸潤が進んでおり、ステージ3。小腸と大腸のつなぎ目を含む約70センチを切除し、抗がん剤を服薬した。

 医師からは「小腸のがんはなかなか見つからない。あと少しで手遅れでした」と説明された。子宮頸がんのことがなければ分からなかったという。“守られた”と思った。

「がんと診断された時、学会の先輩が『治ることは間違いないよ!』と曇りない、確信の言葉で励ましてくれました」と嶋田さん。報恩感謝の思いで同志のもとへ
「がんと診断された時、学会の先輩が『治ることは間違いないよ!』と曇りない、確信の言葉で励ましてくれました」と嶋田さん。報恩感謝の思いで同志のもとへ
太陽のように

 生かされた命――そう思うと、自然と体が動いた。同じように悩む友がいれば、話をじっくり聴いた。

 ある闘病中の友との語らい。話をしても、すり抜けていくのを感じた。自身の闘病体験を語ると、うつむいていた顔が上がり、目を合わせてくれた。

闘病中、義母の本田スミ子さん㊧が、家事などを支えてくれた
闘病中、義母の本田スミ子さん㊧が、家事などを支えてくれた

 もう一つ、病になって考えてきたことがある。子どもたちに信心をどう伝えるかだ。

 次女の友梨さん(24)=区池田華陽会サブキャップ=が高校生の時、「お母さんは信心を頑張ってきたのに、がんになってるじゃん。やってる意味あるの?」と、芽生えた疑問を打ち明けてくれた。

家族旅行や誕生日会など、家族みんなで盛り上がる仲良し家族(右から、長女・美枝さん、長男・雄樹さん、嶋田さん、夫・雄二さん、三女・梨花さん、次女・友梨さん)
家族旅行や誕生日会など、家族みんなで盛り上がる仲良し家族(右から、長女・美枝さん、長男・雄樹さん、嶋田さん、夫・雄二さん、三女・梨花さん、次女・友梨さん)

 嶋田さんは「あなたが本気で信心をやってみて、意味がないと思うなら、そう言えばいい。でも、周りの意見とか、ネットの情報をうのみにして言うのなら悲しい。お母さんは病気になったからって負けたと思ってないよ。病気に心まで負けちゃうことが不幸なの。あなたには、自分で実感して判断できる人になってほしい」

 友梨さんはその後、人間関係で悩んだ時、御本尊の前に座って祈った。悩みを解決できた時、母の言ったことが分かったという。

次女・友梨さん。繊細で几帳面。人の痛みを人一倍分かろうとする優しさにあふれている
次女・友梨さん。繊細で几帳面。人の痛みを人一倍分かろうとする優しさにあふれている

 その背中を見てきた4人の子どもは皆、母のことを語る時、誇らしげに言う。

 「太陽のように熱くて、温かい母は世界一です。この先、どんなことも乗り越えられる自信があるのは、母のおかげなんです!」

 嶋田さんは子宮頸がんと小腸がんの寛解後の19年、膀胱がんに。内視鏡手術で腫瘍を切除した。

 今は転移・再発もなく、半年に1度の検査を続けている。2年前からは、早朝の運送業のパートに出られるまでに、体力も回復している。

 「私の命綱、それは家族や同志、池田先生との絆でした。絶望の淵に沈みかけた時、それを祈りで、ぐっとたぐり寄せるんです。不安は消えません。でも、病に自分の人生を決めさせたくない。絶対に生きるって腹を決めると、あふれてくるのは感謝でした。病になったおかげで、私の願いが一つずつかなっていったから」

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