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未来のために今を戦う〈尊し。サブカル Vol.10〉 2021年7月22日

  • ウルトラマンが地球を離れる日

 題材が浮かばない――石(ONE MINUTE編集部員)はスランプに陥っていた。このまま連載を静かに終えようかと諦めかけたその時、脳裏にまばゆい光が煌めいた。その中から、赤い紋様をまとった銀色の巨人が。

 “ウルトラマン”

 石はおもむろにパソコンのキーボードに向かい、記事を打ち始めた。

ウルトラマンに申し訳ない

 特撮ヒーローにおいて、その名を知らぬ者はいないであろう「ウルトラマン」。1966年の「ウルトラQ」放送開始から、今年は55周年だ。

 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を手掛けた庵野秀明氏が企画・脚本の「シン・ウルトラマン」、平成ウルトラシリーズ「ティガ」の世界観を引き継ぐ「ウルトラマントリガー」など、新作が続いている。

 ジャリ(小さい頃※石だけに)の頃から見ていたウルトラシリーズが、今もなお作り続けられていることにエモみを感じつつ、歳を経てみるとその頃にはなかった視点で作品が見えてくる。

 ウルトラマンに、石は一縷の“申し訳なさ”のようなものを感じていることに気づいた。

“トラウマ回”のメッセージ

 アニメやドラマシリーズの中でも、特にシリアスな内容や暗い展開のエピソードを“トラウマ回”と呼ぶことがある。

 ウルトラシリーズにもそうしたエピソードが存在し、インターネット上で考察の対象になったり、小学校の授業に教材として取り上げられたりもしている。

 代表的なエピソードには、以下のようなものが挙げられる。


 <ウルトラマン(1966)>第23話「故郷は地球」

 宇宙開発計画の失敗で怪獣化してしまった人間・ジャミラ。その事実を隠そうとする国際会議を襲ったジャミラを、ウルトラマンが倒す。

 <ウルトラセブン(1967)>第42話「ノンマルトの使者」

 「人類よりも先に住んでいた」と主張する民族「ノンマルト」を、人類とは相いれない存在としてウルトラ警備隊が退治する。

 <帰ってきたウルトラマン(1971)>第33話「怪獣使いと少年」

 地球にやってきたメイツ星人(地球に敵意はない)と仲良くする少年を、周辺住民は迫害。メイツ星人が正体を表すと住民は一方的に殺害する。


 これらに共通するのは、人間に潜む“負の面”にフォーカスが当てられていること。ウルトラシリーズは、悪に立ち向かう“正義”を描くのと同時に、人間の持つ“危うさ”に警鐘を鳴らす作品でもあるのだ。

 石の感じた“申し訳なさ”は、時間を重ねていく中で感じてきた人の持つ“弱さ”への反省からくるものだったのかもしれない。

それでも人類が「好き」

 <ウルトラセブン>は1967年の放送後も、「平成セブン」と呼ばれる続編シリーズが制作されるほど、ファンの間でとりわけ人気が高い。

 理由はさまざまあるが、セブンの対峙する相手の多くが、他の星から来た「星人」という点にあるのではないかと石は考えた。
 
 人間の“信頼”につけ込んでくる者、仲間を傷つけられた復讐に来る者……。さまざまな手を使って飛来する「星人」たちのもつ事情は、人間の写し鏡のように観る者に迫ってくる。(「平成セブン」と呼ばれるシリーズでは、立場が逆転し人類側が侵略者と捉えられる描写もある)

 “初代”ウルトラマンの最終回。地球を離れるウルトラマンを迎えに来た仲間(ゾフィー)が問い掛ける。「ウルトラマン、そんなに地球人が好きになったのか」

 人間のあらゆる面に触れた上で、“それでも”「好きになった」とするセリフだと考えると、非常に深みのあるものに思えてくる。

いまこの瞬間の行動に

 その人間が織りなす社会は、平和を求める一方で、争い、傷つけ合う愚かな行動が絶えない。

 時々ふと、“平和はいったい、いつ訪れるんだろう”という疑問を投げ掛けたくなることがある。ウルトラマンは、それでも「好きな」人類を怪獣たちから守ることが、地球の平和につながると信じ続けてきた。

 3分間という限られた活動時間の中で、人間の持つ可能性に懸けて全力で立ち向かっていくウルトラマンの姿は、今この瞬間の行動に未来を開く力があると言っているように見える。

 どこまでも自分や、自分を取り巻く状況に絶望せず進んでいく勇気を“光の巨人”から教えられた気がした。

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