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口唇口蓋裂の支援をする“えみちゃん”の夢 連載〈Color My Days〉 2022年12月12日

 自分らしく生きる若者を紹介する電子版連載「Color My Days」。

 第5回は、口唇口蓋裂の当事者と家族を支援するNPO法人「笑みだち会」の代表を務める、小林栄美香さん=総大阪、総区池田華陽会サブキャップ=です。

■皆を笑顔にしたい

 高校時代、友達に「そのメーク、めっちゃかわいい」と褒められたことがうれしくて、ファッション雑誌を読みあさり、メークも懸命にスキルアップ!

 キラキラメークがすてきな栄美香さんは、NPO法人「笑みだち会」の代表として活動する。
 栄美香の「えみ」の名前と笑顔あふれる「友だち」をとって「笑みだち会」と決めた。

 コロナ禍の中、「笑みだち会」ではオンラインを活用し、毎月、交流会を開催してきた。口唇口蓋裂がある本人や、その家族が集い、日頃なかなか言えない思いを語り合う。

 口唇口蓋裂は、生まれつき、上唇と口蓋が裂けている病態。日本人では約500人に1人の割合で生まれているという。

 栄美香さん自身、幼い頃から手術や治療でつらい思いをしてきた。その経験も通して参加者に励ましを送る。

 時々、栄美香さんの母、美恵子さんも登場!(「どういうわけか、オカンめっちゃ人気なんです!」)
 親の立場から、明るく楽しく力強くアドバイスをしてくれる。

 「コロナ禍でオンライン開催が続いていますが、逆に、参加者は増えました。『画面オフ』で参加できるのも、いいのかも」

 この病気で苦しんできた自分が、誰かの笑顔の役に立てている――それが栄美香さんの喜びだ。

■病気に負けない自分に

 栄美香さんは重度の口唇口蓋裂だった。生後3カ月で、割れている唇を縫い合わせる手術を受け、成長段階に合わせて手術が繰り返された。

 顔は神経が集中している箇所だ。術後は激しい痛みと腫れに襲われる。手術の日は、怖くて仕方なかった。ストレッチャーに乗って手術室へ運ばれる時、「怖かったら泣いてもええんよ」と母が励ましてくれた。

 多感な中学時代は、他人の目を気にして苦しくなり、登校できなくなった。卒業式にも参加できず、校長室で1人、卒業証書を受け取った。高校は地元から離れたところに進学。仲のいい友達もでき、高校生活を謳歌できるはずだった。

 それでも続く過酷な治療。「なんで手術しなあかんの!!」と、思いが爆発した。

 普通の高校生はメークやファッションを楽しんでいるのに、私は普通のこともできない。

 そんな時、友達の1人が言ってくれた。

 「手術、頑張っておいで。栄美香が戻ってきたら皆と仲良くできるように、私が友達いっぱいつくっておくね」

 友達は口唇口蓋裂のことを気にせず、接してくれた。しかし、その友達も、別の悩みを抱えていた。人はそれぞれ苦しみを背負いながら生きている。自分だけじゃないんだ――初めてそう思えた。

 高校卒業後は、アルバイトをしながら治療を続けた。
女子部(当時)の先輩に声をかけられ、白蓮グループにも入った。池田先生の書籍『青春対話』を何度も読んだ。

 「ともかく『自分が太陽になる』ことです。そうすれば、すべての闇は消える。(中略)何があっても、『私は太陽なんだ』と、悠然と生きるのです。もちろん、太陽といっても、曇の日もある。しかし曇っていても、太陽は太陽だ。人間も、苦しんでいても、心は輝きを失ってはならない」

『青春対話1(普及版)』P26
『青春対話1(普及版)』P26

 (※上記の画像をダウンロードしたい場合はこちら

 ――この言葉に心が震えた。病気に負けない自分に変わりたいと真剣に祈るようになった。

■ポジティブに発信

 20歳の時、大きな手術を乗り越えて、自分にどんな使命があるのか、自分の人生をどう進んでいけばいいのかを考え始めた。

 「ポジティブに、この病気について発信する存在がいてもいいんじゃないか」と、インターネットでブログを始めた。
 自分らしく楽しく日常生活の様子を交えながら、これまでの症状や治療、感情も全て、ありのままを書きつづった。

 同じ病気の小学6年生からメールが来た。70歳の高齢者や、家族からも。治療に関する質問、病気に対する悩みや相談が多かった。
 一人一人に丁寧に返信コメントを書いた。共感することに重きを置き、つながり続けることが大事だと思った。

 批判するようなコメントもあった。「あえて公表する必要はないんじゃないか」と。
 栄美香さんは「皆の苦しむ場面がこれ以上増えないよう、啓発活動をもっともっと頑張りたいから」と精いっぱい答えた。

 口唇口蓋裂の当事者が実名で、顔を出して発信していることが知られるようになり、ブログは開始1カ月でアクセスランキング1位に。半年後にはテレビ番組にも取り上げられた。

 2020年、口唇口蓋裂の支援をするNPO法人「笑みだち会」を発足。
 コロナの感染が拡大してから始めたオンライン交流会には、アメリカやヨーロッパ在住の日本人からも参加者が。口唇口蓋裂の子を出産したばかりの女性が、病院から参加してくれたこともある。

 今後は、対面での交流を進めていきたいと考えている。
 「一番悩んでいるときに情報提供できるような相談窓口や、ホットラインを立ち上げたい」と、医療機関との連携も視野に入れる。

 栄美香さんは今、仕事で学童保育に携わっている。自分の姿を通して、多くの子どもたちにもこの病気を知ってもらう機会になればと思う。

 「私の知らないところで苦しんでいる人がたくさんいる。少しでもその人たちが、自分らしく輝くことができれば」――栄美香さんの夢は大きく広がる。

■ブログ
「私、重度の口唇口蓋裂です。(NPO法人 笑みだち会代表 小林えみか)」


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