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〈ターニングポイント 信仰体験〉 ファッションブランドのマーチャンダイザー(商品開発者) 2023年5月8日

  • 自分を信じることが
  • 夢へのスタートライン

 街を行き交う人のコーディネート、服の配色。SNSで見る、世界各国のファッションの投稿……。目に映る全てがアイデアの元。

 海野美月は、ファッションブランドの「マーチャンダイザー(MD)」として働く。洋服の企画立案からデザイン、価格設定、販売までの全てを担う仕事だ。
 トレンドを押さえながらも、理想の洋服やコーディネートを自由に思い描く。「かわいい」をお客に提供するためなら、妥協はしない。

 やりたいことよりも“安定”。小さい頃から勉強ができて、大学院で学んでいた優等生の兄。“兄のように生きないと”。そんなふうに思っていた。
 高校卒業後は、医療の専門学校へ。次第に感じる周りとの熱量の差。ぽつん、と一人だけ置いていかれる気がした。「自分で選んだ道なのに、情けない」。自分を追い込むほどに、心も体も、学校から遠ざかっていく。半年で休学した。

 「美月は今、何してるの?」。知り合いに会うと、必ずそんな会話になる。それが怖くて、人を避けるように。
 一日中、家から出ない日が増えた。自分の存在が恥ずかしかった。

池田華陽会の友と
池田華陽会の友と

 女子部(当時)の先輩が、何度も家に来てくれた。
 「もう、どうしたらいいか分からない。こんな状況からとにかく逃げたいんです」。涙のせいで、言葉が途切れ途切れになる。そんな美月に、先輩も涙を流しながら、真っすぐなまなざしで言った。「美月ちゃんが持つ宿命が変わらないと、今の場所から逃げても、同じことを繰り返すだけ。一緒に祈ろう!」

 ありのまま、御本尊と真剣に向き合った。祈ると、前向きな気持ちが込み上げてくる。変わりたい。次は、好きなことを仕事にしたい……。
 頭のどこかにあったけど、向き合ってこなかった思いが浮かんだ。

 小学生の頃、母の勧めで初めてファッション雑誌を見た。目に飛び込んだのは、ブランドのおしゃれなワンピース。モデルのきらきらした笑顔。初めての感覚にときめいた。「こんな服を作って、着てみたいな……」。次の日の学校で、友達と話すたびにこの“わくわく”を語り続けていた。
 「あの時の“ときめき”を私も提供したい。ファッションの道に進んで、自分の好きな洋服を作りたい!」。学校を退学し、新たな夢に向かって再び歩き始めた。

洋服作りの過程で、形や色味を自分の理想に近づけていく
洋服作りの過程で、形や色味を自分の理想に近づけていく

 2017年(平成29年)、地元・北海道の旭川で、メンズファッションの商品企画からネット販売までを行う会社に入社。イメージモデルやコーディネートを任され、懸命に働いた。
 入社から1年半が立った時、会社として初のレディースブランドが立ち上がることに。中心者は美月。これまでの仕事ぶりが評価され、念願かなっての抜てきだった。

 初めての洋服作り。1着作るのに、手間と時間がかかることを思い知った。色の違いや着丈、生地の素材……サンプルを見て触れて、メーカーと打ち合わせをしながら理想の洋服に仕上げていく。さらに、出来上がった洋服を着て、モデルとしてネットの販売ページにも登場する。先輩にしがみつき、がむしゃらに働いた。

 「思ってたのと違う」「着づらい」。どんなに頑張っても、会社に届くのは、お客から返品された洋服やクレーム。うまくいっていないことは、売り上げにもはっきりと表れた。
 数カ月たった頃、社内の先輩が一本の電話を取った。美月のブランドの取引先からだった。受話器を置いた先輩が一言。「“この状況が続けば、撤退してもらいます”って……」

 追い打ちをかけるように、一緒にブランドを担当していた先輩が退職。“ほとんど経験のない自分が、この先一人でやっていけるのかな”。責任の重さと不安に押しつぶされそうで、ご飯が喉を通らない。
 泣きながら御本尊に向かった。家族に心配をかけたくなくて、誰も見ていない時に、一人で。

担当ブランドのイメージモデルとしても活躍
担当ブランドのイメージモデルとしても活躍

 すがるように、スマホに手を伸ばした。女子部の先輩がLINEで送ってくれた、池田先生の言葉。
 〈世界のどこかに、君にしかできない使命が、君の来る日を待っている。指折り数えて待っている〉

 はっとした。

 “売れそうなもの”を作ろうとして、自分が心から納得できるものを作れていなかった。「“誰かや、何かのように”じゃない。自分が思う“かわいい”に自信を持って服を作ろう!」
 自由に、自分が着たいと思うデザインを描いた。社長に直談判し、ブランドの今後のビジョンを明確に訴え、販売ページに掲載する写真のイメージも変えた。自社の撮影スタジオの壁の色にもこだわり、モデルとしてのポージングも研究。より洗練されたイメージを目指した。

 ふと、仕事に対する自分の心が変わっていることに気付いた。
 「楽しくて、わくわくする!」
 1年後、売り上げは当初の5倍に成長。「かわいい」「こんな服がほしかったです!」。SNSでの反響も増えた。
 
 昨年、愛読している雑誌が初めて読者モデルを募集した。美月もエントリーすると、1000人以上の応募の中から合格。誌面やWEB、SNSへの掲載のほか、イベントへの出演もこなし、活躍の幅を広げている。
 会社での仕事と、読者モデル。北海道と東京を行き来しながら、息つく暇もない日々を走り抜いている。

 でも、遠くの誰かに「ときめき」を提供するための努力なら、何だってしたい。
 ファッションを通して、自分らしく輝くための一歩を踏み出す勇気を与えたい。自分に自信を持つことが、夢へのスタートライン。今は本気でそう思えるから――。

(北海道支社)

 うみの・みづき 北海道旭川市内のアパレル会社で、レディースブランドの責任者を担う。その傍ら、ファッション雑誌の読者モデルとして活躍。ファッションSNSのフォロワーは12万人を超える(5月7日現在)。華陽リーダー。

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