〈Seikyo　Gift〉　絵画と遊ぶ、豊かな時間〈幸齢社会〉 〈Seikyo　Gift〉　絵画と遊ぶ、豊かな時間〈幸齢社会〉 2024年4月7日

　美術館の楽しみは、鑑賞法を知ることで何倍にも広がります。今回は、絵画の楽しみ方を、アートと美術館の魅力を伝えるミニマガジン「パレット」の発行やアートツアーの企画などを手がける合同会社プラスリラックス共同代表・こしのきよみさんに聞きました。（2月28日付）

　美術館の楽しみは、鑑（かん）賞（しょう）法を知ることで何倍にも広がります。今回は、絵画の楽しみ方を、アートと美術館の魅（み）力（りょく）を伝えるミニマガジン「パレット」の発行やアートツアーの企画などを手がける合同会社プラスリラックス共同代表・こしのきよみさんに聞きました。（2月28日付）

　私は20年以上にわたり、シニアを対象とした、美術鑑賞ツアーなどに関わってきました。コロナの流行以降は、オンラインでも開催しています。
　鑑賞会には、アートの見方を知りたいと、普段鑑賞をしない人も参加されます。そんな方が、それまで一歩踏み出せなかった理由として挙げるのは？　「興味はあるけど、知識がないから……」。美術鑑賞に、見方の作法や、特別な知識が必要だと思い込んでいる人が多くいます。
　知識はあった方がいいでしょうが、なくても楽しめるし、見方の決まりもありません。ただ、自由に見ればいいと言われても、戸惑う人もいるでしょう。今回は、「好きな絵の前では、時間を忘れてしまう」――そんな、見方を伝授します。
　そもそも、若い人に比べ、シニアは、絵画に親しむ素地が整っています。絵を見た時、「田舎の風景に似てるな」とか「昔、旅行に行った〇〇を思い出す」「ベルばら（ベルサイユのばら）の洋服みたい」と、記憶とつながることはありませんか。豊富な経験が絵の入り口となり、わがこととなる親しさを生んでくれます。
　何も想起させない絵に出合うこともあります。言い換えれば、それは新しい世界の扉。長い人生でも触れたことのないものを味わうことは、他者理解を進め、自分の世界を広げてくれます。
　うれしいことに、多くの美術館では、シニア割引があり、お財布に優しいものです。最近は美術館に足を運ばなくても、スマホやタブレットで楽しめるオンラインギャラリーも充実しています。長時間立って鑑賞する必要はありませんし、海外などの作品も、座ったまま、家で見ることができます。

　私は20年以上にわたり、シニアを対象とした、美術鑑（かん）賞（しょう）ツアーなどに関わってきました。コロナの流行以（い）降（こう）は、オンラインでも開（かい）催（さい）しています。
　鑑（かん）賞（しょう）会には、アートの見方を知りたいと、普（ふ）段（だん）鑑（かん）賞（しょう）をしない人も参加されます。そんな方が、それまで一歩踏（ふ）み出せなかった理由として挙げるのは？　「興味はあるけど、知識がないから……」。美術鑑（かん）賞（しょう）に、見方の作法や、特別な知識が必要だと思い込（こ）んでいる人が多くいます。
　知識はあった方がいいでしょうが、なくても楽しめるし、見方の決まりもありません。ただ、自由に見ればいいと言われても、戸（と）惑（まど）う人もいるでしょう。今回は、「好きな絵の前では、時間を忘（わす）れてしまう」――そんな、見方を伝授します。
　そもそも、若（わか）い人（ひと）に比べ、シニアは、絵画に親しむ素（そ）地（じ）が整っています。絵を見た時、「田舎（いなか）の風景に似てるな」とか「昔、旅行に行った〇〇を思い出す」「ベルばら（ベルサイユのばら）の洋服みたい」と、記（き）憶（おく）とつながることはありませんか。豊富な経験が絵の入り口となり、わがこととなる親しさを生んでくれます。
　何も想起させない絵に出合うこともあります。言（い）い換（か）えれば、それは新しい世界の扉（とびら）。長い人生でも触（ふ）れたことのないものを味わうことは、他者理解を進め、自分の世界を広げてくれます。
　うれしいことに、多くの美術館では、シニア割（わり）引（びき）があり、お財（さい）布（ふ）に優（やさ）しいものです。最近は美術館に足を運ばなくても、スマホやタブレットで楽しめるオンラインギャラリーも充（じゅう）実（じつ）しています。長時間立って鑑（かん）賞（しょう）する必要はありませんし、海外などの作品も、座（すわ）ったまま、家で見ることができます。

ピーテル・ブリューゲル（子）　「農民の結婚式」 1630年/油彩、板　73.0×104.0cm 東京富士美術館所蔵

ピーテル・ブリューゲル（子）　「農民の結婚式」 1630年/油彩、板　73.0×104.0cm 東京富士美術館所蔵

　それでは、美術館に行ったつもりで、これから紹介する鑑賞法にお付き合いください。気になったものから、実践してみてください。会場は、展示室ごとに分かれています。
　まずは「ビュッフェスタイル」。あなたは、ケーキビュッフェで、置いてある順に、全部食べますか。おそらく、全体を見渡し、おいしそうな物を取りますよね。芸術も同じ。展示室に入ったら、心が反応する1枚を探します。
　どれもこれも良くて、決められない？　それでは「ウインドーショッピング」視点を追加。「おうちのリビングに飾るなら」を想定し探します。応用編は、飾る場所を「リビング」から「寝室」に変えたり、「〇〇さんへのプレゼント」という問いに変えたりする。質問によって、選ぶ絵画も変わります。
　1枚選んだら、その作品をじっくり鑑賞。まだ、絵の説明プレートを読んではいけません。
　映画や小説と同じく、ネタバレ禁止です。絵を見て「どんな画家が描いた？」「風景の季節、時代は？」「すてきな空は、どこの国？」と想像を巡らせます。
　細部を見るコツは「実況中継」。クロード・モネの「日傘の女」なら、「薄いスカーフで顔を覆った女性が青空を背にして立っています。巻いているスカーフは波打つように揺らめいて……」。
　実況中継法を授業で知った学生が、下校の風景で実践し、通い慣れた道なのに驚くほど新発見があったという話があるくらい、魅力的な方法です。
　また、勝手にタイトルも付けちゃいましょう。
　さらに、描かれた人物は、どんなことを話しそうですか。空想会話に挑戦。
　存分に味わったら、そこで初めてプレートを読み、再び絵を見ましょう。作者や作成年に正解はあっても、絵との会話はあなた独自の解釈。全てを解説に合わせる必要はありません。知識にとらわれると、自由な見方を忘れがち。お気を付けください。
　展示室を回り終わった後は、友達と一緒なら、絵の感想を交換しましょう。一人なら、帰ってから、家族や友達に感じたことを話します。感想を披露することで、さらに絵画への理解が深まります。

　それでは、美術館に行ったつもりで、これから紹（しょう）介（かい）する鑑（かん）賞（しょう）法にお付き合いください。気になったものから、実（じっ）践（せん）してみてください。会場は、展示室ごとに分かれています。
　まずは「ビュッフェスタイル」。あなたは、ケーキビュッフェで、置いてある順に、全部食べますか。おそらく、全体を見（み）渡（わた）し、おいしそうな物を取りますよね。芸術も同じ。展（てん）示（じ）室に入ったら、心が反応する1枚（まい）を探（さが）します。
　どれもこれも良くて、決められない？　それでは「ウインドーショッピング」視（し）点（てん）を追加。「おうちのリビングに飾（かざ）るなら」を想定し探（さが）します。応用編は、飾（かざ）る場所を「リビング」から「寝（しん）室（しつ）」に変えたり、「〇〇さんへのプレゼント」という問いに変えたりする。質問によって、選ぶ絵画も変わります。
　1枚（まい）選んだら、その作品をじっくり鑑（かん）賞（しょう）。まだ、絵の説明プレートを読んではいけません。
　映（えい）画（が）や小説と同じく、ネタバレ禁止です。絵を見て「どんな画家が描（えが）いた？」「風景の季節、時代は？」「すてきな空は、どこの国？」と想像を巡（めぐ）らせます。
　細部を見るコツは「実（じっ）況（きょう）中（ちゅう）継（けい）」。クロード・モネの「日（ひ）傘（がさ）の女」なら、「薄（うす）いスカーフで顔を覆（おお）った女性が青空を背（せ）にして立っています。巻いているスカーフは波打つように揺（ゆ）らめいて……」。
　実（じっ）況（きょう）中（ちゅう）継（けい）法（ほう）を授業で知った学生が、下校の風景で実（じっ）践（せん）し、通い慣れた道なのに驚（おどろ）くほど新発見があったという話があるくらい、魅（み）力（りょく）的な方法です。
　また、勝手にタイトルも付けちゃいましょう。
　さらに、描（えが）かれた人物は、どんなことを話しそうですか。空想会話に挑（ちょう）戦（せん）。
　存（ぞん）分（ぶん）に味わったら、そこで初めてプレートを読み、再び絵を見ましょう。作者や作成年に正解はあっても、絵との会話はあなた独自の解（かい）釈（しゃく）。全てを解説に合わせる必要はありません。知識にとらわれると、自由な見方を忘（わす）れがち。お気を付けください。
　展（てん）示（じ）室を回り終わった後は、友達と一（いっ）緒（しょ）なら、絵の感想を交（こう）換（かん）しましょう。一人なら、帰ってから、家族や友達に感じたことを話します。感想を披（ひ）露（ろう）することで、さらに絵画への理解が深まります。

　こちらから東京富士美術館のオンラインギャラリーが見られます

　こちらから東京富士美術館のオンラインギャラリーが見られます