〈能登　被災地は今〉　輪島市　堂畑勝二さん・ともこさん夫妻　 〈能登　被災地は今〉　輪島市　堂畑勝二さん・ともこさん夫妻　 2024年3月20日

堂畑勝二さん㊧と妻・ともこさん。夫婦二人三脚で人生の風雪を越えてきた（石川・輪島市内で）

堂畑勝二さん㊧と妻・ともこさん。夫婦二人三脚で人生の風雪を越えてきた（石川・輪島市内で）

　能登半島地震は、日本の宝である伝統工芸にも甚大な被害を与えた。
　
　国内三大漆器の一つに数えられる輪島塗。優美で華麗な柄が、多くの人を魅了してやまない。その産地である石川・輪島市の多くの工房が損壊した。高齢化が進んでいた担い手たちも他地域に移り住むなど、伝統産業は存続の危機にある。
　
　同市の堂畑勝二さん（能登圏・輪島支部、支部長）は、輪島塗の最後の仕上げである加飾の一つ「蒔絵」を40年にわたって手がける蒔絵師である。
　
　輪島塗が大きな岐路に立つ今、勝二さんはその現実と向き合いつつも、信心で培った不退の心で前を向く。「震災という大きな苦難を前に辛さもありますが、世界から輪島が注目されているからこそ、ピンチをチャンスに変えることができると信じています」
　

　能登半島地（じ）震（しん）は、日本の宝（たから）である伝統工芸にも甚（じん）大（だい）な被（ひ）害（がい）を与（あた）えた。
　
　国内三大漆（しっ）器（き）の一つに数えられる輪（わ）島（じま）塗（ぬり）。優（ゆう）美（び）で華（か）麗（れい）な柄（がら）が、多くの人を魅（み）了（りょう）してやまない。その産地である石川・輪島市の多くの工（こう）房（ぼう）が損（そん）壊（かい）した。高（こう）齢（れい）化（か）が進んでいた担（にな）い手（て）たちも他地域に移り住むなど、伝統産業は存（そん）続（ぞく）の危（き）機（き）にある。
　
　同市の堂畑勝二さん（能登圏・輪島支部、支部長）は、輪島塗の最後の仕上げである加（か）飾（しょく）の一つ「蒔（まき）絵（え）」を40年にわたって手がける蒔絵師である。
　
　輪島塗が大きな岐（き）路（ろ）に立つ今、勝二さんはその現実と向き合いつつも、信心で培（つちか）った不（ふ）退（たい）の心で前を向く。「震災という大きな苦（く）難（なん）を前に辛（つら）さもありますが、世界から輪島が注目されているからこそ、ピンチをチャンスに変えることができると信じています」
　

一筆一筆に魂を込めて。工房で作業する勝二さん

一筆一筆に魂を込めて。工房で作業する勝二さん

　20代の時、手作業できめ細かな絵を施した輪島塗の魅力に引かれ、当時の仕事を辞めて輪島に移住した。以来、妻・ともこさん（同圏・鳳至支部、支部女性部長）と二人三脚で、仕事に、輪島広布にと駆けてきた。
　
　勝二さんは昨年、直腸がんの診断を受け、手術。術後の経過は順調で、病魔を乗り越え新たな決意で進もうとした中での震災だった。幾重にも重なる苦難。しかし、勝二さんの胸には信心への確信が燃えている。深き祈りと不屈の行動が大悪を大善に変える――と。
　
　自ら被災しながらも、大切な輪島の同志のためにと一軒一軒足を運び、励ましを送っている。
　
　かつて池田先生は北陸の友へ贈った長編詩の中で、輪島塗の作業に光を当てて記した。「何事にも手をぬかず　一人そしてまた一人と　生命の宝塔を　開きゆく　あまりにも尊き労作業に私は合掌したい」（「山河遥か　北国の詩」）
　
　陰の職人に光を当てた師の言葉は、勝二さんの永遠の指針である。
　
　輪島塗の制作を続けることは、師への誓いを果たすことにほかならない。人生の幾山河を乗り越え、職人として生きてこられたのは、常に師弟共戦の闘魂があったからだ。
　
　先月25日、自宅兼工房で作業を再開した。地震の不安と向き合いながらも、一歩ずつ前へと進む。その歩みにこそ信仰者の魂の輝きがあると確信して。

　20代の時、手作業できめ細かな絵を施（ほどこ）した輪島塗の魅（み）力（りょく）に引かれ、当時の仕事を辞（や）めて輪島に移住した。以来、妻・ともこさん（同圏・鳳（ふげ）至（し）支部、支部女性部長）と二人三脚で、仕事に、輪島広布にと駆（か）けてきた。
　
　勝二さんは昨年、直腸がんの診（しん）断（だん）を受け、手術。術後の経（けい）過（か）は順調で、病魔を乗（の）り越（こ）え新たな決意で進もうとした中での震（しん）災（さい）だった。幾（いく）重（え）にも重なる苦（く）難（なん）。しかし、勝二さんの胸（むね）には信心への確信が燃えている。深き祈（いの）りと不（ふ）屈（くつ）の行動が大（だい）悪（あく）を大（だい）善（ぜん）に変える――と。
　
　自ら被（ひ）災（さい）しながらも、大切な輪島の同志のためにと一軒一軒足を運び、励（はげ）ましを送っている。
　
　かつて池田先生は北陸の友へ贈（おく）った長編詩の中で、輪島塗の作業に光を当てて記（しる）した。「何事にも手をぬかず　一人そしてまた一人と　生命の宝（ほう）塔（とう）を　開きゆく　あまりにも尊（とうと）き労作業に私は合（がっ）掌（しょう）したい」（「山河遥（はる）か　北国の詩（うた）」）
　
　陰（かげ）の職人に光を当てた師の言葉は、勝二さんの永遠の指針である。
　
　輪島塗の制作を続けることは、師への誓（ちか）いを果たすことにほかならない。人生の幾（いく）山（さん）河（が）を乗り越え、職人として生きてこられたのは、常に師弟共戦の闘（とう）魂（こん）があったからだ。
　
　先月25日、自（じ）宅（たく）兼（けん）工（こう）房（ぼう）で作業を再開した。地（じ）震（しん）の不安と向き合いながらも、一歩ずつ前へと進む。その歩みにこそ信（しん）仰（こう）者（しゃ）の魂（たましい）の輝（かがや）きがあると確信して。

勝二さんが手掛けた作品

勝二さんが手掛けた作品

勝二さんが数々の作品を生み出してきた自宅の工房

勝二さんが数々の作品を生み出してきた自宅の工房