【プロフィル】
みうら・てつろう リユース事業グループ・トリアイナの会長。一般社団法人全日本古物鑑定士協会代表理事。2010年にリユース業界に参入し、現在では15社を束ねるグループを率いる。2027年までに時価総額1000億円の企業づくりをビジョンにリユースの領域で幅広く活躍中。鑑定士養成学校「EyeJob」の運営など、業界の健全化と人材育成にも力を注いでいる。
今回のテーマは「つくる責任 つかう責任」
捨てるのが当たり前だった時代が、静かに終わりつつある。日本中に眠る「使われない財産」に光を当て、循環する経済をつくるーー。異端児と呼ばれながらリユース(再使用)業界の壁を打ち破ってきた鑑定士であり、現在、リユース事業グループ・トリアイナの会長を務める三浦哲郎さんが今、若者に問いかける。「あなたは、自分の未来を本気で想像したことがあるか」と。
――三浦さんにとって、リユースとはどのような仕事なのでしょうか。
単に、物を買い取って売る仕事ではありません。「価値を見極める仕事」だと思っています。
日本には、使われないまま眠っている財産が数多くあります。市場全体では100兆円規模ともいわれていますが、多くの人は、それを資産だと認識していない。使わなくなった瞬間に、「不要な物」だと考えてしまうからです。
でも、価値が消えたわけではありません。必要としている人が、別の場所にいるだけなんです。私たちの役割は、持ち主と市場をつなぎ直すことにあります。
現在は出張・店頭買い取りを起点に、企業間オークション、国内外販売、海外向けライブ販売まで一貫して手がけています。仕入れから販売までを自社で担うことで、物の価値をより正確に判断できる仕組みをつくってきました。
――三浦さんは19歳の時に飛び込みで入社した会社で営業職に就き、その後、独立しました。リユース業界に参入したきっかけは?
もともとは店舗設計や集客の仕組みづくりをしていました。2009年に大手買い取り店の出店支援をした際、市場を調査したら、日本に巨大な未開拓市場があると分かったんです。
当時、日本には数十兆円規模の資産が眠っているのに、流通はほんの一部でした。これは単なるビジネスではなく、社会の構造そのものが変わる産業になると思った。それでやっていた事業を全て譲ってリユースに集中しました。
■追い風では、実力は育たない
――参入当初の業界はどのような状況でしたか。
かなり閉鎖的でした。新規参入者は信用されず、市場に出した商品が買われないこともありました。でも、構造が古いということは、変えられる余地があるということです。ノウハウをマニュアル化して他社にも公開しました。1社だけ成長しても業界は変わらない。業界全体が成長し、仲間が増えることで制度や法律も動き始めました。
市場には追い風があります。でも追い風って怖いんですよ。市場が伸びているだけで、自分が成長したと錯覚してしまう。
私は水泳に例えるんですが、前に進むほど水の抵抗は強くなる。でも抵抗が強いほど筋力がつき、推進力になる。だからあえて向かい風の方向を選びます。それは新規事業でも同じです。近年は年間で10社近く、会社を立ち上げたり、関わったりしていますが、基本的には「困っている経営者」を探しています。
――え? うまくいっている会社への投資ではなくてですか?
普通はそう思いますよね。でも、私は逆で、銀行も貸さない、投資家も見放しているような会社に関わることが多い。最近も大阪で、経営が厳しくなったフィットネスクラブの相談を受けて立て直しに入りました。
ゼロから会社を作るより、立て直しの方が価値があると感じています。そこには雇用がありますよね。5人でも10人でも働いている人がいるなら、倒産させるより、もう一度再生させたい。
マイナスの状態にある人のエネルギーって、ゼロから始める人より強いんです。借金を背負って資金がショート寸前の経営者は、本気で変わろうとする。問題も自分の弱点も理解しているから改善が早い。
実際、借金を抱えた状態から1、2年で数億円規模の会社に成長したケースもあります。先週も打ち合わせをした社長は、株式価値が一年で数億円規模まで回復しました。
――向かい風にこそ大きなエネルギーがあるんですね。扱う業種は決めているんですか?
いや、特に。養蜂場にも投資しましたし、キャビア養殖にも関わっています。一見、リユースと関係ないように見えますが、全ては循環する経済をつくるためです。
リユースは、特定のターゲットが存在しない産業なんです。年齢や職業、所得層を問わず、社会のほぼ全ての人が関わり得る。だから一次産業からITまで、あらゆる業態とつながることができる。
それに、正直、勉強にもなる。自分の専門だけを見ていると、視野はどんどん狭くなる。全く違う産業に関わることで、経済の仕組みや人の動き方が見えてくるんです。
経営って結局、人と社会を理解する仕事だと思っています。知らない世界に入るほど、自分の判断の精度が上がる感覚がありますね。
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