第9回「これからのteam論」に登場いただくのは、世界トップクラスのビジネススクールであるスイス・IMDで教授を務める一條和生さんです。長年、一橋大学でも教壇に立ってきた日本を代表するリーダーシップの研究者の一人です。このほど、同大学の教え子の細田高広さんと共著で『16歳からのリーダーシップ』(日本経済新聞出版)を発刊。一條さんに現在のリーダーシップ論について聞きました。
〈インタビューまとめ〉
・自分らしさを発揮したリーダーシップが人を動かす。
・“自分の声”を聴くことが出発点。利他の視点で共感の関係を築く。
・レジリエンスとは前より良くなること。「勝つか、負けるか」ではない。「勝つか、学ぶか」。
――書店には「リーダーシップ」に関する書籍が数多く並んでいます。
リーダーシップの研究は、古代ギリシャのプラトンにまでさかのぼるほど、昔から関心のあるテーマです。現代でいえば、アップル創業者のスティーブ・ジョブズのようなカリスマは分かりやすい例です。ただ、彼を理想として、スタイルをまねしても長続きはしないでしょう。
最近の研究では、誰かの模倣ではなく、自分の価値観や生き方を軸にしたリーダーシップが、人を動かす力になることが分かってきました。重要なのは「自分らしさ」を発揮すること。これを「オーセンティック・リーダーシップ」と呼びます。「オーセンティック」とは「本物の」「正真正銘の」といった意味で、2023年にアメリカの大手出版社が“今年の言葉”に選ぶなど、注目されている価値観です。
力強くみんなを鼓舞して引っ張るカリスマや、チームを下支えするサーバント(召し使い)など、いろんなリーダーシップのスタイルがありますが、大事なのは、その人にとって噓偽りのない、自分らしいスタイルを見つけることです。だから、リーダーに向いてない人はいない。誰にでもリーダーシップがあるのです。
――リーダーシップは特別な人にあるものではないのですね。
その通りです。ですが日本では、リーダーシップは「長」が付いた人が執るもので、それがない人は関係ないと考えられがちです。「自分は部長じゃないからリーダーじゃない」などと思ってしまっている。そこに誤解があるのです。
優れた組織やチームは、さまざまな個性を持つ人たちが、場面ごとに異なるリーダーシップを発揮することが知られています。今、世界にはたくさんの問題が起きていて、それを特定の人に任せるだけでは解決できなくなっている。ゆえに、環境を守るために何かの分野でリーダーシップを発揮する人もいれば、災害の多い日本で災害救助とかボランティアでリーダーシップを執る人がいてもいい。自分だったら、この事柄について、こうしようと考えて、一歩前に出ることが、今の社会を機能させるためには不可欠で、問題の解決につながっていくのです。
――どうすれば「自分らしさ」を発揮できるでしょうか。
「自分は何が好きか」「何に喜びを感じるか」といった“自分の声”に耳を傾けることでしょう。今は朝起きてすぐにスマホでSNSをチェックしだして、一日中“他人の声”に振り回されがちです。だからスマホを触らない時間をつくるなど、意図的な習慣づけも必要かもしれません。
実際に“自分の声”を聴いてみて、「地域のために役立ちたい」でもいいし、「趣味をとことん突き詰めたい」でもいい。他の誰でもなく、自分自身の意思こそが、本当のリーダーシップの出発点です。だから、リーダーシップとは生き方そのものなのです。
この点を多くの人に伝えたいと『16歳からのリーダーシップ』を書きました。だからこの本は今16歳の人に、これから16歳になる人に、そしてかつて16歳だった人にも読んでもらいたいのです。親子で読んでもらってもうれしいです。