企画・連載

〈SDGs×SEIKYO〉 すてきな未来が待っている――絵本の読み語り活動 2022年10月5日

 福井県越前市の東眞美子さん=支部副女性部長=は、絵本の読み語り活動や、ラジオ、地元紙のコラム連載などを通して、幅広くSDGsの啓発に取り組んでいます。東さんが伝えたいものとは――。(今回はSDGsの4番目の目標「質の高い教育をみんなに」について考えます。取材=石塚哲也、内山忠昭)
 

この記事のテーマは「質の高い教育をみんなに」

 
 絵本の「読み聞かせ」は、想像力や思考力といった子どもの成長に欠かせない力を育むだけでなく、読み手と聞き手のコミュニケーションも生み出す。

 この“読み聞かせ”について、東さんは、子どもと向き合い、話や物語を“聞かせる”のではなく“語る”のだから「読み語りがふさわしい」という。「語りかけるから言葉がよく伝わり、語り手と聞き手の絆が強くなるんです」

 “どう読み語るのか”――東さんは図書館の絵本コーナーで1日かけて、聞き手をイメージしながら絵本を決めることもある。「絵本のページをめくることで、子どもの新しい世界の扉が開けるかもしれないので」
 

 
 高校卒業後、就職で京都へ。そこで友人から折伏を受け、創価学会に入会した。その後、母の病をきっかけに福井に戻った東さんは、1984年、夫・宗則さんと結婚。3人の子どもに恵まれた。

 89年、夫婦で焼き肉店を開業。当初は繁盛するも、少しずつ経営は赤字になり、別の仕事を掛け持ちしながら家計を支えた。仕事、子育て、経済苦……夫婦げんかも絶えず、「もうダメかもしれない」。
 

 
 折れかけた心の支えは、子どもたちとの時間だった。東さんは幼少期にいじめに遭い、よく図書室にこもっては絵本を開いた。

 ページをめくると知らない世界が広がった。夢があった。勇気をもらった。わが子にも同じ気持ちを感じてほしいと、東さんは、どんなに多忙でも絵本の読み語りを続けた。そして、いつしか「わーっ」と、うれしそうに集まる子どもたちの笑顔に癒やされていた。
 

 
 焼き肉店は開業から2年で廃業した。地域の学会の先輩は、池田先生の「婦人部は地域の太陽に」との指針を通して励ましてくれた。

 何をすれば太陽になれるのか。東さんは考え、祈る中で「絵本の読み語りを通して地域を明るくしたい」と、92年から読み語り活動を始めた。

 だが、当時は事業に失敗した直後。周囲には「一家が大変な時に絵本を読んでいられるなんて幸せね」と皮肉る人もいたが、地域の同志が「信心を貫いていけば大丈夫よ」と応援してくれた。
 

 
 読み語り技術を磨くため、行政主催の勉強会に何度も参加。地域の子育て支援センターや小中学校で活動を続ける中で、各種団体からも講演の依頼を受けるようになった。

 98年には、地元ラジオ局からのオファーがあり、自身の名前を冠したラジオ番組を持つこともできた。

 2018年、最愛の夫を病で亡くした。大きな喪失感を抱きながら、懸命に題目を唱えていたある日、手に取った新聞にSDGsに関する記事が掲載されていた。「誰一人取り残さない」という理念が目に留まる。
 

 
 振り返れば、0歳から100歳まで幅広い年代に応じた読み語り活動を30年間、続けてきた。「絵本を通じて、SDGsを表現できるかもしれない」

 SDGsの17の目標を分かりやすく伝えるため、テーマごとに関連した読み語りを行う「絵本でSDGs」を始めた。20年には「Office Higashi」を設立。同年、福井県が立ち上げた「ふくいSDGsパートナー」に加盟し、自治体やNPO団体とも連携し、福井の未来をつくる活動も展開している。

 絵本の読み語りは、「周りから見たら、ただ読むだけの簡単な作業に思えるかもしれません。けれど、私にとっては、聞き手の人と一緒に未来を創造していく大切な行動なんです」。絵本のページをめくるように、私たちも勇気の一歩を踏み出した、その先に、すてきな未来が待っているかもしれない。

 
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