RELATIONSHIP

「偶然の出会い」「寄り道」が人生を豊かに――作家 「イクサガミ」原作者 書店経営者 今村翔吾さん

電子版連載「著者に聞いてみよう」

 Amazonや電子コミックが台頭し、街の書店が約25年前に比べて半減しています。直木賞作家で、昨年11月にNetflixで配信され、世界的なヒットを記録したドラマ「イクサガミ」の原作者である今村翔吾さんが3月、新著『書店を守れ!』(祥伝社新書)を発売。書店経営者でもある今村さんに「読書の魅力」などを聞きました。

■帰宅せず全国の書店めぐり

 ――今村さんは著書『塞王の楯』で直木賞を受賞後、日本全国の書店めぐりをされたんですよね。

 僕の作品を売ってくれた書店員さんたちにお礼を伝えたくて、「僕に来てほしい書店があったら連絡ください。全部、行きます」と告知して、回ったんです。

 全国47都道府県の本屋にお邪魔し、どんな業態があるのか、仕入れの仕方などを教わりました。僕は当時、大阪の小さな書店の経営者でもあり、書店業界の厳しさは知っているつもりやったけど、さまざまな現場に身を置き、この目でじかに見ないと分からないことがあった。

 うれしい発見は、そんな中でも、各地の書店員さんがファイティングポーズを崩さず、諦めていなかったこと。というのも、減少傾向ですが、やっぱり書店ファンってまだまだ多いんです。改めて、おもろい、不思議な業界やな、って思います。

 あの旅でのあまたの出会いが、“もっと書店に深く関われ”と僕の背中を押し、今後の人生を決定づけたのは間違いありません。

 ――書店めぐりは4カ月ほどかかり、一度も帰宅されなかったらしいですね。執筆活動もある中、なぜ、アグレッシブな旅を敢行されたんですか。

 ぶっちゃけ、帰らない方が話題づくりになるから(笑)。「直木賞作家が全国の書店を回っている。本当に街の本屋って大変なんや」と、世の中が認識してくれたらええな、って。

 でも、関西エリアの書店を回る際、一度、自宅近くを通過した時、「帰りたい、帰りたい」って車内で騒いでね。近くのホテルに泊まるほど徹底してましたからね。

■本嫌いが、なぜ読書家に⁉

 ――今村さんは小さい頃、年間100冊以上を読む少年だったそうですね。そんな読書家も、元々は「本嫌い」だったとか……。

 僕、課題図書が苦手だったんですよ。課題図書って、言い方を変えたら、大人が子どもたちに読ませたい本でしょ。もちろん、良書で読むべき価値があるのは分かるんやけど、当時は押し付けられているように感じちゃって。

 でも、幼少期のある日、母に連れられて街の書店に行った際、『真田太平記』が目に留まってね。関西では秀吉が好かれていて、彼の力になった真田幸村が人気なのを子どもながらに知っていたんやと思います。「あれがほしい!」とおねだりして、夏休みの40日間で全巻読了しました。

 ――子どもたちには「本との出合い方」が大事ということですね。子どものために親ができることって何でしょうか。

 例えば、自宅のリビングに絵本を並べておくのはいいかもしれません。「これ読んだら?」と親は言わず、子どもがいつでも本を手に取れる環境を整えておくことが大事でしょうね。

 中には、「読書って、意味あるの?」と疑っている親御さんもいてます。以前、親子の集まりで、「本を読んでいる家の方が、生涯年収が上がる」というデータがあると紹介したら、親たち全員、自分の子どもに本を買い与えていましたね(笑)。

 読書って即効性はないんですよ。でも、スマホみたいにすぐ答えが出るものと違って、本は「すぐに答えが出せないもの」と向き合う時間をつくれるんです。その経験が、思考の土台を築き、後々の人生でじわっと効いてくるんやと思います。子どもがスマホを触り始める前に「本って面白い」と思ってもらえるかどうか。一つここを勝負点にして、子どもたちが本を手に取れる機会を増やしていってほしいですね。

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