企画・連載

〈SDGs✕SEIKYO〉 事例編 宿泊事業を通じた地方創生 2026年3月24日

 この前、父さんと商店街に行って、すごく楽しかったな!

 父さんが子どもの時は、ああいう昔ながらのお店がたくさんあったんだぞ。でも最近は、すっかり減っちゃったなあ。

 空き店舗が目立つようになったね。商店街が衰退している理由は高齢化や、店舗の老朽化とか、いろいろなことが考えられるみたい。

 慣れ親しんだ商店街がなくなるのは寂しいね。いい方法はないのかな。

 東大阪市にある“まちごとホテル”は、商店街を巻き込んだ、新しい観光のカタチを目指しているんだって!

 「SDGs×SEIKYO」の事例編「ちーちゃんと訪ねる ミライの現場」。今回は東大阪市でホテル事業を展開する「SEKAI HOTEL」の取り組みを紹介します。“まちごとホテル”と呼ばれ、地方創生の新たな形を生み出してきた同事業は、「日経MJ賞 最優秀賞」や、「ふるさとづくり大賞 団体表彰(総務大臣表彰)」など数々の賞を受賞しています。

 東大阪市の西部に位置する布施商店街。100年以上前に駅が誕生して以来、交通の要衝として栄えてきたこのエリアには、昔ながらの商店が軒を連ねている。
  
 鮮魚店や総菜店、飲食店など、地域の暮らしを支えてきた店が並び、店先には商品が所狭しと並ぶ。通りには買い物客が行き交い、住民が自転車でゆっくりと通り抜けていく。どこか懐かしい空気が漂っている。
  
 そんな商店街で今、注目を浴びている取り組みがある。商店街の中に点在する宿泊施設だ。
  
 「ここがホテルなんですか?」――そう思わず口にしてしまう。外から見ると、ごく普通の古い商店街の店舗。だが扉を開けると、落ち着いた色合いのインテリアに整えられた客室が広がる。こうした宿泊施設が、布施商店街のあちこちに点在しているという。

 取り組みを進めているのが、クジラ株式会社が手がける「SEKAI HOTEL」の事業だ。広報担当の北川茉莉さんはこう説明する。
  
 「わが社は“まちごとホテル”と呼ばれる分散型の宿泊施設を運営しています。商店街全体を一つのホテルに見立てているんです」
  
 宿泊客は近くの飲食店で食事を楽しみ、パン店や総菜店に立ち寄る。入浴は昔ながらの銭湯へ――。客室や大浴場、レストランを一つの建物に収める一般的なホテルとは異なり、街そのものを宿泊体験の舞台にするのが特徴だ。

地域観光のあり方を変えたい

 創業から18年を迎えたクジラ株式会社は、これまで不動産やリノベーション事業を展開する会社として発展し、8年前からホテル事業を始めた。現在は東大阪市を含む二つの都市で宿泊施設を運営している。
  
 北川さんによると、この事業の背景には「地域観光のあり方を変えたい」という思いがあったという。これまでの観光は、有名な観光地を巡る「周遊型」が主流だった。しかし、そうした目立った観光資源がない地域は人を呼び込めないのか――。そんな疑問が出発点だった。

 「大阪といえば、こんなイメージがありませんか? 活気のある商店街を歩いて、肉屋のおばちゃんからコロッケを買って食べ歩く。そんな体験、やってみたくないですか」
  
 こうした日常の風景こそが、旅の魅力になると考えた。宿泊客は予約時に「食べ歩きチケット」付きプランを選ぶことで、連携する飲食店を巡りながら食べ歩きを楽しめる。また提携店で食事のモーニングセットを味わったり、銭湯での入浴を体験したりするプランも用意されている。 
  
 こうした斬新な取り組みが注目を集め、これまでに多くのメディアで紹介されてきた。公式SNSのフォロワーは3万人を超えている。

衰退の危機感を抱いて

 現在、商店街の衰退が深刻な課題となっている。全国には1万2000以上の商店街があるが、そのうちの約7割が中小企業庁の調査に対して、来街者が「減った」と回答している。
  
 かつては多くの人でにぎわった布施商店街でも、空き店舗が目立つようになった。そう語るのは、商店街で創業70年を超える老舗和菓子店を営む奥裕輔さんだ。ホテルとは「食べ歩きプラン」の連携店として関わっている。
  
 商店街の変化には、以前から危機感を抱いていたという。ホテルの計画を聞いた時は、“少しでも状況が良くなれば”との思いを持った。「最近では、これまで来なかったような客層の人にも、少しずつ来てもらえるようになったと感じています」

 商店街でたこ焼きを販売する店主は、「ホテルは町の広告のような役割も果たしてくれています」と声を弾ませる。SNSなどを通じて布施の存在を知り、訪れる人もいるそうだ。
  
 「お客さんを増やすためだけではなく、街を良くしたいという思いで協力してきました。布施の街や東大阪を知ってもらうことに意味がありますし、長い目で見た時に街がどうなっていくかが大事だと思います」
  
 活発なSNSの活用や、インテリアが目を引く客室づくりなど、さまざまな工夫を生み出している背景には、平均年齢20代という若いホテルスタッフの存在がある。多くの社員が学生時代に地域コミュニティーや街づくりについて学んできたという。
  
 宿泊料の一部は町の活性化に当てられ、月に1度、子ども向けのイベントも開かれている。地域の交流の場としての役割も担っている。
  
 ホテルが描くのは、地域の暮らしの中に、訪れる人が自然と溶け込む街の姿だ。空き店舗や土地の活用について、地域の人から相談を受けることも多い。

 これからの展望について北川さんはこう話す。
  
 「私たちは、ただの“ホテル屋さん”ではなく、いい街をつくっていく“マイクロデベロッパー”のような役割を果たしていきたいと思っています」
  
 地域にある建物や店舗を生かしながら人の流れを生み出し、地元商店とも手を携えながら街づくりを推進する。こうした取り組みは、地域資源を生かしてコミュニティーを維持する、持続可能な街づくりのモデルケースとも言えるのではないだろうか。

この取り組みに関わるSDGsの主な目標

  
  
  
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