企画・連載

〈聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部〉第3回 縁の下の力持ち 2025年8月30日

 創価大学駅伝部の魅力と情報を伝える電子版連載「聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部」の第3回は、新潟・妙高高原での2次合宿に密着。今回は、選手たちを支える多くの“陰の力”を追った。〈12日付で掲載した第2回はこちらから〉

●「選手とゴールを目指せるのが喜びなんです」

 妙高で創大駅伝部を取材したのは今月19、20日。
 
 到着して、まず話を聞いたのは安達隆志主務(4年、関西創価高校出身)。「主務」とはマネジャーを束ねるポジションで、チームの陰の大黒柱だ。
 
 初対面の記者に対しても、爽やかな笑顔で取材に応じてくれた。

 元々は選手として入部したが、1年時の終わりに榎木和貴監督から「マネジャーとしてチームを支えてほしい」と声をかけられた。
 
 選手として走れない葛藤があるのではないか。そんな勝手な思い込みは、安達主務の次の言葉で吹き飛んだ。
 
 「駅伝を走る選手を支える今の立場は、誰もができるものじゃないと思うんです。だから、選手と一緒にゴールを目指せることが喜びであり、幸せなんです」
 
 毎年、チームの景色は変わる。今年は絶対的なエースがいないからこそ、皆が“俺がやる!”との強い気持ちを持って練習に励んでいるという。
 
 創大が目指すのは、勝ち続けることができるチーム。そのためには、選手と共にマネジャーが成長しなければならない――安達主務と話していると、強い覚悟が伝わってくる。

●一度は断ったコーチ就任

 密着初日の19日午後4時からは、ポイント練習が行われた。撮影の準備をしていると、記者と同じように選手たちにカメラを向ける人がいた。
 
 築舘陽介コーチだ。創大駅伝部時代は主将を務め、4年時には箱根駅伝で5区の山上りを任された。

 駅伝部のSNS用で撮影しているのだと思い、声をかけると意外な答えが返ってきた。
 
 「それもありますが、選手たちに見てもらったり、親御さんに送ったりすることもあります」
 
 選手には、自分の走る姿を見てモチベーションを上げてほしい。創大に送り出してくれたご家族には、感謝を届けたい。そんな思いを込めているという。
 
 実は築舘さん、一度はコーチ就任の打診を断っている。当時は一般企業に勤め、順調な社会人生活を送っていた。
 
 人生のキャリアを考えた時、果たして陸上界に携わることがいいのか……。その不安をどうしても拭い去ることができなかった。
 
 しかし、指導者として尊敬する榎木監督に声をかけられたことがうれしかった。母校で再び駅伝に関われるという喜びもあった。
 
 そして2年前、監督からの要請に応え、コーチに就く。
 
 「自分は榎木監督や川嶋伸次総監督のような経験もないし、指導もできません。でも、選手と年齢が近い分、“お兄ちゃん”的な存在になれる。選手と監督をつないでいきたいと思っています」
 
 コーチとして3回目の駅伝シーズンを迎える。「今、陸上が楽しくて、しょうがない」と話す笑顔が印象的だった。

●「体」だけでなく「心」もケア

 密着2日目(20日)。マネジャーたちの朝は早い。午前5時45分からの朝練習に向けて、日の出前から準備を進める。
 
 その後、1時間近いジョグが始まると、やはり安達主務も一緒に走っていた(取材班が1次合宿地の長野・菅平高原で見たという光景と同じだ)。
 
 「より近い位置で選手を支えていきたいんです」(安達主務)
 
 その姿勢が、選手との強い信頼関係につながっているのだろう。

 朝練を終えて宿舎に戻ると、何やらポジティブな言葉が聞こえてきた。
 
 「絶対、大丈夫!」
 「奇跡を信じて!」
 
 声の主は、清水剛トレーナー。これまで創大の選手をサポートし、今回の合宿もチームに帯同する。
 
 なぜポジティブな声かけを行うのか。「前向きな気持ちを伝えることも治療につながるからです」
 
 けがの選手や調子が上がらない選手の「心」と「体」の両面をケアする。それが清水さんの治療法だ。
 
 選手と接していて思うのは、榎木監督が大切にする「自主性」と「考える力」が根付いていること。治療にも一人一人が明確な目的をもって向き合っている。それが清水さんの実感だという。

●4年生マネジャーの思い

 再びマネジャーに話を戻したい。密着した2日間、とにかく驚いたのは、彼らの仕事量の多さだ。
 
 練習前の準備から始まり、選手のタイム計測や給水サポートと、休んでいる姿はほとんど見ることがない。
 
 一緒に走ったり、相談相手になったり、時には盛り上げ役を担ったり……。

 それでも記者が見たのは、マネジャー業務のほんの一部らしい。副主務の中村拳士郎さん(4年、鳥取城北高校出身)が教えてくれた。
 
 「選手が休んでいる時が、私たちの本当の“出番”です」
 
 タイムの集計作業、SNSやホームページの更新、記録会のエントリー等々、やることは膨大にあるという。
 
 マネジャーの中心を担う今年の4年生の人数は3人。昨年の半分しかいない。その分、1人当たりの負担は増えたが「選手が強くなって、良いタイムが出た時は、めちゃくちゃうれしいですね」と中村さんは言う。

 もう一人の4年生マネジャーは石橋さくらさん(神奈川・平塚学園高校出身)。
 
 平塚の生まれで、幼少期から箱根駅伝が身近にあった。中継所で選手を支えるマネジャーの姿を見て“駅伝は選手だけのものじゃないんだ”と感じ、創大への入学とともに駅伝部に入った。
 
 「あっという間の4年間でした。駅伝部で過ごす毎日は、本当にかけがえのない時間です。後輩に伝えられることは全て伝えたい」

●「あなたにとって、駅伝とは?」

 最後に、4年生マネジャー3人に質問をぶつけてみた。
 
 「あなたにとって、駅伝とは?」
 
 「箱根は小学校時代から憧れ続けた“夢”。支える側として臨む最後の駅伝シーズンを通して、強い伝統が続くチームを残したい」(安達主務)
 
 「やれることを全てやって、走る選手に“つなぐ”ことが自分にとっての駅伝」(中村副主務)
 
 「一人一人の思いが詰まった舞台。走った人も、走れなかった人も、裏方も、それぞれが強い思いをぶつける場所」(石橋マネジャー)
 
 どんなに強いチームも速い選手も、陰のサポートなしに実力を発揮することは難しい。創大が箱根常連校になった背景には、マネジャー陣の成長とスタッフの充実がある。それを改めて知る取材となった。
 
 今後も選手たちの活躍を追いつつ、「縁の下の力持ち」の奮闘にも光を当てたい。(豊)