秋田県北秋田市阿仁根子で800年以上受け継がれてきた「根子番楽」。2004年に国の重要無形民俗文化財に指定された同番楽で、篠笛奏者を務めるのが長田博子さん(45)=支部女性部長〈地区女性部長兼任〉。郷土芸能が今、地域コミュニティーに果たしている役割とは――。(今回はSDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」について考えます。取材=石塚哲也、外山慶介)
秋田県北秋田市阿仁根子で800年以上受け継がれてきた「根子番楽」。2004年に国の重要無形民俗文化財に指定された同番楽で、篠笛奏者を務めるのが長田博子さん(45)=支部女性部長〈地区女性部長兼任〉。郷土芸能が今、地域コミュニティーに果たしている役割とは――。(今回はSDGsの11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」について考えます。取材=石塚哲也、外山慶介)
この記事のテーマは「住み続けられるまちづくりを」
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太鼓、篠笛などの伴奏に乗せて舞う「根子番楽」は、武士を主人公にした舞が多く、古くから“根子に住む長男だけが受け継ぐもの”とされてきた。しかし、時代が進み、少子高齢化や過疎化も相まって、全ての子どもや女性、近年は近隣地域の住民も参加するようになった。長田さんは、篠笛奏者として舞台に立ち、後継の育成にも尽力している。
太鼓、篠笛などの伴奏に乗せて舞う「根子番楽」は、武士を主人公にした舞が多く、古くから“根子に住む長男だけが受け継ぐもの”とされてきた。しかし、時代が進み、少子高齢化や過疎化も相まって、全ての子どもや女性、近年は近隣地域の住民も参加するようになった。長田さんは、篠笛奏者として舞台に立ち、後継の育成にも尽力している。
根子で生まれ育った長田さん。番楽に携わる父・松夫さん(故人)は、口癖のように「世界へ根子番楽を発信したい」と語っていた。毎週のように番楽のメンバーとも“番楽の未来”について意見を交わす。そんな父も、番楽も、長田さんは誇らしく感じていた。
小学校の授業で学んだり、父の姿を見たりしてはいたが、高校卒業後、県の郷土芸能祭で観客席から見た根子番楽の舞台に、強く魅了された。
「テンポの速い、はやしの調べから生まれる勢いと、勇壮な舞。この素晴らしい郷土の宝を後世に残したい」と思い、根子番楽の練習に参加するように。当時は、はやしの吹き手が少なかったこともあり、22歳で篠笛奏者となった。
根子で生まれ育った長田さん。番楽に携わる父・松夫さん(故人)は、口癖のように「世界へ根子番楽を発信したい」と語っていた。毎週のように番楽のメンバーとも“番楽の未来”について意見を交わす。そんな父も、番楽も、長田さんは誇らしく感じていた。
小学校の授業で学んだり、父の姿を見たりしてはいたが、高校卒業後、県の郷土芸能祭で観客席から見た根子番楽の舞台に、強く魅了された。
「テンポの速い、はやしの調べから生まれる勢いと、勇壮な舞。この素晴らしい郷土の宝を後世に残したい」と思い、根子番楽の練習に参加するように。当時は、はやしの吹き手が少なかったこともあり、22歳で篠笛奏者となった。
8年後、結婚を機に根子の隣にある上小阿仁村へ。長男と長女を出産した。生活環境の変化、また、子どもたちの発育にも“周囲と違う”と感じられるところがあった。育児に追われ、番楽の練習からも足が遠のいた。そんな時、長田さんは一つの出あいを得る。創価学会のある会合で信仰体験を聞いたのだ。
父が番楽に勝るとも劣らず、人生を懸けていたのが信心だった。長田さんも10代から未来部担当者の女子部(当時)の先輩に励ましてもらいながら、学校生活、就職、転職と、自身の悩みを信心で乗り越えてきた。
会合で聞いた体験発表は、同世代の友が障がいのあるわが子と歩む決意と、その日々の中に希望を見いだす内容だった。会合からの帰路、長田さんの心は軽くなっていた。
“私は独りじゃない”
人生の課題と向き合う仲間と縁して、自他共に元気になれる――創価学会という存在に感謝した。会合に誘ってくれた先輩にも。そして池田先生の“地域でなくてはならない人に”との指針を胸に刻み、“私も、人と人をつなげる役割を担いたい”と祈り始める。
8年後、結婚を機に根子の隣にある上小阿仁村へ。長男と長女を出産した。生活環境の変化、また、子どもたちの発育にも“周囲と違う”と感じられるところがあった。育児に追われ、番楽の練習からも足が遠のいた。そんな時、長田さんは一つの出あいを得る。創価学会のある会合で信仰体験を聞いたのだ。
父が番楽に勝るとも劣らず、人生を懸けていたのが信心だった。長田さんも10代から未来部担当者の女子部(当時)の先輩に励ましてもらいながら、学校生活、就職、転職と、自身の悩みを信心で乗り越えてきた。
会合で聞いた体験発表は、同世代の友が障がいのあるわが子と歩む決意と、その日々の中に希望を見いだす内容だった。会合からの帰路、長田さんの心は軽くなっていた。
“私は独りじゃない”
人生の課題と向き合う仲間と縁して、自他共に元気になれる――創価学会という存在に感謝した。会合に誘ってくれた先輩にも。そして池田先生の“地域でなくてはならない人に”との指針を胸に刻み、“私も、人と人をつなげる役割を担いたい”と祈り始める。
長田さんの仕事は障がい者福祉施設の介護職だが、その知識を求められ、ママ友の相談に乗るようになった。時には、行政の支援先等も紹介した。
番楽にも再び足を運ぶようになった。
「人と人をつなぐという使命を、自分の中で決めてから、どんなことにも精力的になれたと思います」
根子に生まれ育った人、結婚等で近隣地域に出た人、Iターンで根子に移住してきた人。いろいろな人々を、番楽を通してつなげたい。根子出身でありながら、結婚して他地域に住み、番楽に関わる長田さん自身が、さまざまな垣根を越え、人々の心を結ぶ存在になった。
根子番楽の関係者はこう語る。
「伝統を変えたくない人もいれば、新しいことをやりたい人もいる。長田さんは、そんな私たちの架け橋なんです」
長田さんの仕事は障がい者福祉施設の介護職だが、その知識を求められ、ママ友の相談に乗るようになった。時には、行政の支援先等も紹介した。
番楽にも再び足を運ぶようになった。
「人と人をつなぐという使命を、自分の中で決めてから、どんなことにも精力的になれたと思います」
根子に生まれ育った人、結婚等で近隣地域に出た人、Iターンで根子に移住してきた人。いろいろな人々を、番楽を通してつなげたい。根子出身でありながら、結婚して他地域に住み、番楽に関わる長田さん自身が、さまざまな垣根を越え、人々の心を結ぶ存在になった。
根子番楽の関係者はこう語る。
「伝統を変えたくない人もいれば、新しいことをやりたい人もいる。長田さんは、そんな私たちの架け橋なんです」
根子番楽に携わって23年。長田さんは地道に番楽経験者に声をかけ続け、女性の篠笛奏者も増えた。また根子周辺の地域も含めて、小・中学校で、郷土芸能について学ぶ「ふるさと学習」が行われ、後継者も着実に増加。長田さんの2人の子どもたちも舞台を見て「かっこいい」と番楽を始めた。
根子番楽に携わって23年。長田さんは地道に番楽経験者に声をかけ続け、女性の篠笛奏者も増えた。また根子周辺の地域も含めて、小・中学校で、郷土芸能について学ぶ「ふるさと学習」が行われ、後継者も着実に増加。長田さんの2人の子どもたちも舞台を見て「かっこいい」と番楽を始めた。
長田さんは語る。
「これからも根子と関わって、番楽と関わっていきたい。先輩たちが誇りを持って伝承してきた番楽を、若い子たちにも伝えて、みんなで育てていきたいんです」
地域に暮らす人と人が出会い、共に生きる喜びや楽しさを分かち合う。郷土芸能に参加し、守ろうとする営みそれ自体が、「住み続けられるまちづくり」なのだと、取材を通して学んだ。
長田さんは語る。
「これからも根子と関わって、番楽と関わっていきたい。先輩たちが誇りを持って伝承してきた番楽を、若い子たちにも伝えて、みんなで育てていきたいんです」
地域に暮らす人と人が出会い、共に生きる喜びや楽しさを分かち合う。郷土芸能に参加し、守ろうとする営みそれ自体が、「住み続けられるまちづくり」なのだと、取材を通して学んだ。
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写真で見る「根子番楽」と「根子集落」
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