「偏差値より変さ値」――。鎌田實さんが20年以上、全国の中学生や高校生に語り続けてきた言葉だ。学力の偏差値ではなく、自分の「変さ」こそが生きる力になる、という信念である。今年3月、潮出版社から刊行された『女の“変さ値”』は、「ガラスの天井」を破ってきた10人の女性たちの生きざまをつづった一冊だ。本書に込めた思いを鎌田さんに聞いた。
「偏差値より変さ値」
――「変さ値」という言葉、初めて聞いた方も多いと思います。どんな思いから生まれた言葉なのでしょうか。
「変さ値」とは、人とは違う自分らしさを、生きる武器としてとらえた言葉です。僕が学生だったころから、子どもたちは偏差値で行く学校が決められていました。何がしたいか、どんな職業に就きたいかより、偏差値で人生が決まってしまう。僕はそれがおかしいんじゃないかとずっと思っていたんです。
――今回、なぜ「女の“変さ値”」というタイトルにされたのですか。
20年ほど前から、若者への講演を重ねる中で、やがて働き盛りの中高年やシニアの方にも「変さ値」を届けたいと考えるようになっていました。自分を縛るしがらみや思い込みから解放されてほしいと思うようになったんです。
ただ正直、男性の自分が「女の“変さ値”」と言うことへの不安感はありました。言葉が強すぎて誤解を招かないか、男の作家がこういう表現をすること自体どうか、と。それでも「変さ値」という言葉が広がり、読んでくださる方々が自分らしく人生を生きるきっかけになればと思い、タイトルにしようと決めました。
「普通」を選ばない
――「変さ値が高い」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
大事な局面で、当たり前の選択をしないことだと思っています。阿川佐和子さんは40歳を目前に、一番売れている時期にアメリカへ渡ります。黒柳徹子さんも人気絶頂の38歳の時にニューヨークへの留学を決めました。普通なら「今が稼ぎ時だ」「ポジションを失うのが怖い」としがみついてしまう場面でしょう。しかし、人生において大事なことは何かを見極め、踏み出せる人が、変さ値の高い人なんです。
加藤登紀子さんのお母さんは、台風で家の屋根が吹き飛んだ時に、登紀子さんを呼んで「空がきれいよ」と言いました。一番困った時に、一番大事なものに立ち返ることができる。それも女性の強さだと思いますね。そういう地に足のついた強さが、「ガラスの天井」を突き抜ける力になるんじゃないかと感じています。