これからも町は変わり続ける。その変化に向き合いたい。
石川県珠洲市の海沿いに立つ銭湯「海浜あみだ湯」。昨年1月の能登半島地震の発生後、いち早く営業を再開し、多くの人が利用しました。新谷健太さんは、アートコレクティブ(アーティストが集団で活動すること)としての活動を続けながら、あみだ湯の運営責任者を務めています。震災からもうすぐ2年を迎える今の思いを聞きました。
●「生きた心地がしたよ」
――「海浜あみだ湯」は震災が起きてから、わずか18日後に営業を再開しました。
地震の被害で、多くの人が避難所での生活を余儀なくされました。その時に心配されたのが、衛生面の悪化による災害関連死です。
実際、インフラへの影響は大きく、一般家庭の水道復旧には3カ月、長引くと半年はかかるといわれていました。すると、お風呂に入れず、シャワーも浴びられない日が続くかもしれません。公衆浴場は市民の公衆衛生を守る基本的な施設なので、できるだけ早く再開したいと考えました。
幸い、あみだ湯では水道水ではなく井戸水を使用していたこと、また木材を燃やして水を温めていたこともあって、水道やガスがダメージを受けた中でも営業再開にこぎつけることができたのです。
珠洲に移住してからの8年間で、私は多くの人に支えてもらいました。その人たちが困っている今、恩返しをしたいという思いが、再開に向けた原動力になりました。
――多い時には1日600人が訪れたそうですね。とても喜ばれたのではないでしょうか。
そうですね。なかには1カ月ぶりに湯船に入れたという方もいて、「生きた心地がしたよ」「自分の体がここにあることを実感できました」という声も聞きました。
お風呂に入るという行為に、自分の身体を確かめたり、生きていることを実感できたりする役割があるのだと、改めて感じました。
――その後はあみだ湯も改修工事を重ねたと伺いました。現在の状況を教えてください。
地震で断層がずれてしまったようで、震災前と比べて地下水のくみ上げ量が、かなり減ってしまったんです。足りない分は水道水を追加しているのですが、そうすると料金がかさむので、ギリギリのところでバランスを取りながら営業しています。
そうした状況ですが、平日でも100人ほど、週末は150人ほどの方にご利用いただいています。地元の常連の方たちが多いのですが、ほかにもボランティアで珠洲市を訪れた方や、解体工事のために来ている業者の方も足を運んでくださっています。