エンターテインメント

〈舞台〉 藤山直美主演「錦秋喜劇特別公演」 2024年9月19日

10月3日(木)から京都・南座で

 藤山直美が主演する舞台「錦秋喜劇特別公演」が、10月に京都・南座で行われる。今回は、戦後演劇の傑作として70年近く愛されてきた「太夫さん」を上演。藤山と共に、俳優の三林京子、田村亮、駿河太郎が大阪市内での取材会に出席し、見どころなどを語った。

 物語の舞台は、戦後間もない京都・島原。老舗の妓楼に、兄に連れられた、きみ子という女性が奉公に入る。不器用だが純粋な彼女を、女将・おえいは一人前の太夫に育てようと奮闘するが――。
 
 「太夫さん」は、劇作家・北條秀司の代表作。「劇団新派」が1955年に初演して以来、繰り返し演じられてきた人情喜劇だ。
 
 「京都で『太夫さん』をするのは、怖いこと」
 会見の冒頭、きみ子役の藤山は、そう語った。
 
 “京の歴史と情緒薫る世界”を、“ご当地”で演じる緊張感が表れた言葉である。
 
 続けて、「でも、すごいぜいたくなお芝居やと思います」と力を込めた。
 
 今回、劇団新派の名作を、初めて関西の役者のみでキャスティング。“上方”の芸達者たちが、使い慣れた言葉を飛び交わせ、独特の緩急や間を育んでいく――ひと味違う作品に、との意気込みが伝わってくる。

◆京の情緒と夢ある物語を楽しんでもらえたら

 藤山は97年から、きみ子を演じ、今回が7度目。「実際の私と、年齢の“詐称”がえげつない」と笑わせる。
 
 一方で、自身の経験とともに、この作品の世界を俯瞰的に見られるようになったとも。上方喜劇を代表する藤山の、円熟の演技が楽しみだ。
 
 女将・おえい役の三林は、藤山とは約40年前にテレビドラマで初共演して以来の仲。
 
 「今でも直美さんは、すごくかわいらしい人。おえいが、きみ子を娘のように思う気持ちにリンクさせたい」
 
 きみ子の兄を名乗るが、いわくありげな安吉役には駿河。藤山とは初共演となる。
 
 「先輩方の胸を借りつつも、僕の世代からの刺激も、皆さんに与えられたらいいなと思います」
 
 田村が演じるのは、おえいと強い絆で結ばれる置屋兼茶屋を営んでいた善助。この役は3年前にも演じたが、「顔ぶれが変わると芝居も変わる。稽古から緊張感を持って挑みたい」と意欲を示した。
 
 激動の時代に、たくましく生きる人々を描いた「太夫さん」。「一つの素晴らしい“家族”の物語」とも表現した藤山は、「(映画の)『プリティ・ウーマン』みたいな夢のある話。今は暗いニュースも多いですが、それをちょっと横に置いて、楽しんでいただけたら」と願った。

◆プロフィル

 ふじやま・なおみ 大阪府生まれ。俳優。父は喜劇王とうたわれた故・藤山寛美さん。その後を継ぎ、舞台を中心に、映画やドラマなどでも活躍。代表作である映画「顔」(2000年)では、数々の映画賞を受賞。NHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」(06年)で主演を務めた。

 【記事・写真】佐々木一徳

◆公演情報

 【日程・会場】 10月3日(木)~27日(日) 京都・南座 ※8日(火)、15日(火)、23日(水)は休演。日により公演回数は異なる。
 【料金】 1等席1万3000円、2等席8000円、3等席4000円、特別席1万4000円(税込み)
 【問い合わせ】チケットホン松竹 0570(000)489または06(6530)0333
 
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