仏法の教え

〈子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険〉 服の中の宝石 2025年7月10日

 創作童話「子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険」では、主人公のミライが、仏教説話の世界を巡る冒険に出かけます。座談会の未来部コーナーなどでご活用ください!(イラスト 逸見チエコ)

幸せは自分で生み出せる

 「もう、つかれてしまった……」
 そうつぶやく旅人に、ミライは出会いました。
 「どうしたの?」
 「一人きりで町から町へ、人生を大きく変えてくれるほどの宝を探してきたけれど、まったく見つからない。もうあきらめようかと思ってるんだ」
 「必ず見つかるよ。ミライもいっしょに探すよ!」

 ミライと旅人は、いろいろな町を旅しながら、多くの人に会って、宝を探すことにしました。
 いくつもの町をまわっても、まだ何も見つかりはしませんでした。
 けれど、希望を持って、楽しく旅をするミライを見ていると、旅人は少し元気になりました。

 ある時、ある町で、旅人に「ひさしぶりじゃないか!」と、声をかけてきた人がいました。
 その人は、旅人の昔からの友達だったのです。
 「どうして、そんなに悩んでいるんだい?」
 「人生を大きく変えてくれる宝を探しているんだ」

 「まさか! 君の服の中に、せっかく宝石を隠しておいてあげたのに」
 旅人が、おどろいて服の中を探すと、りっぱな宝石が出てきたのです。

 友達は、話し始めました。
 ――昔、君が私の家を訪ねてきたとき、君は先に眠ってしまった。私は急ぎの仕事で家を出なければいけなかったから、人生に悩んでいる君の助けになればと思って、宝石を隠しておいてあげたんだよ――

 「そうだったのか。ありがとう……」
 友達の優しさに、旅人の目から思わず涙がこぼれ落ちました。
 「すごい宝石だね!」
 ミライは思わず、目を輝かせます。

 友達は、ほほ笑みながら、言いました。
 「この宝石は、心に希望を持っていると光り輝く、不思議な宝石なんだ」
 旅人が涙をぬぐい、笑顔になると、宝石もキラキラと光り輝き始めました。
 (つづく。前回は6月12日付)

今回のお話の解説

 今回のお話は、法華経に説かれる「衣裏珠の譬え」を基にしています。
 この譬えでは、貧しい男を見かねた親友が、その男が寝ている間に、衣の裏に宝の珠を縫い付け、所用のために立ち去ります。男はそれに気付かずに、その後も貧しいまま、さまよいます。やがて再会した親友から、宝の珠の存在を告げられます。
 最高の“宝石”が、自分のすぐ手元にあったことを発見した男の驚きと喜びは、計り知れなかったことでしょう。
 小説『新・人間革命』では、この譬え話を通して山本伸一が「最高の宝石とは、皆さんの心にある『仏』の生命のことです。御本尊に唱題し、広宣流布のために戦うことによって、その『仏』の生命を引き出し、最高の幸福境涯を築くことができる」と語っています。幸せは自分で生み出していけるのです。