日本人にとって結婚はどのように変化してきたのか。そして、なぜ未婚化・晩婚化が進んでいるのか。その背景をたどる。
日本人にとって結婚はどのように変化してきたのか。そして、なぜ未婚化・晩婚化が進んでいるのか。その背景をたどる。
かつての主流は家のための結婚
かつての主流は家のための結婚
日本では近年、未婚化・晩婚化の傾向が続いています。平均初婚年齢は男女ともに上昇し、生涯未婚率も高くなりました。かつては「結婚して家庭を持つこと」が当然のステップと考えられていましたが、現在では結婚に対する価値観も多様化しています。
一方で、未婚化・晩婚化は、少子化とも関わる社会的課題として語られています。ただし、その背景を「若者が結婚しなくなった」と捉えるだけでは十分ではありません。
実は結婚の持つ意味は、時代の移り変わりとともに大きく変化してきました。
例えば江戸時代において、結婚は個人よりも「家」を優先する制度でした。つまり、家同士の契約としての側面が強く、家長の意向が色濃く反映された結婚のあり方が主流だったのです。
特に武家社会では、結婚は家の存続や経済的・政治的な結びつきに関わる重要なものでした。跡取りに嫁ぐ女性には、家の格は十分か、奥(家のこと)を取り仕切る能力はあるかなど、その家が求める条件を満たすことが重視されました。結婚は、家にとっての経営戦略の一環でもあったのです。
日本では近年、未婚化・晩婚化の傾向が続いています。平均初婚年齢は男女ともに上昇し、生涯未婚率も高くなりました。かつては「結婚して家庭を持つこと」が当然のステップと考えられていましたが、現在では結婚に対する価値観も多様化しています。
一方で、未婚化・晩婚化は、少子化とも関わる社会的課題として語られています。ただし、その背景を「若者が結婚しなくなった」と捉えるだけでは十分ではありません。
実は結婚の持つ意味は、時代の移り変わりとともに大きく変化してきました。
例えば江戸時代において、結婚は個人よりも「家」を優先する制度でした。つまり、家同士の契約としての側面が強く、家長の意向が色濃く反映された結婚のあり方が主流だったのです。
特に武家社会では、結婚は家の存続や経済的・政治的な結びつきに関わる重要なものでした。跡取りに嫁ぐ女性には、家の格は十分か、奥(家のこと)を取り仕切る能力はあるかなど、その家が求める条件を満たすことが重視されました。結婚は、家にとっての経営戦略の一環でもあったのです。
さらに当時は、家の跡取りになれるのは多くの場合、長男のみでした。そのため、町人や農村の次男以下は、必ずしも結婚できるとは限りません。早くから奉公に出て、そのまま独身で生涯を終える人も少なくありませんでした。
明治以降、日本では都市化が進み、地方を離れて都市部で暮らす人が増えていきます。親元を離れて生活することは、家の影響力が弱まることでもありました。経済的に自立する人が増え、本人同士の感情を重視した「恋愛結婚」も少しずつ広がっていきます。
ただし、恋愛結婚が多数派となるまでには時間がかかりました。高度経済成長期を経た1960年代後半になって、恋愛結婚の割合が見合い婚を上回るようになります。
このように、日本の結婚は「家のための結婚」から、「個人の意思による結婚」へと徐々に変化してきたのです。
さらに当時は、家の跡取りになれるのは多くの場合、長男のみでした。そのため、町人や農村の次男以下は、必ずしも結婚できるとは限りません。早くから奉公に出て、そのまま独身で生涯を終える人も少なくありませんでした。
明治以降、日本では都市化が進み、地方を離れて都市部で暮らす人が増えていきます。親元を離れて生活することは、家の影響力が弱まることでもありました。経済的に自立する人が増え、本人同士の感情を重視した「恋愛結婚」も少しずつ広がっていきます。
ただし、恋愛結婚が多数派となるまでには時間がかかりました。高度経済成長期を経た1960年代後半になって、恋愛結婚の割合が見合い婚を上回るようになります。
このように、日本の結婚は「家のための結婚」から、「個人の意思による結婚」へと徐々に変化してきたのです。
晩婚化・未婚化の構造的要因
晩婚化・未婚化の構造的要因
都市化が進んでもしばらくは、「安定した収入を前提に、結婚して子どもを持つことが当たり前」という価値観が根強く残っていました。1970年代頃までは、「結婚しなければ一人前ではない」という同調圧力も比較的強かったとされます。
また、見合いや地域・親族のつながりを通じて結婚が成立することも多く、周囲が結婚を後押しする仕組みが存在していました。その意味では、現代とは異なる形で「結婚しやすい社会」だったのです。
加えて、男女の役割分担も固定化されていました。男性は外で働き家族を養い、女性は家事と子育てを担う――そうしたモデルが社会全体で共有されていました。
しかし、恋愛結婚が一般化するなかで、結婚に求められる愛情の意味も変化していきます。「一緒にいて楽しい」「安心して話し合える」「価値観が合う」といった要素が重視されるようになり、単に経済的条件だけでは結婚が成立しにくくなっていきました。
1990年代以降は、雇用の不安定化が進みます。非正規雇用の増加によって、将来設計を描きづらい若者も増えました。実際、正規雇用と非正規雇用では結婚率に大きな差があることも指摘されます。経済的な不安定さが、未婚化・晩婚化を後押ししたといえるでしょう。
都市化が進んでもしばらくは、「安定した収入を前提に、結婚して子どもを持つことが当たり前」という価値観が根強く残っていました。1970年代頃までは、「結婚しなければ一人前ではない」という同調圧力も比較的強かったとされます。
また、見合いや地域・親族のつながりを通じて結婚が成立することも多く、周囲が結婚を後押しする仕組みが存在していました。その意味では、現代とは異なる形で「結婚しやすい社会」だったのです。
加えて、男女の役割分担も固定化されていました。男性は外で働き家族を養い、女性は家事と子育てを担う――そうしたモデルが社会全体で共有されていました。
しかし、恋愛結婚が一般化するなかで、結婚に求められる愛情の意味も変化していきます。「一緒にいて楽しい」「安心して話し合える」「価値観が合う」といった要素が重視されるようになり、単に経済的条件だけでは結婚が成立しにくくなっていきました。
1990年代以降は、雇用の不安定化が進みます。非正規雇用の増加によって、将来設計を描きづらい若者も増えました。実際、正規雇用と非正規雇用では結婚率に大きな差があることも指摘されます。経済的な不安定さが、未婚化・晩婚化を後押ししたといえるでしょう。
一方で、女性の社会進出が進んだにもかかわらず、社会の側は共働き家庭を十分に支える仕組みを整えきれていませんでした。仕事と家事・育児の負担が女性側に偏りやすく、結婚後の生活を前向きにイメージしづらかった女性も多かったのです。
近年では、育児支援や働き方改革などによって状況は徐々に変化しつつあります。高学歴の女性ほど結婚や出産をしているというデータも見られるようになりました。
また、あまり注目されてこなかった要因として、都市部と地方における男女比の偏りもあげられます。実は、都市部には女性が多く集まり、地方では男性比率が高くなる傾向があります。都市のほうが女性にとって魅力的な仕事が多く、多様なライフスタイルを選択しやすいとされています。
このように、結婚観の変化だけでなく、雇用環境、ジェンダー構造、都市化など、さまざまな要因が重なり合った結果として、今日の未婚化・晩婚化が生じているのです。
一方で、女性の社会進出が進んだにもかかわらず、社会の側は共働き家庭を十分に支える仕組みを整えきれていませんでした。仕事と家事・育児の負担が女性側に偏りやすく、結婚後の生活を前向きにイメージしづらかった女性も多かったのです。
近年では、育児支援や働き方改革などによって状況は徐々に変化しつつあります。高学歴の女性ほど結婚や出産をしているというデータも見られるようになりました。
また、あまり注目されてこなかった要因として、都市部と地方における男女比の偏りもあげられます。実は、都市部には女性が多く集まり、地方では男性比率が高くなる傾向があります。都市のほうが女性にとって魅力的な仕事が多く、多様なライフスタイルを選択しやすいとされています。
このように、結婚観の変化だけでなく、雇用環境、ジェンダー構造、都市化など、さまざまな要因が重なり合った結果として、今日の未婚化・晩婚化が生じているのです。
多様化する結婚のカタチ
多様化する結婚のカタチ
日本において、「個人の自由意思によって結婚相手を選ぶ」という価値観が一般化した歴史は、実はまだそれほど長くありません。そう考えると、「なぜ結婚するのか」「結婚する意味が分からない」と感じる人がいても、不思議ではないでしょう。かつてのように、「結婚するのが当然」という社会ではなくなったからです。
欧米社会では、キリスト教文化の影響があり、パートナーシップや結婚に非常に重い意味を見いだします。例えば欧米のドラマでは、夫婦やカップルが関係改善のためにカウンセリングを受ける場面がしばしば描かれます。そこには、専門家の力を借りてでも関係を維持しようとする文化的背景を見ることができます。
一方、日本を含む東アジアでは、恋愛や結婚に対して、欧米ほど宗教的な意味づけが強くありません。結婚の自由化が進むことで、人々の関心が仕事や趣味、友人関係など、結婚以外のさまざまな生き方へ向かいやすいのかもしれません。
日本において、「個人の自由意思によって結婚相手を選ぶ」という価値観が一般化した歴史は、実はまだそれほど長くありません。そう考えると、「なぜ結婚するのか」「結婚する意味が分からない」と感じる人がいても、不思議ではないでしょう。かつてのように、「結婚するのが当然」という社会ではなくなったからです。
欧米社会では、キリスト教文化の影響があり、パートナーシップや結婚に非常に重い意味を見いだします。例えば欧米のドラマでは、夫婦やカップルが関係改善のためにカウンセリングを受ける場面がしばしば描かれます。そこには、専門家の力を借りてでも関係を維持しようとする文化的背景を見ることができます。
一方、日本を含む東アジアでは、恋愛や結婚に対して、欧米ほど宗教的な意味づけが強くありません。結婚の自由化が進むことで、人々の関心が仕事や趣味、友人関係など、結婚以外のさまざまな生き方へ向かいやすいのかもしれません。
こうした状況のなかで、日本社会における結婚のあり方も、今後さらに多様化していくと考えられます。強い恋愛感情だけを前提とせず、価値観や生活スタイルの一致を重視して共に暮らすことを選ぶ人々も増えていくでしょう。
もっとも、結婚が完全に「自由な個人同士の選択」だけになるわけでもありません。なぜなら現実には、病気や介護、子育てといった長期的なケアを誰が担うのかという問題が残るからです。例えば友人同士で同居していても、相手が要介護状態になった際に、自分の仕事や人生設計を変えてまで支えられるかというと、簡単ではないでしょう。多くの人は、そうしたケアを家族が担うものだと考えています。
自由化の要素が強まる一方、結婚や家族は依然として人生における安心材料として存在する――。日本の若者にとって、今後しばらくはこうした価値観で結婚が捉えられていくのではないでしょうか。
こうした状況のなかで、日本社会における結婚のあり方も、今後さらに多様化していくと考えられます。強い恋愛感情だけを前提とせず、価値観や生活スタイルの一致を重視して共に暮らすことを選ぶ人々も増えていくでしょう。
もっとも、結婚が完全に「自由な個人同士の選択」だけになるわけでもありません。なぜなら現実には、病気や介護、子育てといった長期的なケアを誰が担うのかという問題が残るからです。例えば友人同士で同居していても、相手が要介護状態になった際に、自分の仕事や人生設計を変えてまで支えられるかというと、簡単ではないでしょう。多くの人は、そうしたケアを家族が担うものだと考えています。
自由化の要素が強まる一方、結婚や家族は依然として人生における安心材料として存在する――。日本の若者にとって、今後しばらくはこうした価値観で結婚が捉えられていくのではないでしょうか。