くらし・教育

〈高野優の育児ビフォーアフター〉60 優しい魔法 2025年3月20日

 ばさっと無造作に開いた時の、新聞の匂いがとても好き。昔は新聞を読む私の背中で、子どもがつかまり立ちの練習をしていた。少し汗ばんだ小さな手の温もりと重み。
 今では猫がのんびりと毛繕いをしていて、その温かさと柔らかさが、遠い日を思い出させてくれる。
 おかげさまで、連載は60回、5年になりました。
 小学生の頃、はがきにイラストを描いて新聞社に送った。掲載されると泣きたいほど嬉しくて。あの時の気持ちは、大人になっても色あせないまま。
 私が書いただけでは“ただの文字”なのに、読んでくださる方のおかげで「エッセー」に変わる。私が描いただけでは“ただの落書き”だけど、見てくださる方のおかげで「イラスト」に変わる。そんな優しい魔法をかけてくださるあなたに感謝を込めて――。

 【文・イラスト】育児漫画家 高野優