くらし・教育
〈暮らし〉 センスを磨くとは? 2025年4月13日
【センス】を辞書で調べると――「人それぞれの内面にある感覚的なもので、感じ方、理解の仕方、あるいは表現の仕方に現われ出るもの。特に、ちょっとした行為や微妙な事柄についていう」(『精選版 日本国語大辞典』小学館)とあります。
作家・有川真由美さんが考える“センスいい人”をヒントに、人付き合いや服装など、生活における“自分なりのセンス”について考えてみませんか。
■自分で自分を喜ばせる
私が考えるセンスいい人とは「自分で自分を喜ばせるのが得意な人」です。その上で客観性を持ち、知性のある人。どんなものを美しい、すてきだと思うのか――「私はこれが好き!」と分かっていて、そこに正直な人はカッコイイなと思います。
大人になると、自分の気持ちより周りの目を優先したりして、自分の“好き”に気付きにくくなりがちです。洋服一つとっても、好きだから選ぶというより、いろいろ考えて無難なものを買ったり。
知人のスタイリストは「私には何が似合いますか?」とよく聞かれ、「似合う服じゃなく、好きな服を着てください」と答えるそうです。“好きな服を似合うように着る”ために工夫を重ねることで、感性が研ぎ澄まされていきます。
服でも音楽でも「これ、好きかも」と感じたら、もっと知りたいと好奇心が湧き、深く突き詰めたくなりますよね。そういう時ってワクワクしませんか。
■正解はない
絵や音楽など、もともと持っているセンスもあると思いますが、生活の中のセンスは自分で磨いていけます。料理の盛り付けも、ちょっとこだわるだけで、食卓が華やかになります。
とはいえ、やっぱりみんな忙しい。育児や介護や仕事といろいろある中で、毎日丁寧な暮らしなんてできません。私もそうです(笑)。
ですので、忙しい日々の中で、自分の“好き”に、ほんの少しこだわって楽しむ。その積み重ねで、心豊かに暮らせたら――そんな気持ちでいます。
センスに正解はないですし、「自分はセンスがいい」と、自信を持っている人も少ないように感じます。だからこそ、好きを極めようとする正直な姿は輝いていて、そこが自分の幸せにつながるのだと思います。
■励まされてきた言葉
私が大学生の時に出合い、ずっと励まされてきた言葉があります。
「自分の感受性くらい
自分で守れ ばかものよ」
これは詩人・茨木のり子さんの「自分の感受性くらい」という詩の一節ですが、強い言葉の中に、人間の弱さを包み込み「諦めないで」と元気づけてくれる、深い愛情を感じます。
感性や感受性は、磨こうとしなければ、さびてしまいます。大人になり、怒るべき場面でも「まぁ、いいか」と諦めてしまったり、「毎日同じような生活で、何となくつまらない」という気持ちに支配されては、もったいない。
時には、子どもみたいに何かを面白がったり、泣いたり、はしゃいだり。物事を楽しめる大人が増えると、子どもも希望が持てるし、世の中も少し明るくなるのでは、と思うのです。
≪有川さんも実践 センスいい人がしていること≫
Case1 好きはセンスの母
「お気に入りのものを置きたい」という純粋な気持ちから感性は養われます。自分の家にアートやオブジェなど、気分を上げるお気に入りを飾る。すると、その周りから工夫が始まります。まさに「好き」はセンスの母。買い物も「お得だから」ではなく「本当に好きだから」お金を使う。結果的に、その方が大事に使い、無駄遣いにならない気がします。
Case2 心を曇らせない
誰かに傷つけられた時、その人を恨んでしまい「絶対に許さない!」と心が乱され、引きずるのは損。そんな時に、許せなくても「もう気にしない」と終わらせて、前を向ける人は美しい。「過ぎたこと」と、自分の心をキレイにしておくことが、美意識の基本であり、プライドだと思います。
Case3 鏡を見て、自分を褒める
鏡を見て「老けた」「シミが」など、ダメ出ししていませんか。自分にかける言葉には暗示の効果があります。「よく頑張ってる」「顔が輝いてる」「今日もありがとう」など、自分を褒めてあげましょう。すると、セルフイメージも高まってきます。「私は仕事ができる!」でもいい。潜在意識に働きかけ、なりたい自分になる効果的な方法です。
Case4 ピンチの時こそ楽しむ
私はピンチの時、「なるほど。そうきましたか」と人ごとのようにつぶやきます。すると驚くほど力が湧き、目の前の難事に集中できます。「もう終わりだ」「嫌だ」「どうしよう」などの言葉は、焦りが増すばかり。「まるでコメディー映画だ」と困難を面白がった時、最大の結果が。人はピンチの時に劇的に成長し、感覚が研ぎ澄まされると痛感します。
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