創価教育

〈聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部〉第3回 “最高の10人”へ高まる競争力――3次合宿・御嶽 2026年9月14日

SOKA SPORTS――創価スポーツ

 連載「聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部」の第3回は、9月2日から9日にかけて岐阜・御嶽で行われた3次合宿の様子をお伝えします。(8月29日付の第2回はこちらから)

 小池莉希選手(4年)は何区を走るのか。1年生の駅伝への適性はどうか。スティーブン・ムチーニ選手(同)の調子は上がっているか――。
  
 主力選手が集う北海道・深川合宿の様子が気になりつつも、記者は2年続けて御嶽合宿に足を運んだ。理由は一つ。そこに榎木和貴監督がいるからだ。

 取材した7日は、岐阜・高山市の小学生を招いて「陸上教室」が行われていた。これは、創大駅伝部が合宿を組む各自治体からの依頼を受け、各地で開催しているものだ。前日には北海道深川市でも開かれ、榎木監督は「教えることで、選手たちの人間的な成長にもつながる」と期待する。
  
 新聞紙を胸に当て、落とさないように走るなど、児童たちは楽しみながら体の動かし方を学んでいた。
  
 「頑張ってください」「テレビで応援します!」
  
 箱根駅伝を走る選手たちは、子どもたちにとって憧れの対象であろう。夢や希望を与えられる存在を目指し、一人一人が鍛えの毎日を送っている。

 深川は、いわば出雲駅伝を走る6枠を争う合宿だ。一方、御嶽には前半戦のトラックシーズンで調子が上がらなかった選手や、けがから回復途上の選手などが集う。だからこそ、全日本大学駅伝、箱根駅伝につながる材料を見つけたい。そう思いながら訪ねた先で、昨年とは少し違った印象を受けた。
  
 一つは、けが人の少なさである。例年、長野・菅平高原、新潟・妙高高原と夏合宿を重ねる中で、故障者が増えていく。ところが今年は違う。榎木監督によると「例年より3回の合宿をしっかり乗り切っている。しかも、練習量も増えています」という。
  
 もう一つは、深川組への強いライバル意識だ。合宿初日の30キロ走から、選手たちが目の色を変えていた。前日には深川でも30キロ走を実施。タイムを聞いた御嶽組は「絶対に深川組の記録を上回ろう」と誓い合った。
 標高が低く、コースも平たんな深川と比べ、御嶽は標高が高く、アップダウンもある。その条件下で、御嶽組が深川組を上回るタイムで走り切った。
  
 榎木監督に、今年の御嶽組の印象を聞いた。
 「今年は勢いがあります。むしろ御嶽組から、出雲、全日本に出走する選手もいるかもしれません。上り走をはじめ、あらゆる練習でこれまでの内容を上回っています」
  
 監督が、御嶽組に繰り返し伝えてきたことがある。「自分がどの区間、どの分野なら優位に立てるのかを考えてほしい」
  
 トラックの走力で及ばないなら、長い距離や特殊区間など、自らの得意分野で力を示す。練習のタイムだけではない。苦しい時に積極的に前を引っ張れるか。指揮官は、そんな変化も見逃さない。御嶽の8日間は“自らが生きる場所”を見つける時間でもある。
  

 “山上り”を得意とする細田峰生選手(4年)は、13キロの上り走で他を寄せ付けない走りを見せた。昨年の自身の記録を2分近く上回り、歴代でもトップクラスのタイム。箱根5区の有力候補として名乗りを上げた。
  
 細田選手には忘れられない思い出がある。夏合宿のある日、午前中に負荷の高いポイント練習を実施。参加できなかった岡野智也選手(4年)が、午後に個人で300メートル×15本の坂道ダッシュを行うことになった。
  
 それを聞いた同期の織橋巧選手が言った。「岡野だけにやらせられないでしょ。4年生みんなで走ろう」
  
 細田選手は渋った。せめて数本だけで終わろう。そう訴えたが、織橋選手は譲らない。嫌がりながらも本数を重ね、4年生全員で完遂。これが、今までで一番忘れられない瞬間になったという。

 御嶽組の中には齊藤大空選手(4年)もいた。2年前の箱根駅伝で1区を任された実力の持ち主。本来なら、深川にいてもおかしくない存在である。
  
 今、自分に何が足りないかを聞いた。じっくり考えた後、「けがをしない体ですね」と一言。この1年半、けがに悩まされ続けた。治ってからも、走ろうと思えば走れるが、再び故障することへの恐怖心が拭いきれない。最終学年として、後輩を引っ張る役割も果たしたい。
  
 「勝つためには乗り越えなきゃいけないと、榎木さんから厳しく言われます」
  
 絞り出すような声に、葛藤がにじむ。それを監督に確かめると「4年生ですから、けがをしたらそれで終わってしまいます。ただ、彼はチームに必要な選手。上り走でも好走していたし、今は自らを追い込む走りができています」と語った。
  
 齊藤大空選手は言う。「自分が1区を担えれば、主力選手を他の区間に回すこともできる」。そして、自分を育ててくれた母へ、「2年前はただ走っただけ。スポットライトを浴びる姿を見せて、恩返しをしたい」と誓う。
  

 同じく、意外な選手が御嶽にいた。1万メートルで28分台の記録を持つ齋藤一筋選手(3年)だ。ここにいる理由は「山下り」への思いにある。
  
 箱根の6区は前回、小池選手が担い、区間記録に迫る走りを見せた。しかし、次は同区間に小池を使わない――。榎木監督がそう明言したこともあり、チーム内の争いは激しさを増している。
  
 昨季も6区を希望していた齋藤一筋選手だが、その思いには少しの変化がある。山下りの適性を高めるため、自ら望んで御嶽に来た。「でも、山下りの練習は、平地の走りにも生きてくると思います」。6区を走りたい気持ちは変わらないが、自分が必要とされる場所で最大の力を発揮したいと考えるようになった。
  
 3月の宮崎合宿が転機になった。苦手とするロード練習で、誰よりも声を出し、集団を引っ張った。「今年の創大は、優勝だってできるチームだと思うんです」。後輩も増え、チームに貢献したいという思いは日に日に強くなっている。
  
 それは、こんな言葉にも表れている。「恩返しがしたいです。ここまで応援してもらえる大学は、他にはありませんから」

 今季、創大が目標に掲げるのは、箱根10区間の大学最高記録をつないだタイム(10時間42分2秒)を上回ることだ。だが走る10人は、単純な持ちタイム順では決まらない。榎木監督も「速い選手を上から10人並べれば良いわけではない」と語る。
  
 だからこそ御嶽組にも道はある。指揮官が夏に見極めようとしているのは、そんな10区間の布陣を動かす“新たな選択肢”でもある。
  
 最終学年の川田聖真選手は今季、5000メートルで13分台をマークした。それでも、メンバー入りは確約されない。スピードを持つ一方、本人はむしろ「ロードの単独走が得意です」と強調する。
  
 178センチの長身で、ストライドも広い。集団の中で歩調を合わせるより、単独で走る方が楽なことから「復路を狙えると思っています」。ラストチャンスとして、11月の「世田谷246ハーフマラソン」で記録に挑む。
  
 一方で、大倉凰來選手(2年)は、前半戦で自己ベストを更新できなかった。3月の宮崎合宿までは好調だったが、疲労が蓄積し、その後の走りにつながらなかった。
  
 1万メートルの持ちタイムはチーム16番目。箱根のエントリー人数も16人だ。「今のままでは難しいですね」と、自身の立ち位置を冷静に見つめる。
  
 2年生で三大駅伝経験者は衣川勇太選手だけ。「まずは追いつき、追い抜くことが箱根への最低条件」と語る。さらに、共にロードで力を発揮するタイプの榎木凜太朗選手(3年)も「勝ちたい相手」だ。
  
 練習では大きな差は感じていない。だが、レースになるとライバルたちの勝負強さが光る。そのわずかな差が、メンバー選考を左右する。背後からは、勢いのある後輩も迫っている。
  
 先日の日本インカレ男子5000メートルで2位に入った菅野元太選手ら、実力者がそろう1年生。学年主任の川村友朗選手も御嶽にいた。榎木監督と同じ宮崎・小林高校の出身。強力な同期から多くのことを学び、なかでも彼らが体の状態をよく理解し、徹底して自己管理する姿に驚いたという。
  
 ただ、後塵を拝したまま終わるつもりはない。5000メートルの自己ベスト更新を目指し、8月は月間820キロを走り込んだ。「結果で、走りで、同期をまとめていきたい」と意気込む。
  
 榎木監督が「こういう選手がレギュラーを脅かすようになると、さらに刺激になる」と語ったのが、松本快斗選手(2年)だ。高校時代は長崎日大高サッカー部のサイドバックとして、1試合に約14キロの距離を走行する運動量を誇った。
  
 高校3年で陸上に転向し、その走りが榎木監督の目に留まって創大へ。陸上競技の経験は浅いがポテンシャルを評価され、いくつもの大学から声がかかったという。
  
 1年の時は故障が相次ぎ、交通事故による膝の手術も経験。今年7月、ようやく大会デビューを果たした。「練習の一環だったので、本格的な実戦はこれから。来年、さらに成長して活躍するための準備期間として、今は練習を重ねています」

 御嶽合宿のメニューはここ数年、大きく変わっていない。変わったのは、練習への向き合い方だ。距離や設定タイムを複数用意し、選手自身が選択する。
  
 「やらされる練習ではなく、自分で責任を持って挑んでほしい」と榎木監督。もちろん、消極的な選手には背中を押し、攻めすぎる選手にはブレーキをかける。その上で、自らの状態を把握し、何が必要かを考えさせる。その積み重ねが、合宿の充実につながっているのだろう。
  
 現時点で三大駅伝のオーダーがどれほど固まっているか聞いた。出雲は「だいたい決まっている」が、今後の体調や疲労の出方を見定めていくという。
  
 箱根は「8割程度」。ただし、8人の名前が固まっているという意味ではない。ここからさらに競争力を高め、新たな選手が台頭すれば、描いている布陣まで動く可能性があるのだろう。
  
 監督は語る。「箱根上位校の選手は『選ばれたい』ではなく、『走ったら絶対に区間賞を取る』という勢いでメンバー入りを勝ち取っている。どちらかというと創大は、選ばれることがゴールになっていたかもしれません」
  
 御嶽組が深川組を追い、1年生が上級生を追い、ボーダーにいる選手が主力を追う。その競争が、主力組にも新たな刺激を与えている。
  
 例年以上に充実した夏を過ごしたチームが、競争力を高めた状態で駅伝シーズンを迎えられるか。三大駅伝への手応えを聞くと、榎木監督はこう語った。「まずは秋の試合の結果に、選手たちの成長度合いが表れるはずです。きっと、創大の本気度が見えてくると思いますよ」
  
 「選ばれる」から、「勝ち取る」へ――。御嶽から生まれた競争が、創大の“最高の10人”を形づくっていく。(坂)
  

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