企画・連載
【創価学園NAVI】 働くって何だろう?――未来への視野を広げる、創価中学校のキャリア教育 2022年3月6日
働くって何?――就業経験のない中学生にとって、それは未知の世界。創価中学校(東京・小平市)では毎年、卒業生らを講師に迎え、幅広い分野の職業を紹介する「キャリアガイダンス」を開催し、生徒たちが熱心に受講している。どういった内容なのか――将来を意識し、大きく視野を広げる生徒たちの様子を取材した。
「公認会計士の仕事にあっても、英語や中国語などの第二言語の習得が求められてきています」
「外交官として重要なのは、語学力とともに、“体力”と“好奇心”です」
講師が語る“意外な話”に目を輝かせる生徒たち。必死にノートを取る姿から、その感動が伝わる。
これは、昨秋に開かれた、創価中学校伝統の「キャリアガイダンス」の一幕。さまざまな職種から講師を招き、実際の仕事内容や、その職業を志した理由などを聞く。講師を務めるのは、創価学園や創価大学の出身者だ。
今回開かれたのは、小学校教諭、図書館司書、小児科医師、理学療法士、外交官、弁護士など、合わせて20の職種。中には、YouTubeやTikTokなどで人気コンテンツを配信する映像制作者も。生徒は、このうち興味のあるものを二つ選び受講する。
キャリア教育を担当する竹松朋子教諭は語る。
「中学生の多くは、仕事といっても目に見える業種しか知りません。“こんな仕事もあるんだ!”と視野を広げてもらうためにも、できるだけたくさんの業種の人と接するチャンスを用意したいと思っています。毎年、多彩な職種の講座を開くことができるのは、忙しい中でも“後輩のためなら”と、仕事を調整してくれる卒業生のおかげです。講師の『失敗談』や、各分野の『最前線の課題』など、ここでしか聞けない話もあり、生徒たちの大きな触発の場になっています」
このキャリアガイダンスでは、事前・事後の学習も大切にしている。
海外の小説を読むことと英語が好きだという田村百々さん(1年)は、“なんとなく”小学校教諭と外交官を選択した。
小学校教諭について事前に調べてみると、「思っていた以上に仕事の隙間時間がなくて、びっくりしました。学校の先生たちは、こんなにも忙しいのに、優しく接してくれていたんだ」と。ガイダンスの講師は、中学時代の学級崩壊の経験が、教師を志す動機になったと教えてくれた。「大変だった経験も、将来の進路を考えるきっかけになるんだと、少し驚きました」
また、外交官の卒業生は“中学・高校時代、英語に苦手意識があった”と明かし、猛勉強で進路を開いた経験を話してくれた。
「正直、今まで『仕事』について、真剣に考えたことはありませんでした。キャリアガイダンスは、自分の予想と違う話をたくさん聞けて、とてもおもしろかったです。2年生では、もっと知らない職業や世界を知ってみたい。次はパイロットとかもいいですね」
3年生の辻彩香さんは毎年、異なる職業のガイダンスを受けてきた。
「私はもともと看護師になりたいと思っていたのですが、創価中学に入学して社会にいろんな仕事があることを知り、他の道ものぞいてみたいと思うようになりました」
辻さんは、これまで医師、キャビンアテンダント(CA)、コンサルタントなどの仕事の話を聞いてきた。
「もともと『働く』ことに対して、“大変”“面倒”というイメージを持っていたのですが、卒業生の方々は楽しそうに仕事の様子を語ってくれ、輝いて見えました。どの業種にも“やりがい”があることに気付き、今までの考えが変わりました」
今回のキャリアガイダンスで受講した業種の一つは「声優」。講師の卒業生は、小学生の頃、国語の「音読」が得意だったことがきっかけで、今の道に進んだという。
「“好きなこと”を深めることも、将来の仕事を考えることにつながると知りました」
創価中学では「言語・探究」の授業で、3年生の一年間、生徒自身がテーマを定め、研究や調査を行い、考察をまとめた“卒業論文”をつくる。
辻さんは、大好きな「イラストを描く」ことを研究してみることに。家族に“短期間のイラスト上達法”を実践してもらい、その効果を検証した。美術教員の講評も加えて記述し、卒業研究を完成させた。
辻さんは目を輝かせる。「将来の志望はいろいろあり、まだ定まっていませんが、私も卒業生のように、自分の強みを生かして社会で輝く存在になりたいです!」
創価中学校では、他にもさまざまな取り組みを行っている。
コロナ禍以前は、2年次に4日間の職場体験を実施してきた。2018年度に行われたのは、スーパーマーケット、美容院、アパレルショップ、幼稚園・保育園、旅行代理店、鉄道会社、法律事務所、市役所など「72」の事業所に及んだ。
現在は、教室でインターンシップを行う探究プログラム「コーポレートアクセス」を導入し、2年生が取り組む。
これは、学校支援事業を手掛ける「教育と探求社」が提供する、全国320校の生徒約6万1000人が取り組むプログラムの一つ。実際の企業から与えられたミッション(課題)に対し、独自の企画を考え、企業の担当者らに提案する。
生徒たちは、働くことの意義や経済活動の在り方を学ぶことができる。
先月、この探究プログラムの全国大会が開催され、約4000の応募チームの中から本戦出場261チームに、創価中学校の3チームが選出。そのうち、一つのチームが「準企業賞」に輝いた。
受賞したチームは「未来を生きる人々の疲れを解消する新商品の提案」という製薬会社からの課題に「脳の疲労を取るシャンプー」を発案。審査員からは「シャンプーといえば、頭皮ケアや髪の保湿などが浮かぶが、今までの概念をくつがえし、新たな価値を提案するコンセプトがすばらしい。実現の可能性についても語られており、完成するなら、私も使ってみたい」との講評が寄せられた。
出場チームをサポートしてきた学年主任の梶田詠一教諭は話す。
「生徒たちは、企業からの課題に、単に提案を返すだけでなく、学園伝統の『何のため』との意識に立ち、自分たちがどういう社会をつくりたいのか、目指したいのかを考えて議論を進めました。そうしたことで、“社会をつくるのは自分たちだ”という自覚も芽生えたと思います」
最後に、中学時代という早い時期からキャリア教育をする利点はどこにあるのか――竹松教諭が語ってくれた。
「創価中学校は、中高一貫のため、高校受験を意識せずに長い目で将来を模索できます。中学時代は『将来、何をやりたいのか分からない』という生徒が大半です。でもそれでいいと思っています。“人のため、社会のために、自分には何ができるか”と、たくさん悩み、何度も考え続けることによって、中学生活がより充実したものになるからです。
一人一人が、かけがえのない使命の道を見つけられるよう、これからも全力でサポートしていきます」
◆「言語・探究」の授業って?
創価中学校では、母語の4技能を鍛える「言語技術」と、問いを立て解決策を考える「探究学習」を組み合わせた「言語・探究」の授業を実施している。
2学期には、磨いた言語技術のスキルと、日頃の探究学習の成果を発表する全校行事「ラーニングフェスタ」を開催。2年生は「現実に触れる」をテーマに、社会課題に取り組む企業・団体の協力を得て、諸課題の解決策を提案した。
今年度は初めて保護者らも参観し、「準備や調査に一生懸命、取り組んでいたことが分かる発表でした」「多種多様な研究に、自由な空気を感じました」などの感想が寄せられた。
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