くらし・教育
〈暮らし〉 メンタルコントロール 2024年11月10日
結果を引きずらない! 好転させる考え方
ツアープロメンタルコーチ ヨッシー小山さん
ゴルフは“メンタルのスポーツ”といわれるほど、精神状態が結果に大きく影響します。その厳しい世界で、プロ選手のメンタルコーチを務めるヨッシー小山さんに、日常生活でも役立つ考え方について聞きました。人材育成にも応用可能、ヨッシーさんは子育てにも役立ったそうです。
■アメリカで学び“目からうろこ”
ゴルフは天候や芝の状態などを考えながら、常に自分で状況を判断するスポーツです。何が起きても冷静に対処するには、十分な準備と、日頃から“自分とどう向き合っているか”が、カギとなります。
私はUSLPGA(全米女子プロゴルフ協会)でティーチング理論を学びました。そこではまず自分を知り、次に自分と全く同じ骨格や考え方の人はいない、人間は一人一人違うと実感させ、だから「あなたの常識は、あなたにしか通用しない。押し付けは絶対NG!」と、徹底的にたたき込まれます。
教えた生徒が、もしできなかったら「それは、あなたの伝え方が、その人にとってベストではなかった」という考え方。目からうろこでした。私は「こうするんだ! できなければ、うさぎ跳び!」みたいな時代に育ったので(笑)。まさか教える側の問題だったとは。
「よきリーダー、よきコーチになるには」を学ぶ中で強く興味を持ったのが、メンタルコントロールです。日本には、まだメンタルコーチという名称も無く「根性で乗り越えろ」と指導する時代。でも“気合と根性”には、残念ながら手段がない。何をしていいか分からないから、乗り越えられないんです。
■それは本当に“失敗”ですか!?
ゴルフでミスショットしたり、日常生活で思うような結果が出なかったりした時「失敗した。どうして自分はこうなんだ」と、引きずることがあります。でも、それって本当に“失敗”でしょうか。
私はよくゴルフを人生に例えます。途中は山あり谷あり、何も起こらないことはあり得ません。
何かに挑めば、険しい道はつきもの。落ち込むのは、向上心があるからですよね。向上するためには、課題や障壁が必要なんです。
障害が何もない地平線が見えるゴルフ、ピンチが起きない全てハッピーな物語、面白いですか?
「また成長できる!」と、課題を克服していく自分を楽しみましょう。全部、自分の財産です。学びに変えられると思えば、失敗という概念すらなくなりますよね。やみくもに失敗を恐れなくていいんです。
■気持ちを切り替える3ステップ
①Good
まず、自分をホメる。
②Better
どうすればよりよかったか振り返る。
③How
そのために何をすればいいか考える。
それでも、落ち込みたくなる気持ちは分かります。ただ、過去は戻ってこないので、早く気持ちを切り替えるのが得策。これは、そのための3ステップです。
ゴルフでは1ショットごと、1ホールごと、18ホールプレー後、いつでも必要な時に。日常でも1日の振り返り、課題ごとなど、落ち込みそうな時に使ってください。
この3ステップを習慣づけると、毎日が明るくなり、心が落ち着きます。頭で考えるだけでも、日記のように書き出してもOK。順番だけは、必ずこのままで行ってください。
①Good……皆さん、失敗の原因や悪い所を真っ先に探しがちですが、反省より先に、まず何でもいいので自分のよかった点、楽しかったことなどを探してください。
②Better……「こうなったら、もっとよかったよね」と、よくなる可能性のあることを振り返ります。「○○してしまった」のようなネガティブワードはなるべくなくし「○○できたら、いい感じ」のように望ましい形、願望をつぶやくイメージです。
③How……②になるために「どうすればいいか」具体的な対策を考えます。
例えば、ゴルフで1ホール終了後なら、①「今のティーショットは真っすぐ飛んで最高!」→②「2打目が右のバンカー(砂地のくぼみ)に入らなければ、もっとよかったなぁ」→③「次からは、アライメント(飛球線に対して体のラインを平行に向けること)をしっかり確認して打てばいいよね。ハイOK!」、これで終了です。
何事も、くよくよ考えず気持ちを切り替えて、“今”に集中。とにかくいったん完結させるクセをつけましょう。
■マジメな人ほど陥りやすい罠
3ステップは、いつでもどこでも使えます。たまに「グッドがない」と言われ、私がホメても「そんなことありません」と否定する方が。日本人は謙虚で謙遜しますが、ホメられたら「ありがとう」でいいんです。マジメな人ほど「○○せねばならない」の思考に陥りがちですね。
どうしても落ち込む時は、それをまず認めてあげましょう。「そりゃそうだよね、落ち込むよ。そういう時もあるよ」って。次に気持ちが上向く言葉をかける。友達にはそうしませんか? 自分にも同じように。よい点が分からないなら「今日は天気がよくて気持ちいい」など、違う視点から始めても構いません。
子どもにも、よいところをホメてから解決策を一緒に考えると、自ら気付くことができます。自己肯定感アップにもつながる3ステップ、ぜひ試してみてください。
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