企画・連載

【創価学園NAVI】 時間の使い方を見直そう!――創価高校の「手帳」を使ったタイムマネジメント教育 2021年10月17日

主体性のある充実の一日一日を

 高校生は忙しい。勉強や部活に委員会。受験に向けて塾に通う生徒もいる。帰宅後、宿題を終え、ホッと一息つきながらSNSをチェック。そうこうしているうちに、寝るのが深夜になるなんてことも――。東京の創価高校(小平市)では、生徒たちに自律した生活を促すため、タイムマネジメント教育に力を入れ、効果を上げている。その秘訣は、どうやら「手帳」にあるらしい。

手帳を使い 実際の行動を記録 生活の振り返り

 高校生の「手帳」といえば、胸ポケットに収まる「生徒手帳」を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、創価高校で導入している手帳は、もう少し大きめなタイプである。
 
 文庫本より2回りほど大きなB6サイズ。
 
 見開きで月曜から日曜までの1週間の予定を細かく書き込める。右側には、「今週の目標」「メモ」「振り返り」「学習時間」等の欄。日付の下には、持ち物などを書けるチェックボックスが付いたコーナーも。
 
 1日の予定を書くスペースは縦に長く、時間の目盛りが付いている。中央縦に薄い線が引かれ、左に「予定」を、右には「実際の行動記録」を書けるのが特徴だ。
 
 谷謙作副校長が、手帳導入の理由を教えてくれた。
 
 「今、教育現場で使われるキーワードの中に、自発的に行動を起こす『主体性』、自分の行動を検証し修正する『振り返り』といったものがあります。
 手帳の使い方は自由ですが、基本的には、①自分で目標を決め、②予定を立て、③行動を記録し、④生活の改善点を見つける、です。
 単なる予定管理だけでなく、行動記録を付けるのがポイントです。1週間の生活をその都度、振り返ることで、自分で自分を客観視でき、より充実した時間の使い方を考える習慣が身に付いていきます」

 今春、創価中学校を卒業して、創価高校に入学した加藤大輝さん(1年)は今、手帳を小まめに使っている。
 
 そのきっかけは、父親の言葉だった。
 
 ――中学校時代、帰宅後、勉強の息抜きに、インターネットで大好きなお笑いタレントの動画を見るのが楽しみの一つだった。
 
 しかし「ちょっと」のつもりが、誘惑に負けて、ついつい長い間、見てしまうことも。高校入学前、そんな生活を父に相談すると「自分を管理できていないんじゃないかな」と。
 
 「よし! 高校では、もっと自律した生活を送ろう」と手帳を活用するようになった。
 
 日々の生活を記録して気付いたのが、就寝と起床の時間が日によってバラバラだったこと。同じ時間に定めるようにすると、日中、眠気に襲われず、授業に集中できた。
 
 また、勉強や、所属する吹奏楽部での「毎月の目標」を書き出すことで、1週間や日々の目標も明確になり、生活に張り合いが出てきた。
 
 「予定をしっかり立てることで、逆に“自由に使える時間”が増えました。1日の中で、趣味や息抜きに当てる時間もつくっています。毎週、具体的な目標を達成することで、前進している手ごたえを感じています」

自分に自信を持つ

 創価高校では、1年生の1学期に、手帳の使い方を学ぶ「手帳教室」を開催。全校集会等で時折、代表の生徒が手帳の工夫を紹介するなど、“自分なりの使い方”を生徒同士が共有できる取り組みも行っている。
 
 また、教員が個人面談等で手帳を見て、生徒の頑張りをたたえたり、アドバイスしたりする。
 
 今野文枝教諭が担任する1年生のクラスでは、毎週末、手帳の写真を撮影して提出し、教員がコメントを返している。こうした取り組みは、コロナ禍でのオンライン授業の期間中、直接会えない生徒の変化を察知することにも役立ったという。
 
 「生徒たちには面倒でも、起床、就寝、勉強、食事の四つの時間だけは書こうと伝えています。見る際は特に起床・就寝時間に注目しています。生活リズムが乱れると、体調を崩しやすくなりますから。とはいっても、生徒の生活を管理するわけではありません。どうしたら充実した3年間にできるか、一緒に考えるようにしているのです」

 同様の手帳を導入する学校は年々、増えているという。
 
 創価高校で使用しているのは、教育プログラム開発のNOLTYプランナーズが手掛ける中高生向け“ビジネス手帳”。同社製の手帳を採用する学校は現在、約1000校になるという。
 
 同社は、学校の垣根を越えて、生徒の独創的な手帳の使い方を広める「手帳甲子園」を主催している。創価高校はこれまで多くの入賞者を輩出。2017年度、19年度には、同校の生徒が“日本一”に輝いた。
 
 17年度に優勝した荒井花菜さん(20年卒)は、「何でも挑戦したい性格」だという。高校入学後、勉強、生徒会、クラブ、行事の実行委員などに励んできた。やりたいことがいっぱいある半面、できていないことばかりに気を取られ、落ち込むこともあったという。
 
 「手帳を書き、定期的に振り返るようになってからは、“これだけのことをやってきた”と、自分を肯定でき、自分に自信が持てるようになったんです」
 
 現在、創価大学の法学部で、夢を目指して、向学の日々を送っている。
 
 そんな荒井さんに触発を受けたのが、同じ英語ディベート部の後輩・深瀬真歩さん(3年)だ。
 
 何でも全力投球する先輩の姿に憧れ、その秘訣を聞いたところ、見せてくれたのがびっしりと書き込まれた手帳だった。
 
 以来、深瀬さんも手帳を使い込み、「時間を大切にできる」ように。特に往復で3時間かかる通学では、いつもならスマホをいじったり、寝てしまったりしていたが、有効に使おうと考えた。通学中に何をしたのか、手帳に円グラフを書き、「見える化」してみた。
 
 そうした取り組みを「手帳甲子園」で発表し、最優秀賞(日本一)を受賞した。
 
 「以前は“あれもやらなきゃ”“これもやらなきゃ”と、やることに追われて焦ってしまうことがありましたが、手帳に書き込むことで頭が整理され、目の前のことに集中できるようになりました」
 
 今、大学受験に向けて勉強に励む深瀬さんの手帳には、日々、挑戦の軌跡が刻まれ続けている。

時間感覚を磨く

 将来の目標をどう定めて、どう頑張るのか――生き方や働き方が多様化する現代社会にあって、自分で自分を管理する力は、ますます求められている。
 
 卒業生の羽沢舞さん(17年卒)も、そうした力を、手帳を書くことで培った一人だ。
 
 現在、新潟で写真スタジオのカメラマンを務める。1日で多い時は、15組以上の撮影や事前打ち合わせを行うという。それぞれ、時間内に終えられるよう、その日の予定客を頭に入れ、スムーズな対応を心掛けている。
 
 学園卒業後も高校時代と同じような手帳を愛用する彼女は、毎日、時間ごとに業務の内容を記し、良かった点、悪かった点などを書き残す。
 
 先日、その地道な努力を知った上司から「日々の振り返りがしっかり力になっているね。業務遂行の時間感覚も研ぎ澄まされていて、素晴らしい」との言葉をもらった。
 
 羽沢さんは学園時代の手帳を、自分の歴史が刻まれた“宝物”として今も大切に持つ。そして現在使っている手帳には学園の校訓、入学式、卒業式の創立者からのメッセージなどを書き留め、学園出身の誇りを胸に社会での活躍を誓っている。
 
 谷副校長は力を込めて語った。
 
 「学校生活を漫然と過ごすのではなく、生徒が手帳を書くことをきっかけに、主体性を持ち、輝く日々を送れるよう、励まし続けています。
 限られた高校3年間の中で、自分の目標に向かって、どう挑戦し、どう充実した一日一日を過ごすことができるのか――私たち教職員は常に、そのことを心に留めて、これからも教育に臨んでいきます」
  
  
 ◆手帳甲子園って何?

 毎年、約1000人の中学生・高校生が挑戦する「手帳甲子園」。教育プログラム開発のNOLTYプランナーズが主催する、この大会には、手帳を使って成長したことや、その取り組みを発表する「活用部門」と、手帳の表紙に施したデザインの独創性を競う「表紙デザイン部門」の2部門がある。生徒同士が触発し合うことを目的に開催され、毎年、大人の発想では考えつくことのできないような、柔軟性に富んだ手帳の使い方などが紹介されている。
 大会運営に携わる宮田莉佳氏は創価高校を評価する。「毎年のように創価高校の生徒たちは、手帳甲子園の本戦に勝ち上がります。それは、手帳を付ける大切さを実感する教員の皆さまによる、長年の細やかな生徒指導のたまものでしょう」
  
  
 ※ご感想をお寄せください。
 news-kikaku@seikyo-np.jp
  
 ※創価学園NAVIのバックナンバーが無料で読めます(2022年2月28日まで。会員登録は不要です)
 https://www.seikyoonline.com/rensaimatome/gakuennavi.html