創作童話「子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒険」では、主人公のミライが、仏教説話の世界を巡る冒険に出かけます。座談会の未来部コーナーなどでご活用ください！（イラスト　逸見チエコ）

　創（そう）作（さく）童話「子どもと学ぶ仏教説話――ミライの冒（ぼう）険（けん）」では、主人公のミライが、仏教説話の世界を巡（めぐ）る冒険に出かけます。座談会の未来部コーナーなどでご活用ください！（イラスト　逸見チエコ）

　「大きな林だなぁ～」
　ミライの目の前には、りっぱな林が広がっています。
　そこへ、一人のおじさんが現れて言いました。
　「ここだ！　この場所が良い！」

　「大（おお）きな林（はやし）だなぁ～」
　ミライの目（め）の前（まえ）には、りっぱな林（はやし）が広（ひろ）がっています。
　そこへ、一人（ひとり）のおじさんが現（あらわ）れて言（い）いました。
　「ここだ！　この場（ば）所（しょ）が良（よ）い！」

　「こんにちは。ここで何をしているんですか？」
　「私はスダツ。大きな屋敷を建てられる場所を探しているんだ。多くの人々が集まり、幸せになるための修行ができる屋敷を建てたいんだ」
　「そんな屋敷があると、うれしいね！」
　二人は、この林の持ち主を探すことに。すると、持ち主は、いじわるな王子さまだったのです。

　「こんにちは。ここで何（なに）をしているんですか？」
　「私（わたし）はスダツ。大（おお）きな屋（や）敷（しき）を建（た）てられる場（ば）所（しょ）を探（さが）しているんだ。多（おお）くの人（ひと）々（びと）が集（あつ）まり、幸（しあわ）せになるための修（しゅ）行（ぎょう）ができる屋（や）敷（しき）を建（た）てたいんだ」
　「そんな屋（や）敷（しき）があると、うれしいね！」
　二人（ふたり）は、この林（はやし）の持（も）ち主（ぬし）を探（さが）すことに。すると、持（も）ち主（ぬし）は、いじわるな王（おう）子（じ）さまだったのです。

　「この林がほしければ、林いっぱいに金貨を敷きつめることだ。そうすれば林をあげよう。君はお金持ちのようだから、ムリではないだろう？」
　スダツとミライは、さっそく金貨を林に並べ始めました。
　林はとても広いので、いつまでかかるか、わかりません。

　「この林（はやし）がほしければ、林（はやし）いっぱいに金（きん）貨（か）を敷（し）きつめることだ。そうすれば林（はやし）をあげよう。君（きみ）はお金（かね）持（も）ちのようだから、ムリではないだろう？」
　スダツとミライは、さっそく金（きん）貨（か）を林（はやし）に並（なら）べ始（はじ）めました。
　林（はやし）はとても広（ひろ）いので、いつまでかかるか、わかりません。

　何日もかけて、終わりが見えてきたころ。スダツが大声で言いました。
　「ダメだ！　ほんの少し金貨が足りない！」
　「あきらめちゃダメだよ。ミライがなんとかする！」

　何（なん）日（にち）もかけて、終（お）わりが見（み）えてきたころ。スダツが大（おお）声（ごえ）で言（い）いました。
　「ダメだ！　ほんの少（すこ）し金（きん）貨（か）が足（た）りない！」
　「あきらめちゃダメだよ。ミライがなんとかする！」

　物を運んだり、水をくんだり……。ミライは町の人たちのお手伝いをして、少しずつ金貨を分けてもらったのです。
　そのミライの姿に、スダツも再び立ち上がります。
　「よし。私もやるぞ！」

　物（もの）を運（はこ）んだり、水（みず）をくんだり……。ミライは町（まち）の人（ひと）たちのお手（て）伝（つだ）いをして、少（すこ）しずつ金（きん）貨（か）を分（わ）けてもらったのです。
　そのミライの姿（すがた）に、スダツも再（ふたた）び立（た）ち上（あ）がります。
　「よし。私（わたし）もやるぞ！」

　スダツもミライといっしょに、町の人のお手伝いに汗を流して金貨を用意したのです。
　そして、林いっぱいに金貨を敷きつめることができました。

　スダツもミライといっしょに、町（まち）の人（ひと）のお手（て）伝（つだ）いに汗（あせ）を流（なが）して金（きん）貨（か）を用（よう）意（い）したのです。
　そして、林（はやし）いっぱいに金（きん）貨（か）を敷（し）きつめることができました。

　「まさか、本当にやってみせるなんて……。みんなのために、そこまで頑張る君たちに、申し訳ないことをした。金貨はいらない。あの林は、スダツにゆずろう」

　「まさか、本（ほん）当（とう）にやってみせるなんて……。みんなのために、そこまで頑（がん）張（ば）る君（きみ）たちに、申（もう）し訳（わけ）ないことをした。金（きん）貨（か）はいらない。あの林（はやし）は、スダツにゆずろう」

　こうして、林には、りっぱな屋敷が建ち、人々が楽しく集まるようになりました。
　スダツは、その様子をうれしそうに見守っていました。
　（つづく。前回は1月9日付）

　こうして、林（はやし）には、りっぱな屋（や）敷（しき）が建（た）ち、人（ひと）々（びと）が楽（たの）しく集（あつ）まるようになりました。
　スダツは、その様（よう）子（す）をうれしそうに見（み）守（まも）っていました。
　（つづく。前回は1月9日付）

　今回のお話の基になったのは、須達長者の説話です。須達長者は、釈尊とその弟子たちが修行をするのにちょうど良い土地を見つけます。その土地の所有者である王子の命令に従い、土地を手に入れるため、須達長者は金を敷き詰めました。その誠意に心を打たれ、王子は心を入れ替え、土地を寄付したといわれています。こうして、その土地に修行のための建物が建てられました。この建物は、「祇園精舎」と呼ばれています。
　“人々のために”と、財産をなげうつ覚悟をした須達長者の志に驚かされます。
　池田先生は、「自分のためだけでなく、人のために、社会のためにと行動するからこそ、そこに真の『喜び』が湧くのです」と教えています。
　真に楽しく、幸福に満ちた人生――その道は、人のために一心に行動する先に続いているのです。

　今回のお話の基（もと）になったのは、須（す）達（だつ）長（ちょう）者（じゃ）の説話です。須達長者は、釈（しゃく）尊（そん）とその弟子たちが修行をするのにちょうど良い土地を見つけます。その土地の所有者である王子の命令に従（したが）い、土地を手に入れるため、須達長者は金（きん）を敷（し）き詰（つ）めました。その誠（せい）意（い）に心を打たれ、王子は心を入（い）れ替（か）え、土地を寄付したといわれています。こうして、その土地に修行のための建物が建てられました。この建物は、「祇（ぎ）園（おん）精（しょう）舎（じゃ）」と呼（よ）ばれています。
　“人々のために”と、財産をなげうつ覚（かく）悟（ご）をした須達長者の志に驚（おどろ）かされます。
　池田先生は、「自分のためだけでなく、人のために、社会のためにと行動するからこそ、そこに真の『喜び』が湧（わ）くのです」と教えています。
　真に楽しく、幸福に満ちた人生――その道は、人のために一心に行動する先に続いているのです。