聖教ニュース

韓国「趙永植・池田大作 平和フォーラム2026」から(要旨) 2026年6月4日

 韓国・首都ソウルの慶熙大学で行われた「趙永植・池田大作 平和フォーラム2026」(5月16日)には、多くの学術者や学生らが参加し、人類の平和を目指す思想と実践を探究した。ここでは、登壇者の代表の要旨を紹介する。

〈祝辞〉 李寿成元首相
志を受け継いで未来へ

 私が本フォーラムに参加したのは、単なる一行事ではなく、趙永植博士と池田先生のご遺志をしのぶ、真心のこもった場であると感じたからです。
 
 私にとって趙博士は、恩師であり大学の先輩でもあり、長年にわたり温かく見守り、支えてくださった存在でした。ソウル大学総長や首相(国務総理)を務めていた時期はもちろん、公職を離れた後も変わらぬ心で接してくださった深い人間愛を今、あらためてかみ締めています。
 
 世界大学総長会議の会長や、国連の「国際平和デー」の制定に尽力されたその生涯は、まさに平和と人間への献身そのものであったと私は思います。
 
 また、1999年に日本を訪れた際、池田先生とお会いしました。先生は権威を感じさせることなく、人間味にあふれながらも大山のように堂々とした風格を備えておられ、深い感銘を受けたことを覚えています。
 
 特に“韓国は日本文化の大恩人です”と語られ、両国は兄弟のように平和に共存すべきだと話されていた言葉が、今も強く心に残っています。
 
 私は、趙博士と池田先生のお二人が、人類の平和と幸福のために尽くされた偉大な方々であると確信しています。だからこそ、私たちはその志を受け継ぎ、大きな平和の流れを築いていかなければなりません。
 
 世界の平和と人生の幸福、平等と謙虚さ、そして愛に満ちた社会を、共々に実現していきましょう。

〈基調講演〉 慶熙大学 金鎮想総長
人間の可能性を開く教育

 本フォーラムのテーマは、「オートピア・人間革命の時代を開く――教育と学問の役割」です。
 
 慶熙大学の創立者・趙永植博士の思想の核心は「オートピア」であり、創価大学の創立者・池田先生の哲学の中核は「人間革命」です。両者は異なる視点から出発していますが、“誰もが尊厳を持って生きられる世界”の実現を目指す点で深く共鳴しています。
 
 趙博士が提唱したオートピアとは、精神的な豊かさと物質的な豊かさが調和し、人間らしい生きがいに満ちた社会のことです。その実現は、一人一人の自由意志と倫理的な自覚によって支えられるものです。
 
 博士は、人間こそが意識を変革し、文明の方向性を変えていく主体であると考えました。そして、人類が協力しながら平和を築く「地球共同社会」という構想を示しました。
 
 その根底には、あらゆる存在が相互につながっているという全体性の認識があります。社会の在り方を考える上で重要なのは、自らの自由だけでなく、他者の自由も尊重しながら共に生きていく姿勢です。
 
 このオートピアの思想と深く響き合うのが、池田先生の提唱された人間革命です。
 
 池田先生は、制度や社会構造を変えるだけでは、人類の課題を根本的に解決することはできず、人間自身の心の変革が不可欠であると訴えました。人間革命とは、人間の内に秘められた無限の可能性を信じ抜き、その可能性を開花させていくことへの絶え間ない挑戦です。
 
 創大が掲げる「人間教育の最高学府たれ」「新しき大文化建設の揺籃たれ」「人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ」という建学の精神も、教育を単なる知識の伝達ではなく、社会や周囲に価値を生み出していく人材を育成する営みとして位置づけています。
 
 また、池田先生が示した世界市民の要件である“生命の相関性を認識する智慧”“差異を尊重して成長の糧とする勇気”“遠くの苦しみにも同苦する慈悲”は趙博士の思想とも深く通じ合います。
 
 私は、オートピアと人間革命は同じ方向を目指す思想であると考えています。どちらも平和の主体的創造者を育てる教育を目指しているのです。
 
 戦争や差別、環境問題、科学技術の急速な発展に伴う課題など、人類が直面する危機が複雑化する今だからこそ、慶熙と創価の両大学には大きな使命があります。
 
 世界市民教育の推進、共同研究の発展、青年交流の拡充、さらにはAI(人工知能)時代における人間主義の価値の探究などを通じて、両創立者の理念を具体的な実践へと結び付けていくことが、非常に重要になってきています。
 
 オートピアは私たちに“人類社会はどうあるべきか”を問いかけます。人間革命は“自分自身をどのように変革するか”を問いかけます。この二つの問いに真摯に向き合う時、教育と学問は社会をより良い方向へ導く大きな力となります。
 
 本フォーラムが、これまでの歩みを振り返るだけでなく、両大学の新たな協力と挑戦を生み出す出発点となることを心から期待しています。

〈ゲストスピーチ〉 創価大学 鈴木美華学長
世界市民の育成を共に

 趙永植博士と池田先生は、戦争の悲惨さを体験する中で“教育こそが平和を築く力である”との信念に至り、人間教育の実現に生涯をささげられました。両者の思想は、一人の可能性を信じ、平和な社会を目指す点で一致しています。
 
 両大学の交流は、1997年の協定締結を機に本格化しました。これまで交換留学や文化交流、共同研究などを重ねながら、学生や教職員の相互理解と友情を育んできました。
 
 創大は「教育・文化・平和」を柱とする人間教育の実践を目指し、「価値創造を実践する『世界市民』を育む大学」との基本構想を掲げています。
 
 人間教育において重要な視点は、在学期間で完結するのではなく、生涯にわたり成長し続ける力の基盤を養うことです。広い視野と総合的判断力を身に付け、社会へ踏み出す「原点」を学生時代に築くことが重要です。
 
 一方で、人間教育を具体的な教育実践として定着させることは容易ではありません。人間性の成長は授業だけで実現できるものではなく、知識の習得や他者との交流、挑戦や挫折など、大学生活全体の経験を通して培われるものです。また、数値では測れない人格形成の価値をいかに伝えていくかも模索し続けています。
 
 今後は国際シンポジウムやオンラインでの交流などを通じて、両大学の連携のさらなる発展を目指していきます。そして、創大が世界市民教育と創価教育研究の国際的な拠点となり、世界各地の研究者や教育機関をつなぐ役割を果たすことも重要な目標です。
 
 混迷する現代社会の中で、教育によって人々の心に平和の砦を築くことが求められます。両大学が創立者の志を継承しながら協力を深めることで、地球的課題の解決に貢献する大きな力になることを確信しています。