健康・介護

〈Seikyo Gift〉 効果的な高血圧対策とは? (健康PLUS) 2026年6月27日

滋賀医科大学NCD疫学研究センター
センター長
三浦克之さん

 高血圧(140㎜Hg/90㎜Hg以上)対策には、ナトリウムを減らす減塩とともにカリウムの摂取を増やすのが効果的。昨年、日本高血圧学会ガイドラインに「ナトカリ比」(尿中ナトリウムをカリウムで割った値)の目標値が明記されました。ガイドライン改訂を進めた滋賀医科大学教授の三浦克之さんに聞きました(4月18日付)。
 

過剰にナトリウムを取ると

 食塩を取り過ぎると血圧が高くなるのは明らかです。時々、メディアで「減塩しなくていい」という話が出ますが、それは誤りです。32カ国の約1万人を対象にしたインターソルト研究では、食塩摂取量が多い集団ほど血圧が高く、1日平均10グラムだと血圧は10年間で約6㎜Hg上昇することが明らかになりました。一方、ブラジルのある民族は食塩摂取量が1日1グラム未満で、血圧が低く、50代でも100㎜Hg前後で加齢による上昇もほぼありませんでした。
 
 人間の体は、食塩の主成分であるナトリウムを過剰に摂取すると、その濃度を下げるため体内に水分をため込みます。ため込まれた水分が血液量を増やし、血管にかかる圧力が増して血圧が上がってしまいます(動脈硬化が進んだ血管であれば、さらに血圧は上がる)。
 
 血圧が高い状態が続くと、心臓病や脳卒中など循環器系の疾患のリスクが高まります。
 日本人はしょうゆ、みそ、漬物など食塩の多いものを食べる文化が根付いているため、国際的に見ても食塩摂取量が多く1日平均で10グラムほどです。世界保健機関(WHO)が勧告する1日5グラム未満を大幅に超えています。厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)では、男性7・5グラム未満、女性6・5グラム未満、高血圧の人は6グラム未満を目標としています。
 

体の内側から洗い流す

 減塩に加え、野菜や果物に豊富に含まれるカリウムを積極的に摂取することが、より効果的な高血圧対策です。
 
 腎臓は血液をろ過して尿を作る際、ナトリウムとカリウムのバランスを調整しており、カリウムが十分にあるとナトリウムの再吸収を抑えて尿への排出を促します。カリウムは体の内側から塩分を「洗い流す」役割を担っているのです。
 
 ナトリウムは摂取した9割以上、カリウムは7~8割が尿から排出されます。
 
 尿で食塩摂取量を測る場合、水分摂取量によって濃度が変わるため、1回の尿だけでは正確な値を得ることができず、1日分の尿をためる「24時間蓄尿」が必要です。これは現実的ではありません。一方、ナトカリ比は量の比を見るため、それぞれの物質の濃度の影響が打ち消され、1回の随時尿でも“食生活の質”を反映した指標として、高血圧対策に活用できるのです。蓄尿の手間なく食生活の質をざっくり評価できる点がナトカリ比の利点です。
 
 日本各地の30歳以上の約1万人を対象にした24年間の追跡調査では、ナトカリ比が高い人ほど、高血圧と関連する循環器病の発症・死亡リスクが上昇することが分かりました。

 さらに宮城県登米市と東北大学グループの共同研究(17、18年度)では、ナトカリ比が高い人ほど血圧が高い傾向にあり、ナトカリ比が下がると血圧も下がることが実証されました。こうした蓄積を得て、日本高血圧学会は25年8月のガイドライン改訂で、ナトカリ比「2未満」を目標値として正式に発表しました。厚労省の食事摂取基準には、カリウムの目標摂取量(1日)を男性3000ミリグラム以上、女性2600ミリグラム以上と明示されています。日本人のカリウム摂取量は、1日平均で約2200ミリグラムにとどまっています。
 

食生活の改善が近道

 自分のナトカリ比を確認するには、医療機関や健康管理センター等での尿検査のほか、郵送による尿検査サービスを利用する方法があります。郵送による尿検査は3000円程度です。
 
 食生活では、みそ汁は1日1杯まで、麺類のスープは残す、塩辛いものは多量に摂取しないなど工夫して減塩に取り組みます。カリウムの摂取を増やすためには野菜と果物を意識して食べること。国の目標では野菜350グラム、果物200グラムを1日の目安にしています(健康日本21)。野菜の中でもカリウムが豊富なのはほうれん草、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃなど。果物ではアボカド、バナナ、キウイなどが代表的です。
 
 乳製品(牛乳・ヨーグルト)にもカリウムが含まれています。どうしても野菜が取れない時は野菜ジュースなども補助的に活用できます。
 
 ただし、腎臓病の方はカリウムを尿に排出する機能が低下しているため、摂取制限が必要になる場合があるので、主治医の指示に従ってください。
 
 厚労省が公開している「ナトカリ手帳」には、カリウムを増やすための具体的な食事のヒントなどが掲載されており、誰でも無料で活用できます(一部を下記に掲載)。減塩とともに、野菜・果物を意識して摂取する食生活こそ、血圧を下げる一番の近道です。
 
 このほか、適正体重の維持、節酒、適度の運動も重要です。医師が必要と判断した場合は降圧薬を服用してください。
 

カリウムの増やし方
野菜

 1日5つ分(350グラム)以上の野菜を食べるのが目標です。

果物

 1日1~2つ分が目標です。少なくとも2日に1つ分の果物を食べましょう。

 
 
 みうら・かつゆき 滋賀医科大学NCD疫学研究センターセンター長・教授。金沢大学大学院の博士課程修了後、米・ノースウェスタン大学医学部客員研究員等を経て現職。大規模研究「NIPPON DATA」を主導し、食塩摂取と高血圧・循環器疾患の関連を解明した。日本高血圧学会減塩・栄養委員会委員長として減塩目標の普及に取り組む血圧管理の第一人者。

 
 
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