企画・連載

〈SDGs×SEIKYO〉 「熱量」を原動力に価値を伝える! 2026年6月20日

Z世代経営者
ライブコマースの第一人者 松村夏海さん
今回のテーマは、「働きがいも経済成長も」

 「ライブコマース」と呼ばれるショッピングの新形態(※別掲を参照)が、今、日本の消費のあり方を変えつつあります。この業界で日本トップの業績を誇る、株式会社Tailor App代表取締役の松村夏海さん(28)。人の心を動かすのは、商品を本気で信じ、熱を持って伝える人の言葉だといいます。Z世代経営者の松村さんの挑戦から、働くこと、伝えること、そして熱量を持って生きることの意味を探ります。

●SNSの新たな形

 ――そもそもライブコマースって、何をしているんですか?
  
 一言で言うと、テレビショッピングのデジタル版です。SNSなどのライブ配信を通じて、出演者が商品の魅力をリアルタイムで伝え、視聴者と対話しながら、その場での購入につなげていく仕組みです。例えば、廃棄寸前の名産りんごがあっという間に完売したり、1時間で1500万円の売り上げを記録したりした事例もあります。短時間で絶大な反響を得られるのが強みです。商品に価値があるのに企業規模によって販路が限られてしまっている会社でも、ライブコマースを通じて見いだせる可能性があるのです。
  
 

 ――テレビショッピングや広告との違いはなんでしょうか。
  
 「メーカー(作り手の意図)」と「伝える人(売り手)の熱量」を消費者に直接、対話しながら届けられることです。メーカーが伝えたいことを一方的に発信するだけでは、もう消費者の心は動かない時代です。
 AIによって消費者のニーズも簡単に可視化できます。その上で、ライブコマースを組み合わせれば、消費者の生の声や感情を大量に分析することができます。結果として、「消費者が本当に欲しいもの」と「企業が売りたいもの」を自然と一致させる仕組みをつくることができるんです。

●確固たる地位

 ――ライブコマースに可能性を感じたきっかけは何でしょうか。
  
 今までは、売り手に「熱量」があり、商品に価値があっても、売れない時代でした。
 私の祖父は呉服屋を経営していましたが、コロナ禍のあおりを受けて廃業しました。当時、私は大学生。手作業で呉服を織って着物に仕上げる日本の職人仕事がなくなる現実を目の当たりにし、日本文化や技術が失われていく強い危機感を抱いたんです。
 祖父に聞くと、日本古来の接客文化には見返りを求めず、相手の懐に自然と寄り添う対話や心遣いがあったそうです。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の理念をデジタルの力で復興できないか――その答えが、ライブコマースでした。

 ――大学卒業後に就職するのではなく、経営の道を選ばれたそうですね。創業当初は苦労されたのではないですか?
  
 見ず知らずの学生起業家を相手にしてくれる企業なんてあるわけがない(笑)。オフィスもないので、カフェで『会社四季報』を片手に、営業のテレアポを何百件と行いました。コロナ禍を経て、ライブコマース業界は絶対伸びるという自信はあったんです。初月に80件のアポイントメントを取り、約800万円の案件を受注することができました。
 現在は、ライブコマースの全体プランニングを一括で行い、質の高いライブ運営を提案しています。また、世界初のInstagramライブ分析・DM(ダイレクトメッセージ)自動送信システムを開発。これは、ライブコマースに欠かせない独自システムとなり、業界で確固たる地位を確立できました。
  
 ――Tailor Appは、広告・SNSマーケティングを主戦場とされています。
  
 これまで、大手飲料メーカーや広告代理店との共同CMの制作などを手がけてきました。国内のライブコマース実績本数、1ライブコマースの最大視聴者実績、ライブ配信を通じた売上金額などでも全国1位を獲得。名実ともに、日本の消費スタイルに革命を起こすことができると確信しています。

●魂を燃やせ!

 ――ライブコマースは今後、日本国内で急拡大していくとの予想もあります。どのような展望を描いていますか。
  
 日本の良いものが、国内外できちんと評価される流れをつくりたい。地方の名産品や、職人の技術が詰まった商品の価値は、まだ十分に知られていない。ライブコマースは、そのための入り口です。売れた理由や届かなかった理由を、次の商品開発や広告表現に生かしていく。単に一度売って終わりではなく、作り手と買い手の距離を縮め、商品の価値をさらに高めていくこともできるんです。
 私の変わらない目標は外貨を稼いで、日本を豊かにすることです。国内外に販路を広げ、良いものを作る人たちが仕事を続けられるようにする。その積み重ねが、日本の経済を元気にすると信じています。

 ――これから進路や働き方を考える世代に、伝えたいことはありますか。
  
 会社を立ち上げた当時は、ライブコマース事業は日本では根付かないと言われ、大企業も撤退していきました。「君には無理だ」と現実を突きつけられたようでしたが、逆に、反骨心も芽生えました。そんな逆境と向き合う中で感じたことは、働くことは、単にお金を得るための手段ではないということです。自分が信じる価値を、必要としている人に届ける。作り手(職人)の仕事が続き、企業や地域の成長にもつながっていく。私がライブコマースを通して目指す、消費革命の先には、新たな「働きがい」を生み出すことができると確信しています。
 

●ライブコマースとは?

 ライブコマースは、SNSや専用アプリのライブ配信を通じて行われる。出演者が商品をリアルタイムで紹介し、視聴者とチャット機能などを利用して対話しながら、その場での購入につなげる販売手法だ。テレビショッピングのデジタル版とも言えるが、視聴者が質問や感想をその場で発信できる双方向性が最大の違いである。中国市場では、2023年の流通総額は約98兆円規模に達したとされる。一方で、日本市場は、23年時点で3000億円弱と発展途上にある。

〈プロフィル〉

 まつむら・なつみ 株式会社Tailor App代表取締役。静岡県出身。大学在学中にアメリカに留学。2020年に同社を創業し、ライブコマース事業を展開。複数企業から出資を受け、日本のライブコマース業界のナンバーワンに成長。著書にライブコマース関連書籍がある。歌手・氷川きよしさんがブランドアンバサダーを務めるビューティーブランドなども手がけている。

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