名字の言(紙面)

〈名字の言〉 2025年5月4日

 運転免許証の更新時の講習でのこと。講師が問いかけた。「『かもしれない運転』と『だろう運転』があります。皆さんはどちらですか?」▼配布された「わかる 身につく 交通教本」によると、「かもしれない運転」は“もしかすると○○かもしれない”と、自分に厳しい予測を立てて準備する運転。「だろう運転」は“たぶん大丈夫だろう”と、自分に都合のいい予測をする運転。講師は、常に緊張感を持ち、危険を予測する能力の向上を訴えた▼生きるうえでも大切な視点と思った。例えば、ネット上での言葉のやりとり。歌人の俵万智さんは言語学者の川原繁人さんとの対談で、言葉を使うことが安易に捉えられており、「みんな無免許で好き放題に乗り回している印象があります。だから言葉の暴力や行き違い、事故が多発する」と(『日本語の秘密』講談社現代新書)▼自分中心の「だろう運転」でなく、他者の立場を考える「かもしれない運転」は人生万般に通じよう。相手の身になってみる「豊かな想像力は『同苦』に通ずる心の叫び」と池田先生はつづる▼冒頭の講師は「皆さんは『かもしれない運転』でお願いします!」と。多忙の中でも想像力を働かせ、相手の身になってみる努力を惜しむまい。(革)