名字の言(紙面)

〈名字の言〉 2025年9月27日

 池田先生とトインビー博士が対談した際、「好きな作家」が話題に上り、博士は「ダンテ」を挙げた。ダンテの人生は“母や理想の女性と慕う、愛する人らの早世という不条理な離別”“愛する故郷からの権力による不当な追放”という悲運に見舞われた▼博士は“この二重苦を味わったからこそ大著『神曲』は誕生した”と見た。そして語った。「ダンテは、偉大な芸術を生みだすことによって、みずからの私的な不幸を、世界の多くの人々の僥倖(思いがけない幸運)へと転換した」▼1979年、東京創価小学校を訪問した池田先生は、ある女子児童と懇談した。幼少に事故に遭い、義足だった彼女に、先生は目・耳・口の不自由という三重苦を乗り越えたヘレン・ケラーの人生を語った▼「ヘレン・ケラーは、自分の運命を、人びとのために尽くしていく力に変えていった」「あなたも、しっかり勉強して、ヘレン・ケラーのような人になるんだよ」と。その言葉を胸に彼女は今、社会福祉士として、学会の地区女性部長として他者の幸せのために奔走する▼人にはそれぞれの宿命がある。しかし、不幸と思う宿命を信心根本に勝ち越え、つかんだ確信は自他共の幸福を開く力となる。信心は宿命を使命に変える。(城)