善と平和の方向へ
先端技術の価値を創造
善と平和の方向へ
先端技術の価値を創造
ブラジルの空から撮影した一枚の写真に、「牧口」「戸田」「池田」――創価三代会長の名を冠した公共施設が全て写っています。サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市は、約25年前に「牧口常三郎通り」「戸田城聖公園」「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」を設置しました。理由は、この街が「教育」に力を注いでいる点にあるようです。本年3月、2人の創価の教育者を訪ねました。(記事=大宮将之、写真=種村伸広)
ブラジルの空から撮影した一枚の写真に、「牧口」「戸田」「池田」――創価三代会長の名を冠した公共施設が全て写っています。サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市は、約25年前に「牧口常三郎通り」「戸田城聖公園」「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」を設置しました。理由は、この街が「教育」に力を注いでいる点にあるようです。本年3月、2人の創価の教育者を訪ねました。(記事=大宮将之、写真=種村伸広)
貧しい人たちにこそ
豊かな“学びの場”を
貧しい人たちにこそ
豊かな“学びの場”を
ブラジルの国立宇宙研究所がある。世界有数の航空機メーカー本社もある。あまたの企業や起業家が集まり、技術革新を生み続ける人口72万の先進都市、サンジョゼ・ドス・カンポス――。こう形容されることが多いため、国内でも「経済的に豊かな街」というイメージを抱く人は少なくない。
ブラジルの国立宇宙研究所がある。世界有数の航空機メーカー本社もある。あまたの企業や起業家が集まり、技術革新を生み続ける人口72万の先進都市、サンジョゼ・ドス・カンポス――。こう形容されることが多いため、国内でも「経済的に豊かな街」というイメージを抱く人は少なくない。
実際に訪れると、全国的な課題である「経済格差」と決して無縁ではないことも分かる。しかし、それを「教育格差」にしない環境づくりに、同市の“真の豊かさ”があるのだろう。
中核拠点の一つが、公立「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」である。開校25周年。貧困世帯の15歳以上の人々に、上限年齢なく、無料もしくは安価で、「看護」「機械工学」「化学」などの高度な専門技術を習得できる場を提供する。本年、校長に就いたのがスザナ・ミヤ・キセンさん(地区婦人部長)だ。「開校時は、ここの一教員だったんですよ」
実際に訪れると、全国的な課題である「経済格差」と決して無縁ではないことも分かる。しかし、それを「教育格差」にしない環境づくりに、同市の“真の豊かさ”があるのだろう。
中核拠点の一つが、公立「エリオ・アウグスト・デ・ソウザ職業訓練校」である。開校25周年。貧困世帯の15歳以上の人々に、上限年齢なく、無料もしくは安価で、「看護」「機械工学」「化学」などの高度な専門技術を習得できる場を提供する。本年、校長に就いたのがスザナ・ミヤ・キセンさん(地区婦人部長)だ。「開校時は、ここの一教員だったんですよ」
真っ先に案内してくれたのは、「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」である。開校時に設置され、落成式典には当時の教育大臣が出席。これに先立つ1997年に「牧口常三郎通り」、99年には「戸田城聖公園」がそれぞれ、同校の目の前に誕生していた。
なぜ創価の三代会長をたたえるのか。それは「価値創造の教育学」を確立し、実践者を世界中に広げたことにあるという。
真っ先に案内してくれたのは、「池田大作先生図書館」「池田香峯子庭園」である。開校時に設置され、落成式典には当時の教育大臣が出席。これに先立つ1997年に「牧口常三郎通り」、99年には「戸田城聖公園」がそれぞれ、同校の目の前に誕生していた。
なぜ創価の三代会長をたたえるのか。それは「価値創造の教育学」を確立し、実践者を世界中に広げたことにあるという。
科学技術といっても、その価値を善にするか悪にするか、平和のために使うか戦争に利用するか。方向を決めるのは人間にほかならない。「人格の価値を高めんとするのが教育の目的」であり、目的達成の手段を明らかにするのが創価教育学だ(『創価教育学体系』)。同市の行政・教育関係者は学会員を通してその理念を知り、教育現場に取り入れてきた。
スザナさんも自ら体現しようと努めてきた。「一番、心を砕いてきたのが『対話』です」。それは、校長になった今も変わらない。
科学技術といっても、その価値を善にするか悪にするか、平和のために使うか戦争に利用するか。方向を決めるのは人間にほかならない。「人格の価値を高めんとするのが教育の目的」であり、目的達成の手段を明らかにするのが創価教育学だ(『創価教育学体系』)。同市の行政・教育関係者は学会員を通してその理念を知り、教育現場に取り入れてきた。
スザナさんも自ら体現しようと努めてきた。「一番、心を砕いてきたのが『対話』です」。それは、校長になった今も変わらない。
時間を見つけては校内を歩き、教職員や生徒を気遣いながら「調子はどう?」「困っていることはない?」と笑顔で声をかける。校長室も常にオープン。「そのアイデア、いいね!」「率直な意見をありがとう!」と言われた相手は何ともうれしそう。人格を磨く活力も革新の知恵も、一人一人を尊重し、より良き“解”を共に更新し続ける対話から生まれるのだ。
図書館で読書に励む生徒に話を聞いた。「牧口先生・戸田先生・池田先生の人生が伝えるメッセージとは何か。何のために学ぶのか――日頃から皆で考え、語り合っています。この学校は、私たちの誇りですね」
時間を見つけては校内を歩き、教職員や生徒を気遣いながら「調子はどう?」「困っていることはない?」と笑顔で声をかける。校長室も常にオープン。「そのアイデア、いいね!」「率直な意見をありがとう!」と言われた相手は何ともうれしそう。人格を磨く活力も革新の知恵も、一人一人を尊重し、より良き“解”を共に更新し続ける対話から生まれるのだ。
図書館で読書に励む生徒に話を聞いた。「牧口先生・戸田先生・池田先生の人生が伝えるメッセージとは何か。何のために学ぶのか――日頃から皆で考え、語り合っています。この学校は、私たちの誇りですね」
教育本部の実践から
市の最優秀賞受賞が
教育本部の実践から
市の最優秀賞受賞が
ブラジルの各自治体はこの四半世紀、学校教育を段階的に進化させてきた。呼称を「教育2.0」「教育3.0」「教育4.0」と掲げ、子ども主体の学びへ、情報通信技術の本格的な活用へ、AI時代における問題解決能力を育む教育へ――。
サンジョゼ・ドス・カンポス市は、いち早く「教育5.0」への移行を宣言した自治体である。一言すれば「テクノロジーと人間性の融合」。家庭や地域と連携・協働しながら、一人一人が「より良く生きよう」とする心の豊かさを育むことが、最大の目的だ。
ブラジルの各自治体はこの四半世紀、学校教育を段階的に進化させてきた。呼称を「教育2.0」「教育3.0」「教育4.0」と掲げ、子ども主体の学びへ、情報通信技術の本格的な活用へ、AI時代における問題解決能力を育む教育へ――。
サンジョゼ・ドス・カンポス市は、いち早く「教育5.0」への移行を宣言した自治体である。一言すれば「テクノロジーと人間性の融合」。家庭や地域と連携・協働しながら、一人一人が「より良く生きよう」とする心の豊かさを育むことが、最大の目的だ。
公立の小・中学校「オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校」で教員を務める、レチシア・アレサンドラ・サントスさん(創価ユース・分圏青年部長)を取材した。
公立の小・中学校「オメラ・ダ・シルバ・ブラガ校」で教員を務める、レチシア・アレサンドラ・サントスさん(創価ユース・分圏青年部長)を取材した。
彼女は第一に「夢を持つ喜び」を生徒に喚起させる。“今の世界にないものを、新たな価値を、君もあなたも創ることができる。地球のどこかで、その実現を指折り数えて待つ人がいる!”――レチシアさんは、それを本気で信じてやまない。祈りを欠かさない。自身が「夢に向かう楽しさ」にしびれているからこそ、生徒をしびれさせることができるのだ。
彼女は第一に「夢を持つ喜び」を生徒に喚起させる。“今の世界にないものを、新たな価値を、君もあなたも創ることができる。地球のどこかで、その実現を指折り数えて待つ人がいる!”――レチシアさんは、それを本気で信じてやまない。祈りを欠かさない。自身が「夢に向かう楽しさ」にしびれているからこそ、生徒をしびれさせることができるのだ。
昨年、7年生(日本の中学1年生に相当)と挑戦したのが、「金融教育」や「民主主義」について視覚的に楽しく学べる資料を、タブレット端末で作るプロジェクト。資料の完成で終わりではない。皆が教室を飛び出し、事前に学校から協力依頼をしている周辺の家々を訪ね、「この資料が、どんな価値をあなたにもたらすのか」を説明するのである。他者との関係の中で初めて「価値」が生まれることを、生徒は体験的に学ぶ。
昨年、7年生(日本の中学1年生に相当)と挑戦したのが、「金融教育」や「民主主義」について視覚的に楽しく学べる資料を、タブレット端末で作るプロジェクト。資料の完成で終わりではない。皆が教室を飛び出し、事前に学校から協力依頼をしている周辺の家々を訪ね、「この資料が、どんな価値をあなたにもたらすのか」を説明するのである。他者との関係の中で初めて「価値」が生まれることを、生徒は体験的に学ぶ。
この取り組みは、市が主催する「教育起業プロジェクト」で高い評価を受け、生徒の1人が最優秀賞に。レチシアさんも「教師部門」で特別賞に輝いた。だが最大の勲章は、生徒からの手紙だったに違いない。「レチシア先生が忍耐強く一生懸命、私たちのために取り組んでくれたことが一番うれしい」「私が助けを必要とした時、親身になってもらったことに感謝しかありません」「先生の一つ一つの仕草が、大好きです!」
この取り組みは、市が主催する「教育起業プロジェクト」で高い評価を受け、生徒の1人が最優秀賞に。レチシアさんも「教師部門」で特別賞に輝いた。だが最大の勲章は、生徒からの手紙だったに違いない。「レチシア先生が忍耐強く一生懸命、私たちのために取り組んでくれたことが一番うれしい」「私が助けを必要とした時、親身になってもらったことに感謝しかありません」「先生の一つ一つの仕草が、大好きです!」
ほかにも「両手のない人が顔のメークをできるアプリ」を開発するため、パラリンピックの選手にインタビューを重ねた生徒など、人道的な価値観を備えた“未来の起業家”が次々と育っている。
本年4月、同市のホームページの広報に次の一文が掲載された。「創価学会が提唱する『価値創造』の教育理念が、わが市の学校に根付き、実を結び始めている」
ほかにも「両手のない人が顔のメークをできるアプリ」を開発するため、パラリンピックの選手にインタビューを重ねた生徒など、人道的な価値観を備えた“未来の起業家”が次々と育っている。
本年4月、同市のホームページの広報に次の一文が掲載された。「創価学会が提唱する『価値創造』の教育理念が、わが市の学校に根付き、実を結び始めている」
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