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〈Seikyo Gift〉 日本被団協にノーベル平和賞 ノルウェー・オスロの授賞式にSGI代表が出席 2025年1月25日

 【オスロ】ノーベル平和賞の授賞式が12月10日午後1時(現地時間)からノルウェーの首都オスロの市庁舎で開催され、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与された。これには、ノルウェー・ノーベル委員会から招待されたSGI(創価学会インタナショナル)の寺崎平和運動総局長、ハラップ欧州共同議長ら代表が出席した。(記事=大橋秀樹、写真=上沢尚之)
 
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 核兵器で人類を自滅させてはならない――授賞式の日本被団協・田中熙巳代表委員のスピーチは、核兵器使用の危機を絶対に回避しなければならないとの責任感と気迫にあふれていた。
 
 日本被団協は広島や長崎で被爆した人たちの全国組織。1956年に結成され、約70年間、日本や国外の各地で、証言活動を通し、核兵器廃絶を訴え続けている。
 
 創価学会は、同団体等が取り組む「ヒバクシャ国際署名」の推進を呼びかけ、協働してきた。また、学会が主催する戦争・被爆証言を聞く会や平和講演会などに同団体の関係者を招いている。
 
 世界では核兵器使用の威嚇が繰り返されるなど、核使用のリスクが冷戦以降で最大に高まっており、全ての指導者や市民が被爆者の証言に耳を傾けるべき時である。
 
 授賞式では、ノーベル委員会のフリードネス委員長が、日本被団協と被爆者の絶え間ない努力が、核のタブーを築いていく上で他に類を見ないほどの貢献を果たしたと強調。被爆者の体験を伝え広げることが人類の責任であると語った。
 
 記念演奏などに続いて、日本被団協の田中代表委員がスピーチ。13歳の時に長崎で被爆した際、町は黒く焼き尽くされ、やけどなどに苦しむ多くの人を見たと証言。生き残った被爆者は病気や生活苦、偏見に苦しみながらも、“同じ苦しみを世界中の誰にも経験させない”との決意で運動に取り組んできたと語った。さらに、次の世代が工夫して今後の核兵器廃絶運動を繰り広げてほしいと期待を寄せ、核兵器も戦争もない世界を求めて共に進もうと呼びかけた。
 
 また授賞式に先立つ9日(現地時間)、寺崎平和運動総局長ら代表団はオスロ市内で、ノーベル委員会のフリードネス委員長、トーヤ副委員長らと会見した。
 
 フリードネス委員長が、今回の日本被団協のノーベル平和賞の受賞は、核兵器を使用させない世論を形成するために重要であると強調。未来を担う若者たちが今後の核兵器廃絶の運動を受け継ぐ重要性について述べ、平和へのメッセージを共に世界に発信していきたいと語った。
 
 寺崎総局長はノーベル委員会の平和・人権への深い視点や取り組みから学び、市民社会の一員として連帯し、核兵器廃絶のための取り組みに一層尽力したいと応じた。

オスロでノーベル平和賞フォーラム
ノーベル研究所主催、SGIが後援団体として参画
核兵器の先制不使用を巡るワークショップ、被爆者と青年の対話行事も

 ノーベルウイークの主要行事であるノーベル平和賞フォーラムが12月11日午前(現地時間)、ノルウェー・オスロ市のオスロ大学で開催された。ノルウェー・ノーベル研究所が主催し、SGI(創価学会インタナショナル)も後援団体として参画した。
 
 核兵器使用の危機の克服をテーマとしたフォーラムでは、冒頭、「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」代表の小倉桂子氏と、日赤長崎原爆病院の名誉院長である朝長万左男氏が被爆証言を行い、市民一人一人に社会変革のための大きな力があり、皆で核兵器廃絶のために行動を起こそうと呼びかけた。
 
 基調講演を行った国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は40年前、ある病院で被爆者と出会い、衝撃を受けたことを述懐。NPT(核兵器不拡散条約)体制の弱体化による影響を指摘しつつ、被爆者の声を胸に刻み、各国のリーダーが、より強い責任感を持って核兵器の課題に取り組むべきであると語った。
 
 その後、二つのパネルディスカッションが実施された。
 
 一つ目は、“核兵器の脅威”をテーマに行われ、核兵器使用の威嚇が国際社会で繰り返されるなど、核兵器を忌避する“核のタブー”が損なわれている等の課題について議論された。
 
 このうち、ストックホルム国際平和研究所の大量破壊兵器プログラムのディレクターを務めるウィルフレッド・ワン氏は、AI(人工知能)や人間の誤操作による核兵器使用の危険性を述べ、核抑止論からの脱却を訴えた。
 
 続いて二つ目のディスカッションでは“核兵器の脅威を解決するために”をテーマに議論が交わされ、核兵器使用による被害についての最新研究や、次世代の人材を育む軍縮教育の重要性が話し合われた。
 
 アメリカ・ブラウン大学政治学部上級講師であるニーナ・タネンワルド氏は、核兵器廃絶を実現するための大切な一歩として、核兵器の先制不使用政策の重要性を強調。核兵器を使用しないという大国間の信頼を醸成する必要性を語った。

 同日午後には、オスロ大学のキャンパスでSGIが主催する“被爆者と青年の対話イベント”が実施された。これにはICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のメリッサ・パーク事務局長、小倉氏、朝長氏が登壇。地元の高校生らが参加した。
 
 また同日、オスロ大学のキャンパスで、SGIや同大学等が共催し、各国の専門家によるワークショップを開催。核兵器の先制不使用を巡り、活発な議論が行われた。
(2024年12月12日・13日付)