今シーズンの第2回となる連載「聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部」では、2次合宿の地である新潟・妙高高原へ。2人のコーチへのインタビューを通して、チームの成長する様子を伝えます。(12日付の第1回はこちらから)
今シーズンの第2回となる連載「聖教取材班が見た! 創価大学駅伝部」では、2次合宿の地である新潟・妙高高原へ。2人のコーチへのインタビューを通して、チームの成長する様子を伝えます。(12日付の第1回はこちらから)
新潟・上越妙高駅から車で約30分。車窓から見ると、黄金色になりつつある稲穂が一面に広がり、かなたの山々は、わずかながら赤と黄に彩られていた。
創価大学駅伝部は17日から26日にかけて、妙高高原での2次合宿を実施。聖教取材班は19、20の両日、現地を訪れた。
今回の担当記者は、取材班の中で一番若い。しかも、初めて駅伝部の記事を手がける。ハンドルを握る手に汗をにじませながら、19日午前11時、メンバーの宿泊所「サンヴィレッジまちだ」に到着した。
主務の笠原蓮花さんが、玄関で歓迎してくれた。3年生で主務を任された“敏腕マネ”の笑顔に、少し緊張がほぐれる。
最初に取材したのは、久保田満ヘッドコーチだ。180センチの長身を深々と折りながら、さわやかなあいさつで迎えてくださった。
新潟・上越妙高駅から車で約30分。車窓から見ると、黄金色になりつつある稲穂が一面に広がり、かなたの山々は、わずかながら赤と黄に彩られていた。
創価大学駅伝部は17日から26日にかけて、妙高高原での2次合宿を実施。聖教取材班は19、20の両日、現地を訪れた。
今回の担当記者は、取材班の中で一番若い。しかも、初めて駅伝部の記事を手がける。ハンドルを握る手に汗をにじませながら、19日午前11時、メンバーの宿泊所「サンヴィレッジまちだ」に到着した。
主務の笠原蓮花さんが、玄関で歓迎してくれた。3年生で主務を任された“敏腕マネ”の笑顔に、少し緊張がほぐれる。
最初に取材したのは、久保田満ヘッドコーチだ。180センチの長身を深々と折りながら、さわやかなあいさつで迎えてくださった。
小池選手が発案した“選択制”
小池選手が発案した“選択制”
久保田コーチは、創大を指導して16年目になる。現在は同部の「白馬寮」に家族で入り、選手の生活面をサポートしている。
その経歴は輝かしい。東洋大学時代、現・創大総監督の川嶋伸次監督(当時)のもとで、3年生の時に主将として箱根1区で区間6位。4年でも同じく1区を走り、2年連続総合6位に貢献した。
その後、実業団の名門・旭化成へ進み、世界選手権の男子マラソンで日の丸を背負ったこともある一流ランナーだ。
現役引退後、指導者としてのキャリアをスタートしたが、その道は順風満帆とはいかなかった。
創大のコーチに就任した2010年は、駅伝部が強化を始めたばかりの頃で、選手たちの競技に対する意識には、ばらつきがあった。その溝を埋めようとコミュニケーションを図ったものの、あらゆる面で「力不足」を痛感したという。
自身を見つめ直した久保田コーチは、まず、選手への向き合い方を変えた。会話の内容以外にも、表情や言葉遣い、視線の位置など、相手の立場に立つことを意識し、試行錯誤した。
中でも、最も意識したのは「聞くこと」だという。「選手の行動や思いの背景を理解しようと努める――一方通行ではなく、対等なコミュニケーションを心がけてから、指導が届くようになりました」
上から目線の指示はしない。選手には「さん」を付け、敬語で話す。まずコーチ自らが敬意と感謝を持って接することで、信頼を深めていった。
その上で久保田コーチは、創大の“限界突破”のための要件として、「これまでのやり方、成功法を超えること」を挙げた。
創大駅伝部は今季のスローガンに「No Limits Challenge」を掲げる。箱根で上位に食い込むためには「指導方針や練習メニューなど、“これでいい”という常識を更新しないと、求める結果はついてこない」と強調する。
以前は、トラックシーズンに5000メートルや1万メートルに出場する選手が多かったが、今季は1500メートルや3000メートルでスピードを磨くメンバーも増加。一方、長距離適性の高いメンバーはマラソンに挑むなど、従来の枠にとらわれない強化を進めている。
「実は夏合宿の前に、一悶着ありまして」と久保田コーチは笑う。「菅平合宿(7月末~8月上旬・長野)から練習には、選手が自分で距離や設定タイムを決める“選択制”を取り入れています」
発案したのは副主将の小池莉希選手(4年)。教育実習を経験する中で、一人一人が自ら考え、選択することの大切さを感じたという。当初は他の選手たちも戸惑っていたが、練習では、決められたメニューから、その日の状態を踏まえて自ら選ぶようになった。
「自分で選ぶ」ことのリスクも織り込み済み。それでも新たな試みに挑むのは、より良い方法を探り続ける姿勢がチームに根付いているからこそだろう。
久保田コーチに続き、築舘陽介コーチにも話を聞いた。
久保田コーチは、創大を指導して16年目になる。現在は同部の「白馬寮」に家族で入り、選手の生活面をサポートしている。
その経歴は輝かしい。東洋大学時代、現・創大総監督の川嶋伸次監督(当時)のもとで、3年生の時に主将として箱根1区で区間6位。4年でも同じく1区を走り、2年連続総合6位に貢献した。
その後、実業団の名門・旭化成へ進み、世界選手権の男子マラソンで日の丸を背負ったこともある一流ランナーだ。
現役引退後、指導者としてのキャリアをスタートしたが、その道は順風満帆とはいかなかった。
創大のコーチに就任した2010年は、駅伝部が強化を始めたばかりの頃で、選手たちの競技に対する意識には、ばらつきがあった。その溝を埋めようとコミュニケーションを図ったものの、あらゆる面で「力不足」を痛感したという。
自身を見つめ直した久保田コーチは、まず、選手への向き合い方を変えた。会話の内容以外にも、表情や言葉遣い、視線の位置など、相手の立場に立つことを意識し、試行錯誤した。
中でも、最も意識したのは「聞くこと」だという。「選手の行動や思いの背景を理解しようと努める――一方通行ではなく、対等なコミュニケーションを心がけてから、指導が届くようになりました」
上から目線の指示はしない。選手には「さん」を付け、敬語で話す。まずコーチ自らが敬意と感謝を持って接することで、信頼を深めていった。
その上で久保田コーチは、創大の“限界突破”のための要件として、「これまでのやり方、成功法を超えること」を挙げた。
創大駅伝部は今季のスローガンに「No Limits Challenge」を掲げる。箱根で上位に食い込むためには「指導方針や練習メニューなど、“これでいい”という常識を更新しないと、求める結果はついてこない」と強調する。
以前は、トラックシーズンに5000メートルや1万メートルに出場する選手が多かったが、今季は1500メートルや3000メートルでスピードを磨くメンバーも増加。一方、長距離適性の高いメンバーはマラソンに挑むなど、従来の枠にとらわれない強化を進めている。
「実は夏合宿の前に、一悶着ありまして」と久保田コーチは笑う。「菅平合宿(7月末~8月上旬・長野)から練習には、選手が自分で距離や設定タイムを決める“選択制”を取り入れています」
発案したのは副主将の小池莉希選手(4年)。教育実習を経験する中で、一人一人が自ら考え、選択することの大切さを感じたという。当初は他の選手たちも戸惑っていたが、練習では、決められたメニューから、その日の状態を踏まえて自ら選ぶようになった。
「自分で選ぶ」ことのリスクも織り込み済み。それでも新たな試みに挑むのは、より良い方法を探り続ける姿勢がチームに根付いているからこそだろう。
久保田コーチに続き、築舘陽介コーチにも話を聞いた。
笑顔と共に厳しさ欠かさず
笑顔と共に厳しさ欠かさず
29歳の築舘コーチは、創大が箱根駅伝で初めてシード権を獲得した時の主将である。卒業後、一般企業に勤めた後、3年前に創大のコーチに就いた。
自身の現役時代と比べ「今は僕なら入部すらできない。それくらい強いチームになっています」と笑う。「皆が箱根に懸ける強い思いを持っています。トレーニングや食事の知識も貪欲に吸収していて、チームの雰囲気は常に上向きです」
今年、強力な1年生も入部した。目に見えて成長するチームの中で、築舘コーチ自身も研さんを重ねている。榎木和貴監督や久保田コーチと比べると「人生経験も指導歴も浅い。それでも、自分にしかできないことがあると思います」。
昨年の冬からは、生理学や心理学を学び、指導に新たな知見を取り入れている。思想・精神を学び深めるため、歴史上の偉人の生涯についても勉強しているという。
学生と年齢が近いからこそ、監督・コーチ陣との架け橋となることを心がけている。「合宿では、部屋のドアを全開にしています。『築舘さーん!』と、飛び込んでくる学生もいるんです」
一方で、自身の最近の変化を聞くと、「嫌われる覚悟ですね」と苦笑いした。
「これまでは選手のストレスになると思って、厳しいことはあまり言わなかったんです。でも、適度なストレスが成長につながるという研究もあります。互いの信頼関係を築いた上で、時には厳しいことも伝えています」
築舘コーチは、成長著しい選手として山瀬美大選手(3年)と松本快斗選手(2年)を挙げた。
山瀬選手は今年の箱根駅伝でエントリーメンバーから外れたが、1年生の時に1万メートルで28分台をマークしている。
松本選手は高校までサッカー部に所属していたという異色の経歴だが、現在は2年の学年主任を務めている。
“限界突破”に日々挑む選手たち。指導者もまた、自らを変え続けている。
インタビューを終えた取材班は、ポイント練習が行われる「妙高高原スポーツ公園」へと向かった。
29歳の築舘コーチは、創大が箱根駅伝で初めてシード権を獲得した時の主将である。卒業後、一般企業に勤めた後、3年前に創大のコーチに就いた。
自身の現役時代と比べ「今は僕なら入部すらできない。それくらい強いチームになっています」と笑う。「皆が箱根に懸ける強い思いを持っています。トレーニングや食事の知識も貪欲に吸収していて、チームの雰囲気は常に上向きです」
今年、強力な1年生も入部した。目に見えて成長するチームの中で、築舘コーチ自身も研さんを重ねている。榎木和貴監督や久保田コーチと比べると「人生経験も指導歴も浅い。それでも、自分にしかできないことがあると思います」。
昨年の冬からは、生理学や心理学を学び、指導に新たな知見を取り入れている。思想・精神を学び深めるため、歴史上の偉人の生涯についても勉強しているという。
学生と年齢が近いからこそ、監督・コーチ陣との架け橋となることを心がけている。「合宿では、部屋のドアを全開にしています。『築舘さーん!』と、飛び込んでくる学生もいるんです」
一方で、自身の最近の変化を聞くと、「嫌われる覚悟ですね」と苦笑いした。
「これまでは選手のストレスになると思って、厳しいことはあまり言わなかったんです。でも、適度なストレスが成長につながるという研究もあります。互いの信頼関係を築いた上で、時には厳しいことも伝えています」
築舘コーチは、成長著しい選手として山瀬美大選手(3年)と松本快斗選手(2年)を挙げた。
山瀬選手は今年の箱根駅伝でエントリーメンバーから外れたが、1年生の時に1万メートルで28分台をマークしている。
松本選手は高校までサッカー部に所属していたという異色の経歴だが、現在は2年の学年主任を務めている。
“限界突破”に日々挑む選手たち。指導者もまた、自らを変え続けている。
インタビューを終えた取材班は、ポイント練習が行われる「妙高高原スポーツ公園」へと向かった。
この日は1000メートルのインターバル走
この日は1000メートルのインターバル走
午後4時、選手たちが到着し、ウオーミングアップを開始した。気温は30度。日なたは汗ばむ陽気だが、日陰に入ると風が心地良い。
この日は、創大の鈴木学長や池ケ谷学生部長ら大学関係者も見学に訪れていた。テレビの在京局や地方局の姿もあり、4台のカメラが選手たちに向けられていた。
程よい緊張感に包まれる中、午後4時半、ポイント練習が始まった。
午後4時、選手たちが到着し、ウオーミングアップを開始した。気温は30度。日なたは汗ばむ陽気だが、日陰に入ると風が心地良い。
この日は、創大の鈴木学長や池ケ谷学生部長ら大学関係者も見学に訪れていた。テレビの在京局や地方局の姿もあり、4台のカメラが選手たちに向けられていた。
程よい緊張感に包まれる中、午後4時半、ポイント練習が始まった。
メニューは1000メートル×12本のインターバル走。設定タイム別にグループに分かれ、公園の外周を走る。もちろん、この設定タイムは各自で決める“選択制”だ。
「1分25、26、27秒……」
中間地点に立つマネジャーの声が響く。
「落ち着いていこう!」
先頭を引っ張る小池選手が皆を鼓舞する。
1本、また1本と走りを重ねていく選手たち。
「前のペースに合わせて」
川嶋総監督が選手の走りに目を光らせる。
「2分56、57、58秒……」
マネジャーの額から汗が流れ落ちる。
「スピードは上げなくていいから、キープしよう」
榎木監督の声に熱が入る。
「追い付くよ! 頑張れ!」
集団から後退する選手に、げきが飛んだ。
「はい! オッケー!」
12本を走り終えた選手たちは、ガッツポーズしたりタッチを交わしたりして、互いの走りをたたえ合った。
「力が余ってるなら、じゃあ、あと3本やるか!」
指揮官の冗談が飛ぶと、選手は苦笑い。
「今日は余裕があったね」
「力が付いてきた感じがするでしょ」
「去年と比べてどう?」
「もうちょっと我慢だ」
練習後、監督・コーチ陣と選手たちの一対一の対話が、あちこちで始まった。
午後5時20分、練習が終了。空が赤く染まり始めていた。
取材班がスポーツ公園を後にしようとしたところ、笠原主務が走ってきた。「ありがとうございました! 明日は朝5時半に集合です!」
メニューは1000メートル×12本のインターバル走。設定タイム別にグループに分かれ、公園の外周を走る。もちろん、この設定タイムは各自で決める“選択制”だ。
「1分25、26、27秒……」
中間地点に立つマネジャーの声が響く。
「落ち着いていこう!」
先頭を引っ張る小池選手が皆を鼓舞する。
1本、また1本と走りを重ねていく選手たち。
「前のペースに合わせて」
川嶋総監督が選手の走りに目を光らせる。
「2分56、57、58秒……」
マネジャーの額から汗が流れ落ちる。
「スピードは上げなくていいから、キープしよう」
榎木監督の声に熱が入る。
「追い付くよ! 頑張れ!」
集団から後退する選手に、げきが飛んだ。
「はい! オッケー!」
12本を走り終えた選手たちは、ガッツポーズしたりタッチを交わしたりして、互いの走りをたたえ合った。
「力が余ってるなら、じゃあ、あと3本やるか!」
指揮官の冗談が飛ぶと、選手は苦笑い。
「今日は余裕があったね」
「力が付いてきた感じがするでしょ」
「去年と比べてどう?」
「もうちょっと我慢だ」
練習後、監督・コーチ陣と選手たちの一対一の対話が、あちこちで始まった。
午後5時20分、練習が終了。空が赤く染まり始めていた。
取材班がスポーツ公園を後にしようとしたところ、笠原主務が走ってきた。「ありがとうございました! 明日は朝5時半に集合です!」
実るほど頭を垂れる稲穂かな
実るほど頭を垂れる稲穂かな
翌日、取材班は夜明け前に宿を出発し、朝練習の集合場所に向かった。妙高高原のさらに奥。関川のせせらぎを聞き、深緑の木々の香りに包まれる中、練習が始まった。
選手たちは宿泊所近くを出発し、山を上って「道の駅しなの」までの約6キロを往復する。静かな山あいに、選手たちの足音が小気味よく響く。
朝練習は三つのコースを日によって使い分ける。文字通り“朝飯前”に約1時間走り込んだ選手たちを見届け、取材班は帰路に就いた。
翌日、取材班は夜明け前に宿を出発し、朝練習の集合場所に向かった。妙高高原のさらに奥。関川のせせらぎを聞き、深緑の木々の香りに包まれる中、練習が始まった。
選手たちは宿泊所近くを出発し、山を上って「道の駅しなの」までの約6キロを往復する。静かな山あいに、選手たちの足音が小気味よく響く。
朝練習は三つのコースを日によって使い分ける。文字通り“朝飯前”に約1時間走り込んだ選手たちを見届け、取材班は帰路に就いた。
ひた向きに走る学生を見ると、勇気をもらう。
彼らは真剣だ。全力だ。一生懸命だ。
だから、見る人の心を動かすのだろう。そこに年齢も経験も関係ない。
自分も本気の一文、思いを込めた文章で、読む人の心を動かしたい――帰りの車の中で、そんな決意を新たにした。
強くなるほど、貪欲に、素直に、真っすぐに、さらなる高みを目指す創大駅伝部。車窓の先では稲穂が実り始め、“頭”を垂れていた。
次の舞台は、北海道・深川と岐阜・御嶽に分かれての3次合宿。取材班もまた、二手に分かれて駅伝部を追いかけていく。(倉)
ひた向きに走る学生を見ると、勇気をもらう。
彼らは真剣だ。全力だ。一生懸命だ。
だから、見る人の心を動かすのだろう。そこに年齢も経験も関係ない。
自分も本気の一文、思いを込めた文章で、読む人の心を動かしたい――帰りの車の中で、そんな決意を新たにした。
強くなるほど、貪欲に、素直に、真っすぐに、さらなる高みを目指す創大駅伝部。車窓の先では稲穂が実り始め、“頭”を垂れていた。
次の舞台は、北海道・深川と岐阜・御嶽に分かれての3次合宿。取材班もまた、二手に分かれて駅伝部を追いかけていく。(倉)
記事のご感想や、創大駅伝部への応援メッセージをこちらからお寄せください。
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