名字の言(紙面)

〈名字の言〉 2025年10月23日

 スポーツの秋。思い思いの競技に汗を流す人の姿を各所で見かけるようになった。ある男子中等部員は野球チームに所属し、毎日、自宅の近くでバットの素振りに励んでいる。その際、彼が心がけているのは、すれ違う近隣の人にあいさつすること▼ある時、新たに越してきた人が重い荷物を抱えて帰宅。それを目にした彼は自ら進んで声をかけ、荷物運びを手伝った。先方は大喜び。彼の母も親しく言葉を交わすようになり、その一家と家族ぐるみの交流が始まったという▼人間関係で大切なのは“心の距離感”であると指摘するのは、健康社会学者の河合薫氏。その距離を縮める基本は「あいさつ」であり、“この人と関わってみたい”といった心の距離感が近いほど、メッセージは伝わりやすくなる、と著書に記している(『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』きずな出版)▼言葉は人の心と心をつなぐ橋。相手を思う気持ちも言葉にしなければ届かない。御書に「意が声とあらわる」「声を聞いて心を知る」(新663・全469)と仰せの通りだ▼たった一言でも真心を込め、自分から声をかけることが友情の一歩となる。対話の秋。友を思う祈りを根本に、わが振る舞いで“実り多き季節”にしていこう。(梅)