ユース特集

〈電子版連載〉 お悩み相談部屋 #推し活がやめられません 2025年2月10日

 電子版連載「お悩み相談部屋」では、若者のリアルな悩みを識者にぶつけていきます。今回答えてくれる人は、エッセイストの小林久乃さんです。

 7年間推している、地下アイドルがいます。ライブに行ったり、イベントに行ったり。正直、かなりお金も時間も使っています。最近、同世代の友人が将来のために貯蓄していると聞き、いきなり現実世界に引き戻されたように思い、焦りました。“もっと堅実に生きた方がいいのかも。リアルな恋愛でもしてみるか”と思い立ち、友人に男性を紹介してもらいました。が、どうしても推しと比べてしまい、好きになるのは難しかったです。(20代、女性)

 
 ――「日本人の4人に1人は“推し”がいる」ともいわれる時代ならではの悩みです。

 結論から言いましょう。ガンガン推しちゃってください(もちろん、生活が破綻しない範囲で、ですよ)。
 ほら、「推しは推せる時に推せ」って言葉もあるくらいですから。これは、推せることが当たり前ではないということです。
 もしかしたら、推しが解散することだってあるし、いきなり活動休止するかもしれない。推しが結婚することだってあり得るし、突然、推し自体の方向性が変わる可能性もあります。
 情熱を持って推せる対象に出会える確率は、そう高くないので、推しを持てること自体、幸せなことです。というのも、これは私の実体験に基づいていまして……。
 
 20代前半の頃、推していたアイドルグループがいました。最初は、友人から「デビューイベントがあるみたいだから、行ってみる?」と誘われて、何気ない気持ちで行ってみたんです。
 帰る頃には、写真を買っていて、しばらくしたら、推しと同じ服を着ていました(笑)。振り返ると、私の成長には、ずっと、その推しがいたんですよね。
 推しって、よく分かんないけれど、急に好きになって“ズドンッ”ってハマって、全身全霊で推す。自分でも気づかないうちに、とんでもない行動力が生まれたんですよ。コンサートがあったら、日本全国どこでも行っちゃうくらい。
 

 ――推しの存在で、自分の新たな一面が見つかったということでしょうか。

 そうです。もう一つ、メリットを挙げるとすれば、バランスが取れるようになったことです。先日、あるテレビ番組で「正義感が強い人ほど推し活をした方がいい」と紹介されていて、“確かに一理あるな”と思いました。
 自分で言うとうそくさいんですが、私は「曲がったことは嫌い」なタイプなんです。それ自体は悪いことではないと思うんですが、社会のルールを守れていない人を見ると、“取り締まらなきゃ”という、行き過ぎた正義感に駆られることもあって。でも、推しを持ってからは、不思議と心に余裕が持てるようになって、うまくバランスを取れるようになりました。

 ただ、推しと現実世界での恋愛を比べるのは、間違いです。これはもう無理なので諦めてくれ(笑)。

 推し活をする上で、もう一つ忠告したいのは、もし、推しがあなたにお金とか、何かを直接要求してきたら、推すことを考え直した方がいいかも、ということです。推しでせっかく整えたバランスを、そこで崩しても意味ないですから。
 

 ――相談内容には「貯蓄」の不安についても書かれています。

 「貯蓄」って、「テスト勉強」みたいじゃないですか? ほら、テスト前に「全然やってない」と言ったり、特に発言しなかったりする人に限って、めちゃくちゃ勉強してるパターンがありますよね。
 貯蓄も同じで、着実な資産形成をしてる人って、あまり人には言わないと思うんですよ。だから、「貯蓄してる」っていう人は、案外そうでもないんじゃないかな(笑)。つまり、焦る必要はないということです。

 この前、女友達と老後の資金について真剣に話した時、こんな会話のやりとりがありました。

 「例えば金融投資に手を出したとしても、大災害が起きたらどうなるのか分からない。被災後は近所の人たちとの相互協力が最も大切になるから、日頃からの信頼関係が大事になるよね。となると、お金を積むのもいいけれど、もっと徳を積んだ方がいいんじゃないのかしら」
 「徳積みかあ。そういえば、あの大谷君もその辺に落ちているゴミを拾うんだって。人が捨てた運を拾っているんだそうよ」
 「そうなったら、私たちも毎日、徳を積もうよ。『積立NISA』ならぬ『積立NEESAN(姐さん)』ね」
 「いいねえ、さっそく今日から始めるわ」

 きっとプロの投資家が聞いていたら、笑いが止まらないですよね。といったわけで、いつものウオーキングコースで徳を積もうと、ビニール袋とトングを持ち、さっそうと出かけました……が、都会のゴミは想像以上にハードでした。
 少し話がそれましたが、伝えたいのは、若いうちは、やりたいことに挑戦してみていい、ということ。もちろん、世界は広いので、今の推しだけでなく、別の世界に目を向けてみても、新しい自分に出会える可能性があるので「あり」だと思いますよ。
 

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