年齢を重ねた女性に訪れる「更年期」。この時期に起きる症状や障害について、近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長(女性医学部門教授)に聞きました。
年齢を重ねた女性に訪れる「更年期」。この時期に起きる症状や障害について、近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長(女性医学部門教授)に聞きました。
〈症状〉
のぼせや不眠 肩凝りも多い
〈症状〉
のぼせや不眠 肩凝りも多い
――更年期障害とは?
女性は年齢を重ねる中で、「思春期」「性成熟期」を経て、月経が終わる「更年期」、そして「老年期」へと移行します。
更年期は、その人の閉経前後の各5年、おおよそ10年間を指します。この時期は女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、さまざまな症状が現れます。その症状が、日常生活で支障を来したケースを「更年期障害」と呼びます。更年期の症状は女性の6~7割に起き、そのうち4割が障害と感じているとされます。
症状は100種類以上といわれるほど多様ですが、大きくは次の三つに分けられます。
①月経異常(異常出血)
②自律神経失調症状(ほてり、上半身ののぼせ、下半身の冷え、めまい、動悸など)
③精神神経症状(不眠、頭が重い、イライラ、うつ症状、記憶力低下など)
この三つに入らない症状では、日本人に多い肩凝りや、骨密度が下がることによる腰背部痛、性交痛などがあります。また、血圧が高くなったり、内臓脂肪がたまって太りやすくなったりもします。
――不眠や肩凝りも症状に入るのですね。
あまり知られていませんが、比較的起こりやすい症状です。なお、不眠の特徴として「夜中にほてりが出て目が覚める(中途覚醒)」「早く目覚める」といった患者が多い印象です。
――更年期障害とは?
女性は年齢を重ねる中で、「思春期」「性成熟期」を経て、月経が終わる「更年期」、そして「老年期」へと移行します。
更年期は、その人の閉経前後の各5年、おおよそ10年間を指します。この時期は女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、さまざまな症状が現れます。その症状が、日常生活で支障を来したケースを「更年期障害」と呼びます。更年期の症状は女性の6~7割に起き、そのうち4割が障害と感じているとされます。
症状は100種類以上といわれるほど多様ですが、大きくは次の三つに分けられます。
①月経異常(異常出血)
②自律神経失調症状(ほてり、上半身ののぼせ、下半身の冷え、めまい、動悸など)
③精神神経症状(不眠、頭が重い、イライラ、うつ症状、記憶力低下など)
この三つに入らない症状では、日本人に多い肩凝りや、骨密度が下がることによる腰背部痛、性交痛などがあります。また、血圧が高くなったり、内臓脂肪がたまって太りやすくなったりもします。
――不眠や肩凝りも症状に入るのですね。
あまり知られていませんが、比較的起こりやすい症状です。なお、不眠の特徴として「夜中にほてりが出て目が覚める(中途覚醒)」「早く目覚める」といった患者が多い印象です。
主な症状
主な症状
〈発症〉
42~56歳ごろ
〈発症〉
42~56歳ごろ
女性の平均閉経年齢は50~51歳で、更年期の症状が出るのは、具体的には42~56歳ごろとされています。60歳を超えて更年期症状が出ていることはほぼなく、別の原因疾患があると考えられます。
女性の平均閉経年齢は50~51歳で、更年期の症状が出るのは、具体的には42~56歳ごろとされています。60歳を超えて更年期症状が出ていることはほぼなく、別の原因疾患があると考えられます。
〈診断〉
他の原因疾患を検査で見極める
〈診断〉
他の原因疾患を検査で見極める
――診断は?
症状の現れ方などの問診を基に診断します。血液検査でホルモンも測定しますが、あくまで参考程度です。
更年期の症状は、他の病が原因でも起こるものばかりです。異なる原因疾患があるか見極めることは、検査の大きな目的です。
――別の原因疾患?
症状の原因疾患が①「月経異常(異常出血)」なら「がん」、②「自律神経失調症状」なら「甲状腺機能の異常」、③「精神神経症状」なら、更年期が原因でない「うつ病」などを疑います。
例えば甲状腺機能の異常は、病が起きやすい年齢が重なっているため、検査で病を特定できる人が多くいます。更年期の症状が現れた女性は、安易に自己判断せず、婦人科にかかってください。
――患者は増えていますか。
女性の社会進出に伴い、症状が仕事に支障を来して“障害”に至るケースは、間違いなく増えています。
近年、バブル期前後の“大量採用時代”に就職した女性が、更年期の年代となりました。社会全体の課題となっています。
――診断は?
症状の現れ方などの問診を基に診断します。血液検査でホルモンも測定しますが、あくまで参考程度です。
更年期の症状は、他の病が原因でも起こるものばかりです。異なる原因疾患があるか見極めることは、検査の大きな目的です。
――別の原因疾患?
症状の原因疾患が①「月経異常(異常出血)」なら「がん」、②「自律神経失調症状」なら「甲状腺機能の異常」、③「精神神経症状」なら、更年期が原因でない「うつ病」などを疑います。
例えば甲状腺機能の異常は、病が起きやすい年齢が重なっているため、検査で病を特定できる人が多くいます。更年期の症状が現れた女性は、安易に自己判断せず、婦人科にかかってください。
――患者は増えていますか。
女性の社会進出に伴い、症状が仕事に支障を来して“障害”に至るケースは、間違いなく増えています。
近年、バブル期前後の“大量採用時代”に就職した女性が、更年期の年代となりました。社会全体の課題となっています。
〈治療法〉
ホルモン補充や漢方、ストレス減
〈治療法〉
ホルモン補充や漢方、ストレス減
――治療法は?
・ホルモン補充療法
・漢方による薬物療法
・生活改善
を組み合わせ治療します。
ホルモン補充療法は、女性ホルモンの投与(内服や貼付)を行います。効果が最も高い、世界標準の治療法です。特に、自律神経失調症状(②)に対して高い効果がみられます。
漢方は、婦人科の三大処方薬と呼ばれる、「当帰芍薬散」「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」を中心に服用します。精神神経症状(③)に高い効果がみられます。
生活改善は、日常の活動量を落として「ストレスの軽減」を図ったり、「軽い運動」で気分転換したりすることです。予防法としても有効です。
――治療は長くかかるのですか。
いいえ。悩まれている患者さんに最も伝えたいことなのですが、更年期の症状は、ずっと続くものではありません。
自律神経失調症状なら、治療の有無にかかわらず、症状が続く期間は通常2~5年です。治療すれば当然、その期間はより短くなります。
女性の中で症状が出ている人の割合も、閉経から5年後で40%、閉経後10年以上たてば4%に減ります。
――漢方薬は、ドラッグストアなどで購入してもよいのですか。
個々の患者に応じて、数種類の薬を合わせた煎じ薬なども処方できる「漢方専門医」を受診できるなら、それに越したことはありません。
その上で、市販薬は薬効成分の量が少ないため、効果は薄れる可能性があります。副作用は、軽微なものしかありません。
――ホルモン補充療法の副作用は?
欧米では5年以上投与したケースで、乳がんが微増した(1・26倍)という報告があります。
ただし、日本人より乳がんの発症率が高い欧米の報告です。また、更年期症状の大半は5年以内に治まります。
また、喫煙による乳がんの発症率は1・9倍。飲酒は1・75倍といわれます。その率を考え合わせても、5年で1・26倍という数値は、そこまで高くない印象です。
更年期障害は治療効果が比較的高く、生活の質(QOL)を改善できる病です。気になる方は、ぜひ婦人科を受診してください。
――治療法は?
・ホルモン補充療法
・漢方による薬物療法
・生活改善
を組み合わせ治療します。
ホルモン補充療法は、女性ホルモンの投与(内服や貼付)を行います。効果が最も高い、世界標準の治療法です。特に、自律神経失調症状(②)に対して高い効果がみられます。
漢方は、婦人科の三大処方薬と呼ばれる、「当帰芍薬散」「加味逍遥散」「桂枝茯苓丸」を中心に服用します。精神神経症状(③)に高い効果がみられます。
生活改善は、日常の活動量を落として「ストレスの軽減」を図ったり、「軽い運動」で気分転換したりすることです。予防法としても有効です。
――治療は長くかかるのですか。
いいえ。悩まれている患者さんに最も伝えたいことなのですが、更年期の症状は、ずっと続くものではありません。
自律神経失調症状なら、治療の有無にかかわらず、症状が続く期間は通常2~5年です。治療すれば当然、その期間はより短くなります。
女性の中で症状が出ている人の割合も、閉経から5年後で40%、閉経後10年以上たてば4%に減ります。
――漢方薬は、ドラッグストアなどで購入してもよいのですか。
個々の患者に応じて、数種類の薬を合わせた煎じ薬なども処方できる「漢方専門医」を受診できるなら、それに越したことはありません。
その上で、市販薬は薬効成分の量が少ないため、効果は薄れる可能性があります。副作用は、軽微なものしかありません。
――ホルモン補充療法の副作用は?
欧米では5年以上投与したケースで、乳がんが微増した(1・26倍)という報告があります。
ただし、日本人より乳がんの発症率が高い欧米の報告です。また、更年期症状の大半は5年以内に治まります。
また、喫煙による乳がんの発症率は1・9倍。飲酒は1・75倍といわれます。その率を考え合わせても、5年で1・26倍という数値は、そこまで高くない印象です。
更年期障害は治療効果が比較的高く、生活の質(QOL)を改善できる病です。気になる方は、ぜひ婦人科を受診してください。