健康・介護
〈健康PLUS〉 「ポールウオーキング」で歩こう 2022年4月26日
① 普段使わない筋肉を使い、姿勢を改善
② 腕を振ることで上半身もトレーニング
③ つえのように体重をかけるのはNG
新緑まぶしい季節。2本のポールを使って歩く「ポールウオーキング」を始めてみませんか? 姿勢が良くなり、運動効果も抜群といわれています。考案者の医学博士・安藤邦彦さんに、効果や実践方法について聞きました。
初めに、なぜポールを使うといいのか説明します。ケガをしたり、脚の筋力が弱っていたりする人が、つえのように使って歩くものと思われがちですが、そうではありません。つえと違って、体重をかけて使ってはいけません。
一番の特長は、ポールを使うことで、自分の姿勢を改善できる点です。また、全身の筋肉を使って、バランス良く鍛えながら、安全に歩くことができます。
自分では“正しい姿勢で歩いている”と考えていても、実際にポールを使ってみると、強制的に姿勢が良くなる感覚や筋力不足を体感できるはずです。
背中が曲がるなど姿勢が悪くなると、股関節の可動域も制限され歩幅も狭まってしまいます。ポールを使って歩くことで、体に余計な負担をかけず、各関節を大きく動かしていくことができるのです。
ポールは全身の筋肉をバランス良く鍛えるための道具であり、“パーソナルトレーナー”といえるでしょう。
2本のポールを使って歩く運動には、主にポールウオーキングとノルディックウオーキング、山登りの三つがあります。似ていますが、それぞれ歩き方もポールの形状も、運動負荷も異なります。ノルディックウオーキングは、雪上で行うクロスカントリーの夏用トレーニングメニューとして始まったスポーツです。運動強度が高いため、運動習慣のない人にはやや難しいかもしれません。ポールウオーキングから始めて、体力、筋力がついたらノルディックウオーキングや登山に挑戦してもいいでしょう。
ポールウオーキングを始める際、いきなり背筋を無理して伸ばしたりするとけがをする恐れがあります。最初は、自分にとって楽な姿勢でポールの長さを合わせましょう。長年かけて体に染み付いた姿勢は急には直らないものです。慣れてきたら徐々にポールの長さを伸ばし、無理せず姿勢を正していくことが大切です。
歩行の運動効果を上げることもポールウオーキングのメリットです。ポールを持つことで、腕の振りをより意識するため、肩甲骨など普段使われづらい部分も動き上半身が鍛えられます。上半身と下半身が連動した全身運動になり、歩幅も広がります。
最終目標は、ポールがなくても正しい姿勢で歩くことです。ポールウオーキングで身に付けた正しいフォームは、ポールを持たないウオーキングやジョギングにも生かすことができます。
ポールウオーキングで必要なものは、「ポール」「ウオーキングシューズ」「動きやすい服装」だけです。
専用のポールは、多くのスポーツ用品店で購入できます。先端に球状のゴムが付いていてバランスを取れるようになっています。ノルディックウオーキング用や登山用とは、用途が異なるので、購入する場合は間違えないように注意してください。
またポールは最適な長さで使うことが大切です。今のポールの多くは、長さが調整可能な伸縮タイプです。まずは真っすぐ立った姿勢で、肘を直角に曲げ、手から地面までの高さにポールの長さを合わせましょう。このとき、ポールは握らず、グリップの上に手を乗せた状態で肘を直角にしてください。
緩んで長さが変わると事故につながります。しっかり締めましょう。
・顎を引く
・肩の力を抜いてリラックスする
・背中はスッと伸ばす
・おへその辺りから脚が伸びているような、「長い脚」をイメージして
・グリップは強く握らない
・腕は自然に振る動作で
・後ろ姿もかっこよく見えるよう、脚は伸ばす
・目線は、目の高さで15メートル以上先を見る
・普段よりも「半歩」広い歩幅で
・前に出した足の反対側の手で持ったポールを、かかとの辺りに置く
まずは公園の歩行路のような平たんな道から始めるのがおすすめ。うまくできるようになってきたら、なだらかな坂道や階段へとステップアップするのがいいでしょう。歩行面は、雨上がりでつるつる滑る道や、ザラザラした砂利道はできるだけ避け、安全に歩ける場所を選んでください。
まずは基本の「1段ギア」で歩き始め、慣れてきたら「2段ギア」にも挑戦。足の運び方は、「かかと着地」を意識してください。
・腕は自然に振ってポールを着地
・反対側の足部(かかと~土踏まず付近)がポールの横に来るように足を運ぶ
・普段、散歩や買い物のときと同じ、歩きやすい自然な歩幅で
・まずは1日15分くらいからスタート
※無理して長時間、毎日する必要はありません。疲れたら休みましょう
・1段ギアよりもややスピードアップ
・長い腕をイメージして、特に前に大きく振る
・歩幅もやや広く取り、1段ギアより足部半分くらい前へ
かかとから地面につける
かかとから爪先まで、靴底をしっかりと地面につけて、重心移動する
かかとから上げて、爪先を地面から離す
上体はやや前傾ぎみに、ポールは反対側の足の横に置く
背筋を伸ばして歩幅を狭め、重心を低く保ち、ポールは反対側の足のかかと辺りに置く
1、2段上に両方のポールを同時に置いて腕の力も使って上る
背筋を伸ばして重心を低く保ち、足から先に下りる
あんどう・くにひこ 医学博士。日本ポールウォーキング協会名誉会長。整形外科専門医。杏林大学医学部卒業後、同大学整形外科学教室へ入局。同大学医学部専任講師(整形外科学)を経て、1994年、長野市に整形外科専門クリニックを開設。歩行科学や整形外科学の見地からポールウオーキングメソッドを考案、共同開発。著書多数。
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dokusha@seikyo-np.jp