企画・連載
孤独な育児をなくすために24時間365日対応のベビーシッターサービスを設立〈スタートライン〉 2025年12月14日
24時間365日、電話1本で保護者の「今、助けてほしい」に応える駆け付けシッターサービス「育児119」。SNSでの声をきっかけに同サービスを立ち上げた、株式会社なつのそら代表の石黒和希さんに話を聞いた。
――「育児119」の理念とサービス内容について教えてください。
日本から孤独な育児をなくすことが、「育児119」の理念です。サービスは主に二つあり、一つは24時間365日、パパやママの「今、助けてほしい」に、最短で応えるベビーシッターサービス。
もう一つが電話相談サービスです。“誰かに話を聞いてほしい”“少し行き詰まってしまった”といった悩みに、全国の「頼ってさん」(ベビーシッターの愛称)が寄り添い、サポートします。午後11時までは当日対応も可能です。
どちらも公式LINEに登録後、簡単なフォームに入力すれば、すぐに利用することができます。
東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、福岡でサービスを行っていて、依頼は月間200件以上。「頼ってさん」は面接・研修待ちの人もいますが、年内に500人を超えます。
――始めるきっかけは、SNSだったそうですね。
会社員として働きながら育児する中で、同じ育児をしているたくさんのSNSの声を見るようになりました。そこで目にしたのは、ママたちの“しんどい”という叫びです。それで、自分なりの子育ても踏まえて、ママたちが抱いている気持ちや孤独感を言語化して発信すれば、パパたちにも少しは共有できるんじゃないか。そう思って、インスタグラムで育児日記の投稿を始めました。
コロナ禍の孤立という時代背景もマッチして、フォロワーが1万人、3万人、5万人と増えました。それに伴って、子育ての悩みが届くようになったんです。時には長文の相談が十数件届く日も。本当にたくさんの人が育児で悩んでいることを実感しました。
そんな時、あるお母さんの投稿が目に留まりました。“「今、助けてほしい」に応えてくれるサービスがあったらいいのに”。それを読んだ瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けました。調べてみると、そのようなサービスはなく、「やろうかな」ではなく「僕がやる!」と、使命感のようなものが生まれました。
ただ、自分一人では到底できない。そこでSNSで呼びかけたところ、多くの保育士さんや協力者が手を挙げてくださり、「育児119」を始めることができました。
実は「育児119」や「頼ってさん」の名称も、ロゴのデザインも、フォロワーの皆さんと一緒に作り上げたものなんです。
――サービス内容を決めるため、全国のパパ・ママから話を聞いたそうですね。
リアルな声を聞きたくて、6都府県で、市民センターなどを借りてイベントを開きました。
特に多かった声は、既存のサービスでは事前登録が煩雑なことや価格設定についてでした。延べ200人以上に話を聞き、SNS上でのアンケートも活用して、利用者目線でのサービスを設計しました。
また、少しでも価格を下げるために、広告費を一切使っていません。SNSや口コミなどを利用して、少しずつ広まってきました。
――SNSのフォロワー数が11万を超えるなど、多くのパパ・ママから共感を得ています。育児に関する社会の課題をどう捉えていますか。
まず、共働き・核家族化が進み、育児が孤独な環境になっていることです。男性の育休取得は増えましたが、実態は、共働きが一般化したことで母親の負担が増えている面もあります。
そうした忙しさや余裕のなさは、どうしても子どもに向かいがちです。すると怒りたくないのに怒ってしまい自己嫌悪するなど、悪循環につながっていきます。
加えて、近年の日本には「人に頼る」という文化があまりないことも課題に感じています。頼る・頼られる関係がもっと当たり前になれば、状況は大きく変わるはずです。
――利用者からは、どんな反響がありますか。
涙を流し、声を詰まらせながら一生懸命、話してくださる方もいます。ある方は、「頼ってさんが来てくれなければ、私は子どもと一緒に消えようと思っていました」と打ち明けてくれました。そういう極限に追い込まれた方々の声を頂くたびに、改めて、この取り組みの重要性を感じます。
また、サッカー観戦が好きなご夫婦からの声も印象的でした。お子さまが生まれてから、なかなか夫婦の時間が取れず、悩んだ末に「育児119」を利用してくれたんです。2人でサッカー観戦して、「久しぶりにパパと手をつないで歩きました」「互いの大切さに、改めて気付きました」と書いてくださった。このような利用の仕方もうれしいですね。パパ・ママの心に余白と安心を生み出すことが、最終的には子どもの幸せになるからです。
――今後の展望を教えてください。
私も今、子育てをしています。いつか娘が、仮にお母さんになった時に、選択肢としてこの「育児119」が当たり前にあってほしい。何かあった時に利用できる“お守り”があるだけで、人って安心するんじゃないかなと。
それをつくり上げられるのは、現役世代の大人たちです。まずは目の前の課題を一つ一つ解決して、最終的には47都道府県へ。さらには母子手帳にも案内が載るようになって、パパ・ママの“お守り”になれればと思っています。
依頼・相談は「育児119」LINE公式アカウントから
いしぐろ・かずき 1994年、東京都生まれ。会社員を経て、2024年2月に「育児119」を運営する会社「なつのそら」を設立。インスタグラムをはじめ、SNSでパパ目線の育児経験を発信。総フォロワー数は14万人を超える。
【記事】安孫子正樹
【写真】本人写真は伊野光、その他は「育児119」提供
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