創価教育

『希望対話』を通して、心で池田先生と向き合おう――〈作家・佐藤優さんと創価学園生の対話プロジェクト「明日への扉Ⅱ」〉第1回・関西創価中学校 2026年8月22日

真の友情こそ人生を開く力

 昨年、東京と関西の創価学園でスタートした、作家・佐藤優さんと創価学園生の対話プロジェクト「明日への扉」。今年は池田大作先生の著作『希望対話』を題材に、東西の創価中学生を対象として行われることになりました。先月7日、大阪・交野市の関西創価学園で開催された「明日への扉Ⅱ」の第1回では、佐藤さんの講演に続き、生徒との質疑応答も活発に。「今の中学生が悩んでいることへの答えが『希望対話』に詰まっています」と言う佐藤さん。なぜ今、『希望対話』を読むことが大事なのか――当日の模様をお届けします。(記事=鹿野洋司)

なぜ今、「希望対話」なのか

 万葉の香りを運ぶ風がそよぐキャンパスに、佐藤さんの姿が見えたのは正午ごろ。その表情は、まもなく学園生たちと語り合える喜びにあふれていました。
 
 『希望対話』を丹念に読み込み、本書への生徒たちの感想にも、しっかり目を通してきた佐藤さんは、教職員との懇談の場で、現代の中学生を取り巻く環境への危機感を語り始めました。
 
 ――SNS時代における人間関係の築き方に悩む生徒は多く、生成AI(人工知能)への依存から誤った情報や偏った価値観をうのみにしてしまうことがある。
 
さらに、行き過ぎた競争社会の影響も深刻です。絶えず、他者と比べられる状況の中で、「自分はダメだ」と、自らを卑下してしまう生徒もいる――。
 
 こうした複雑な環境に生徒が置かれる今だからこそ、「真の友情とは何か」「学ぶ意義とは何か」などを、問い直す必要があります。
 
 そのとき、『希望対話』に示された池田先生の指針に立ち返ることが大事だと、佐藤さんは強調します。 
 
 「『希望対話』を通して、私たちはいつでも池田先生に相談し、対話することができます」
 
 「中学生の皆さんに池田先生と向き合ってもらいたい――その思いで、私はここに来たのです」

人間関係を上手に保つコツ

 午後1時50分、中学生の熱気に満ちた池田講堂で、講演が始まりました。冒頭、佐藤さんは会場を見渡し、「皆さん、中学校に入って大変なのは、友達付き合いだと思わない?」と語りかけました。
 
 一般的にスマホを持つ中学生が増え、SNSで友人とやりとりする昨今。突然、グループから外されたり、知らぬ間に悪口が拡散されていたりすることがあります。
 
 佐藤さんは、誰もが傷つく、こうした問題を示した上で「皆さんの悩みを解決する知恵が『希望対話』にあります」と、先生の言葉を一緒にひもといていきました。
 
 例えば「一学期」の章では、「友情」に関する箇所を確認します。
 
 「友情とは『自分で決まる』ということです。相手の態度ではなく、自分の態度が大事なんです。
 『相手が自分のことを思ってくれる』から友情なのではない。『相手が裏切らない』間だけ友情が成り立つのでもない。『自分が相手を思う』からこそ、友情なのです。たとえ相手に裏切られても『自分は裏切らない』なら、友情なのです」

 
 友達だと思っていた人が、自分の悪口を言っていた。そんなうわさを耳にしても、なお相手を友達だと思い続けることはできる。友情とは相手ではなく自分次第である――。佐藤さんは、先生の言葉を丁寧に読み解いていきました。
 
 さらに、元外交官の佐藤さんは、人間関係を上手に保つコツを紹介しました。
 
 インテリジェンス(情報)活動の世界には「サードパーティー・ルール」があります。ある人から聞いた話を、本人の了解を得ずに第三者に漏らさない――という原則です。
 
 佐藤さんは「誰かが人の悪口を言っていたと知ると、ついつい他の人に伝えたくなっちゃうでしょ?」とユーモアを交えつつ、語りました。
 
 「それでも、人から聞いた悪口は自分の胸のうちにとどめておく。そうすることで、友人から信頼が得られるようになります」
 
 聞いた情報を右から左に安易に流さない。それは自分の言動が周囲にどう影響を及ぼすかを考え、自らの言葉に責任を持つことでもあります。
 
 「悪口の拡散防止は、みんなが勇気を持てば必ずできます」――経験に裏打ちされた言葉に、生徒たちは真剣な表情で聞き入っていました。

「上の友情」を築くためには

 佐藤さんの講演に続いて、トークセッションと懇談会が行われました。日頃の疑問や悩みを佐藤さんに直接投げかける形式です。当意即妙の応答に、生徒はどんどん引き込まれていきます。
 
 ここでも友情に関する質問が。ある3年生の男子生徒は、『希望対話』にある牧口常三郎先生の「友情の上・中・下」(「物や金でつながった交際は、下の友情である。就職の世話をしたり、仲良くするのは、中の交際。友人のために悪〈不幸の原因〉を取り除き、忠告できるのが、上の友情である」)を引き、「上の友情」を築くにはどうすれば良いかと尋ねました。
 
 佐藤さんは、池田先生の一節「私は、みなさんに『上の友情』をめざしてもらいたい。一時的に好かれる、嫌われるという小さな心ではなく、心から相手の幸福を祈り、いっしょに成長しよう、いっしょに正義の道を歩もうという生き方です」を確認し、「その通りだと思う」と応じます。
 
 その上で、「この部分で大事なのは、池田先生が下や中の友情を否定しなかったことにあるんじゃないかな」と、鋭く指摘しました。
 
 佐藤さんは自らの職業に引きつけて語ります。作家は良い作品を世に送り出すため、優れた編集者と組みたいと考える(下の友情)。仕事を進める中で、互いの人脈を紹介することもある(中の友情)。さらに親密になれば、相手を思い本音で語り合えるようになる(上の友情)――。
 
 学校生活でも、友人同士で得意教科を教え合ったり、好きな本について意見を交換したりすることがある。こうした「下や中の友情」の上に、「上の友情」を組み立てていく。現実から離れず、具体的な実践に落とし込む――佐藤さんの読みの深さがうかがえます。

もし中学生に戻れたら?

 プロサッカー選手を目指す、ある男子生徒はこんな質問を投げかけました。「もし今、中学生に戻れたら、何を目指しますか?」
 
 佐藤さんは「僕は中学時代、キリスト教の牧師か中学校の英語の先生になりたいと思っていたんだ」と懐かしそうに振り返り、「今、中学生に戻れるなら、やはり昔と同じように中学校の先生を目指します」と答えました。
 
 中学1年生の時に出会った先生は、佐藤さんが英語に関心を持っていると知ると、熱心に海外文通を勧めてくれたそうです。この出会いから、入門の段階で意欲を引き出してくれる先生の存在は大きいと感じたと言います。
 
 ほかにも「宝塚歌劇団を目指そうか悩んでいます」「看護師とバレーボール選手の夢を両方追いかけることはできますか」など、将来の夢や進路への相談が相次ぎました。
 
 こうした質問に、佐藤さんは「夢に幅を持たせること」の重要性を訴えます。スポーツ選手も俳優も、実際になれるかどうかは分からない。それでも諦めずに努力を続ける中で、医師や管理栄養士としてスポーツ選手を支える側に回ったり、演劇を学ぶうちに文学や哲学の研究者を志したりと、“夢の周辺”に新たな道が見つかるかもしれない。
 
 夢を夢で終わらせないために「夢の幅」を広げる。だからこそ、と佐藤さんは強調します。
 
 「将来の可能性を広げるために、中学生の今から勉強に励むことが大事なのです」

取材後記

 プロサッカー選手を目標とする男子生徒に話を聞きました。
 
 彼は「将来をより広い視野で捉えられるようになり、勉学の重要性を理解できました」と、目を輝かせて語ってくれました。
 
 記者が感心したのは、多くの生徒が佐藤さんを気遣い、多忙な中、時間を割いて来校したことへの感謝を届けていたことです。
 
 こうした誠実な振る舞いに、「みんな本当にしっかりしていますね」と目を細めた佐藤さん。学園生との交流の時間を惜しむように、キャンパスを後にしました。
 
 それから9日後――佐藤さんの姿は、東京・創価学園にありました。白熱の対話プロジェクトは次回へ続きます。(後日掲載予定)

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