企画・連載

【創価学園NAVI】 友がいた。負けなかった!――卒業生の友情物語 2022年3月27日

 旅立ちの月・3月、東西の創価学園では16日に卒業式が行われた。創立者・池田先生は、「信ずる君たちよ、“学び”と“負けじ”の『希望博士』たれ」などとメッセージを贈り、新たな門出を祝福した。コロナ禍という試練の時を共に過ごし、強い絆で結ばれた卒業生たち。今回の「創価学園ナビ」では「友情物語」と題して、学園生がキャンパスで刻んできた励ましのドラマを紹介する。

●東京・創価高校 病が教えてくれた仲間を思う力

 午前7時半。静かな校舎に、掃除用具の音が響く。
 
 朝日が差し込む廊下で、2人の生徒がほうきを手に語らう。
 
 中澤正彦さんが、同級生の木村伸一さんを誘って、毎朝の清掃を始めたのは3年の1学期。

 「創価中学から6年間、人生を変えてくれた学園に恩返しがしたくて!」――笑顔で語る中澤さんだが、中学に入学した当初は、こんなに明るく笑える日が来るとは思っていなかった。
 
 中澤さんは、生まれつき右上半身の筋肉が弱く、発達しづらい。さらに、成長と共に体が変形し、医師から背骨が湾曲する「側彎症」と診断された。同級生に比べて背は低く、肺活量は3分の1程度。すぐに息が上がってしまう。机などの大きいものが運びづらい。生活面での支障はあったが、努力で乗り越えてきた。しかし、“心の壁”はそうはいかなかった。
 
 小学生の頃、病気について友達から心ない言葉を受けたこともある。心配を掛けたくない一心で、家族にも悲しさと悔しさを隠してきたが、大きなコンプレックスが心の中にあった。
 
 努力の末、合格した憧れの創価中学校。しかし初登校の日、教室へと進む中澤さんの足取りは少し重かった。
 
 「また嫌な思いをしないかな」――そんな不安をかき消したのが、学園の仲間だった。
 
 何げない日常会話。大笑いした、くだらない話。他の人と変わらない「普通」のコミュニケーションがうれしかった。

 「クラスメートは僕の病気を“個性”として自然に受け止めてくれたんです」
 
 いつしか“心の壁”は消えていた。初めて「学校が大好きだ」と思った。
 
 学園生活で一番の思い出は、中学3年の6月、背骨を矯正する大手術を行った時のこと。約2カ月間、家族以外は面会できない入院生活。それでも中澤さんは孤独を感じなかった。
 
 中澤さんは2人の友に手術のことを打ち明けていた。同級生の静野光城さんと加藤遊さん。いつも一緒にいた親友だ。
 
 「入院中、少しでも中澤とつながっていたいと思って、学校であった出来事を何度もLINEしたんです」(静野さん)
 
 「当時の僕は、授業態度も真面目とは言えなかったんですけど、中澤が病気に立ち向かうと聞いて、自分も変わろうと思って。長文で励ましのメッセージを送ったりしました。そういう“キャラ”じゃないのに(笑い)」(加藤さん)
 
 さらに病室には、同級生の皆で折った千羽鶴が届いた。

 つらいはずの入院生活は、友の温かさを感じるうれしい日々に変わっていた。
 
 術後、久しぶりに登校した日。学校の玄関では、多くの友が笑顔で出迎えてくれた。
 
 「恥ずかしくて、素っ気ない反応をしちゃいました(笑い)」
 
 それ以来、中澤さんの行動は変わった。高校では入試役員や行事の実行委員など、陰の貢献に率先して挑戦した。友が支えてくれた分、自分も友のために尽くしたい――自主的な朝の掃除もそんな思いの表れだった。
 
 3月16日、卒業式当日の朝、木村さんと共に“最後の掃除”をした中澤さん。
 
 式典前、中庭で行われた集いで、晴れやかに語った。
 
 「学園で出会った友達が僕を強くしてくれました。みんな、ありがとう。卒業後も学園に、友達に、恩を返していきます」

●関西創価高校 ダンスでつかんだ「日本一」の絆

 「青春乱舞」を指針に掲げる関西創価高校ダンス部。全国大会常連の“強豪クラブ”だ。
 
 放課後の部活動に加え、夜は自主練習に励む部員が多い。年4回開催される大会で、最高のパフォーマンスを披露するため、日々、技を磨いている。
 
 昨年まで同部で部長を務めた増谷葉奈さんと、部員の岡田広美さん。2人は共に励まし合いながら“ダンス一筋”の青春を歩んできた。
 
 多感な高校時代は、進路や人間関係など、悩むことも多い。
 
 岡田さんが「悩みがあると考えすぎてしまって。そんな時、増谷さんがいつも声を掛けてくれたんです」と話すと、増谷さんは「彼女は、悩みがあるとすぐ顔に出るんです(笑い)」と応じる。軽快な掛け合いが仲の良さを物語る。
 
 そんな2人に「一番の思い出」を聞くと、同じ答えが返ってきた。
 
 ダンス部員たちの夢の舞台「全国高等学校ダンスドリル選手権大会」――ではなく、意外にも、その“予選”に当たる「関西大会」だという。
 
 大会の演技中、あるメンバーの靴が脱げるアクシデントが起こった。ミスよりも、それを誰もフォローできなかったことが悔しかった。審査でも大きく減点され、不本意な結果に。全国大会に出場はできたが、メンバーは悔し涙を抑えられなかった。

 “今のままではダメだ”――。誰もがそう感じたが、話し合いになると、感情がぶつかり合い、部がまとまらない。
 
 増谷さんは焦っていた。
 
 「自信が持てなくなって、誰も信じられない時もありました」
 
 孤独感と重圧を背負いながら、部長の仕事を終えて一人帰路に就いた日。校門の前には岡田さんの姿があった。
 
 帰り道、いろんな話をした。
 
 趣味や勉強、進路や人間関係。「部長」としてではなく、「友達」として、思いを打ち明け、話を聞いた。
 
 それから増谷さんは、部をまとめることではなく、一人一人と向き合うことを心掛けた。
 
 “みんな、本当にダンスが好きなんだ”――互いの気持ちを分かり合えた時、自然と演技に一体感が生まれた。
 
 迎えた全国大会当日。
 
 「その日は、練習の時から、気持ちで勝っていたと思います」と岡田さんは振り返る。
 
 皆のはじける笑顔、一糸乱れぬ動き。全員が思いの全てを、ダンスにぶつけた。
 
 渾身のパフォーマンスの結果、6年ぶりとなる「文部科学大臣賞」を受賞。メンバーは、“うれし涙”を隠さなかった。

 増谷さんは語る。
 
 「日本一の結果もそうですが、皆の思いが一つになったことが何よりもうれしかったです。家族、先生方、学園のみんなに感謝です!」
 
 今月16日、学園では卒業式が行われた。新天地への期待と決意に目を輝かせる卒業生たち。
 
 その中に、ローブを着た2人の姿もあった。
 
 「一生の友達に出会えたことが最高の宝物です。これから、どんな大変なことがあっても、学園で築いた友情を支えにして乗り越えていきます!」
 
 こう話す増谷さんの隣には、いつもと変わらない岡田さんの笑顔があった。
  
  
  
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