企画・連載

【創価学園NAVI】 小学1年生でもオンライン授業を実施――ICT教育に力を注ぐ東京創価小学校 2021年7月15日

1人1台の端末貸与 双方向のオンライン授業

 1人1台のICT(情報通信技術)機器と、高速大容量の通信環境の整備を――2019年に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」を受け、全国各地の教育現場は今、大きな変化の中にある。早くからICT機器の導入に取り組んできた東京創価小学校(小平市・国分寺市)では、昨年、全児童にICT機器を貸与した。今、どんな学びが行われているのか――6月下旬、同校に足を運んだ。

 2年生の体育の授業。
 
 マットを使って「前転」の練習に取り組んでいる。
 
 「いくよー!」
 
 ゴロン。
 
 前転をした児童が、すぐさまマットの横へ。
 
 「どうだった⁉」
 
 班のみんなも集まり、顔を突き合わせて何かをのぞき込んでいる。
 
 「足が開いちゃってるよ」
 
 「あ、本当だ! 閉じてたつもりなんだけど。もう一回やってみる!」
 
 のぞき込んでいたのは、タブレット端末。

 4~5人で一組の班になり、1人がマット運動をする様子を、順番を待つ他の児童が横から撮影する。撮った動画をスローモーションで再生し、模範演技の動画と見比べて、どうすれば上手にできるか皆で考える。
 
 「自分では、うまくできていると思っていたのに動画を見たら、全然できていなくて、ビックリした(笑い)」
 
 「自分が映っている映像を見ながら、友達がコツを教えてくれたの。その通りにやったら、ちゃんとできて、うれしかった!」

学習のツール

 近年、通信技術が急速に発達し、社会は大きく変化している。東京創価小学校では、こうした変化の時代に生きる児童たちのために、2012年から電子黒板を導入し、授業でタブレット端末を活用するなど、ICT化に取り組んできた。
 
 そして、19年に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」を受けて、児童1人に1台の、ICT機器導入に向けた準備に着手。昨年春の全国一斉休校を契機に計画を早め、昨年の2学期に全ての児童へのICT機器の貸与を完了した(1・2年生にはタブレット端末、3年生以上にはタッチパネルPC)。

 現在、ほとんどの授業でICT機器を活用した“新たな学び”が行われている。
 
 多くの授業では課題提出用のソフトを使う。端末上で作成したワークシートを送信したり、課題を終えたノートを撮影して写真で提出したりすることができる。
 
 利点の一つは、児童同士でも閲覧可能な点だ。これまでの提出課題は、児童と教員の一対一のやり取りだけだったが、友達の提出物を見ることで、“こういう考えもあるのか”など、新たな“気づき”が生まれるという。
 
 デジタル教科書の活用も進む。英語科目では、ICT機器を使って、どこでも楽しくリスニング力などを磨けるようになった。英語の電子書籍が読めるインターネットサイトにも自由にアクセスでき、英文の読書に挑戦する児童もいる。
 
 1年生の学年主任を務める鳴海悦子教諭は語る。「本校では、児童に『自由にどうぞ』と端末を渡すのではなく、使う際のルールやマナーを定め、“どう使うことが大切なのか、効果的なのか”を丁寧に教えています。教科書、鉛筆、ノートを使った学習方法を基本にし、その上で、児童たちがICT機器を“学びのツール”として使いこなせるようにサポートしています」

学び合いを重視

 今年の4月に発令された3回目の緊急事態宣言。東京小では2週間、オンライン会議アプリを使った“双方向”の授業を初めて実施した(5月17日から31日まで)。
 
 昨年春の全国一斉休校期間では、“学びを止めない”ために、同校の教職員たちは授業動画を制作し、児童たちが自宅で見て学べるように配信。この東京小の挑戦は、教育専門のニュースサイトで「子どもの想いに応える教諭らのチャレンジ」との見出しで紹介され、大きな反響を呼んだ。
 
 授業動画の撮影・編集など、ICT教育の推進を中心的に進めた伊藤宣彦教諭は語る。
 
 「昨年は授業動画を視聴した後、取り組んだ課題プリントなどを写真に撮り、提出してもらうことで、児童の学習の進捗を把握していました。
 
 今回は、全児童に1台の端末貸与が実現できたことで、ビデオ会議システム『Zoom』を活用し、より普段の授業に近い“双方向の授業”に挑戦しました」

 オンライン授業に臨むに当たり、1週間の“特訓期間”を設け、児童たちは学校でZoomへのアクセス、映像や音声の入出力、チャット等の操作を練習した。
 
 また、教職員は画面を見続ける児童への配慮から、使用ルールを検討。学年に応じて1時限を30分もしくは40分に短縮し、休み時間は画面から離れて休憩することを徹底した。さらにオンライン授業は午前中の3時限目までとして、午後は各自で課題を進める時間に充てた。
 
 教員たちは授業の進め方や課題内容にも工夫を凝らした。東京小の授業では“児童同士の学び合い”を大切にしている。今回のオンライン授業でも、いつもと同じように児童同士が話し合って学べるよう、グループ分けをする「ブレークアウトルーム機能」を積極的に取り入れ、各授業で少人数の話し合いの時間を設けた。
 
 また音楽では楽器を演奏し、図工では工作を、理科では市販のキットを自宅に持ち帰って、実験を行うなど、自宅にいても画面越しに“日常の授業”が再現された。

 初の双方向のオンライン授業――児童たちはどう感じたのだろうか。
 
 休みの日も学校に行きたいと思うほど、学校が好きだという1年生の徳久光恵さん。「学校に行けないと聞いて、最初は寂しいと思いました。でもオンライン授業では、“マスクを外した友達の笑顔”を初めて見られて、うれしくなりました!」
 
 3年生の長洲恵さんは「家で授業が受けられるのは、すごく新鮮でした。特にブレークアウトルーム機能を使っての話し合いは、他の班の話し声が聞こえないので、自分たちの話し合いに集中できました」と語る。
 
 宮口芙優海さん(4年)は「理科の実験は学校でしかできないと思っていたけど、家でも実験を楽しめました」と話す。
 
 2年生の国語の授業では“オンラインならではの学びを!”と教員が考え、海外在住の創価教育の同窓生とオンラインでつなぎ、「外国の小学校」について児童が質問する機会を設けた。
 
 「私の住んでいる国は、夏しかありません。一年中、プールの授業があります」
 「朝の会は7時45分から始まります。創価小と1時間も違います」
 
 日本との違いに、児童たちの驚きの表情が画面いっぱいになった。
 
 参加した木村和美さん(2年)は振り返る。
 「家にいながら、外国に住んでいる人に話を聞けるなんて、不思議な気持ちでした。海外には日本のような春、夏、秋、冬がない国もあることにビックリしました!」

 対面での授業が再開した後、オンライン授業について児童たちにアンケートを実施すると、約9割が「とても楽しい」「楽しい」と回答した。
 
 齋藤隆雄教頭は語る。
 「変異株などが広がりをみせる中、児童の安心・安全を第一にオンライン授業の実施に踏み切りました。実施にあたっては、保護者の皆さまの多大なご理解とご協力をいただき、ICT教育の可能性や、学びを進める手応えを大いに得ることができました。
 コロナ禍の中で私たち教職員は、学園生が少しでも寂しさや物足りなさを感じないよう、真剣に児童たちと向き合い、挑戦してきました。そうした中で、本校の児童たちは“できないこと”よりも“できること”に目を向けて、その喜びを語るようになっています。
 今後も一人一人を大切に、どんな環境下でも価値を創造できる、心豊かな児童を育んでいきたいと思います!」

  
  
  
 ◆GIGAスクール構想って?
 
 「GIGAスクール構想」とは、全国の児童・生徒に1人1台のICT機器(タブレット端末やPC)の貸与と、各校内に高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。2019年に打ち出され、21年度からその実現が本格化している。
 人工知能(AI)や自動運転技術など、先進技術がますます発展する未来。その時を生きる児童・生徒には、そうした技術を活用して、的確に情報を処理し、問題を解決していく能力が求められている。この新たな力を養うために、教科書、鉛筆、ノートに加え、ICT機器の活用が“令和時代の学びのスタンダード”になっていく。
 
 
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