企画・連載

ちーちゃんが行く! 東京2025デフリンピック 2025年11月20日

100年の歴史 日本開催は初 今月26日まで

 今回はSDGs×SEIKYOの特別編。耳がきこえない・きこえにくい人のための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が現在、開催中です(今月26日まで)。誰もが輝く共生社会を目指すSDGsの理念は、同大会の理念とも深く響き合っています。ちーちゃんと一緒にデフリンピックについて学び、音がない世界で戦うアスリートたちを応援しませんか。

 ちーちゃん、きょうは天気がいいね。父さんと一緒に、お出かけしよっか。

 わーい、やったあ! どこに行くの?

 ちょうど今、日本でデフリンピックが行われていて、誰でも無料で観戦できるんだ。

 デフリンピック?

 耳がきこえない、きこえにくい人のためのオリンピックだよ。英語で「きこえない」という意味の「デフ」と「オリンピック」を組み合わせた言葉なんだ。オリンピック・パラリンピックと同じように4年に1度、開かれていて、今回は25回目の夏季デフリンピック! 100年の歴史の中、日本での開催は初めてで、東京を中心としたいろいろな会場で競技が行われているんだよ。

 すごい! 100年前から続いているの?

 第1回は1924年、フランス人のウジェーヌ・ルーベンス・アルケーさんの発案で、フランスのパリで開かれたんだ。
 アルケーさんは自動車整備士で、自転車競技選手としても力があった。でも耳がきこえなかったんだ。悲しいことに、当時は耳がきこえなければ、“劣っている”とされた時代……。アルケーさんは、オリンピックのような国際スポーツ大会を、きこえない人の手で開催・運営することによって、きこえない人の社会的地位を向上させようとしたんだよ。第1回は、9カ国から140人以上が参加したんだ。

 今年も海外の人が来ているの?

 81カ国・地域から、アスリートが集っている。手話は国ごとに違うから、国際手話が使われているんだって。
 競技は全部で21種類。オリンピック競技に加えて、地図とコンパスでゴールに着くまでの速さを競うオリエンテーリングといった、デフリンピック特有の競技もあるんだ。

 わあ! とっても楽しそう!

 オリンピック競技については、ルールはほとんど変わらない。ただ、耳がきこえなくても不利にならないように工夫されているんだ。例えば、100メートル走では、選手はピストルによるスタート音がきこえないよね。だから、一人一人の足元にはランプがあって、「位置について」で赤色、「よーい」で黄色、「どん」で緑色に光るんだ。

 そうなんだ! 「がんばれー!」って大きな声でたくさん応援したいけど、そんな時には、どうしたらいいんだろう……。

 心配しなくても大丈夫! 今回、デフリンピック100周年という節目を機に、耳がきこえない人が中心となって、目で見える応援の形「サインエール」がつくられたんだ。会場が一体となって、応援の気持ちを選手に届けることができるよ! きこえる・きこえないにかかわらず、皆が輝ける共生社会が、ここから世界に、未来に広がるといいね。

 よーし、私もいっぱい応援するぞ!

サインエールで応援しよう
●「大丈夫、勝つ!」
●「行け!」
見どころを聞いた!
街と心のバリアフリーを
デフリンピック運営委員会
事務局長 倉野直紀さん

 「東京2025デフリンピック」の熱戦が各地で繰り広げられています。私たちは今大会を、単に耳のきこえない・きこえにくい人のスポーツ大会として終わらせたくはありません。社会では手話施策推進法の施行など、ろう者に配慮した環境づくりが進んでいますが、まだまだ課題は山積みです。私自身もろう者ですが、今大会を機に、きこえないことへの理解を広め、“街と心のバリアフリー”を進めていく決意です。

 私は約15年前から、デフリンピックに携わり始めました。デフリンピックの見どころは、何といっても、きこえないならではの戦術で競技をする選手たちの姿ではないでしょうか。

 音のない世界で、ハンドサインやアイコンタクトを使ってプレーしたり、互いがきこえないからこそ、その隙をついてみたり……。きこえる選手と、きこえない選手の戦い方の違いを、ぜひ探してみてください。

 また、デフリンピック開催期間中は東京都内に「デフリンピックスクエア」が開設されます。ここでは世界中から集った、きこえない選手たちと交流ができるとともに、障がいのある人の意思疎通を手助けするユニバーサルコミュニケーション技術などが体験できます。スタンプラリーやキッチンカーなどもあり、大人も子どもも楽しめる空間となっていますので、ぜひ新たな発見を求めて、お越しください。

 今回の「東京2025デフリンピック」は、第1回から100年を経た、記念すべき大会です。これまで多くのデフリンピックの大会が、きこえない当事者団体だけで運営されてきました。もちろん、そのこと自体にも大きな意義はあるのですが、一方で、社会に壁をつくってしまった側面もあると思っています。

 そこで今回は、次の100年を見据え、運営体制から共生社会のモデルになれたらと、決定権はろう者が持った上で、きこえる方にも入っていただいています。

 また今大会に限らず、ろう者が今後も国内での国際的なイベントなどに参加できるよう、東京での開催が決定した2年前から、国際手話通訳者を養成してきました。

 当初、全日本ろうあ連盟に登録されている国際手話通訳者は10人あまりでしたが、大会で活動する国際手話通訳者は、今や100人まで養成されました。ここから、さらにバリアフリーな世界を広げていきたいです。

 私は“バリア”には、実質的な面と心の面があると思っています。心のバリアというのは、きこえる人も、きこえない人も持っています。相手がきこえないからといって、特別扱いする必要はないし、自分がきこえないからといって、控えめになる必要もありません。

 きこえる人も、きこえない人も、それぞれの「当たり前」がありますが、その「当たり前」が違っていいんです。どちらかに合わせようとするのではなく、互いを尊重し合いながら、手を取り合って生きていく――これが本当の“多様性”だと思います。

 社会は一人が何人も集まった集合体です。一人の意識が変われば、間違いなく社会は変わっていきます。まずは、自分自身の心のバリアをなくすところから。「誰もが個性を活かし力を発揮できる」共生社会を、共に実現していきましょう。

都内を中心に、福島県や静岡県でも開催中。事前申し込みなしで無料で観戦できるんだって! 詳しくは公式ホームページをチェック