4月27日から5月22日にかけて(現地時間)ニューヨークの国連本部でNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議が開かれ、SGI平和センターの砂田軍縮・人権部長らSGIの代表が参加した。同部長の手記を掲載する。
◇
今回の会議は2015年、22年に続いて最終的な「成果文書」を採択できずに閉幕しました。国連のグテーレス事務総長や中満事務次長(軍縮担当上級代表)が“核兵器のない世界という目標に向けた歩みを止めてはならない”と強い危機感と決意を訴えたように、成果文書が採択されなかったからといって、条約の意義や効力が失われるわけではありません。
4月27日から5月22日にかけて(現地時間)ニューヨークの国連本部でNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議が開かれ、SGI平和センターの砂田軍縮・人権部長らSGIの代表が参加した。同部長の手記を掲載する。
◇
今回の会議は2015年、22年に続いて最終的な「成果文書」を採択できずに閉幕しました。国連のグテーレス事務総長や中満事務次長(軍縮担当上級代表)が“核兵器のない世界という目標に向けた歩みを止めてはならない”と強い危機感と決意を訴えたように、成果文書が採択されなかったからといって、条約の意義や効力が失われるわけではありません。
NPTは「核兵器を持っていない国は核兵器開発を放棄するが、原子力の平和利用は認められ、核兵器国(米ロ英仏中)は核軍縮の義務を負う」という両者の「約束」の上に成り立っています。しかし現実には、核兵器国が核軍縮に向けた誠実な交渉の義務を軽視していることは明らかで、双方の隔たりはかつてなく大きくなっています。
核保有国が核兵器を使用するとの威嚇や核施設への攻撃を行うなど、NPT体制への信頼が大きく揺らぐ中、関係者の間では「今度こそ合意しなくてはならない」という成果文書採択への危機感がありました。しかし、その思いは打ち砕かれる結果になりました。
NPTは「核兵器を持っていない国は核兵器開発を放棄するが、原子力の平和利用は認められ、核兵器国(米ロ英仏中)は核軍縮の義務を負う」という両者の「約束」の上に成り立っています。しかし現実には、核兵器国が核軍縮に向けた誠実な交渉の義務を軽視していることは明らかで、双方の隔たりはかつてなく大きくなっています。
核保有国が核兵器を使用するとの威嚇や核施設への攻撃を行うなど、NPT体制への信頼が大きく揺らぐ中、関係者の間では「今度こそ合意しなくてはならない」という成果文書採択への危機感がありました。しかし、その思いは打ち砕かれる結果になりました。
会議は冒頭から対立の構図が続く中で行われましたが、市民社会、そしてSGIは、前向きな議論に貢献できるよう、志を同じくする団体と共に取り組みを続けました。他の宗教団体と宗教間共同声明を発表し、核兵器がもたらす破滅的な非人道性を指摘。いかなる理由であれ核兵器の使用や威嚇は許されないと、倫理と道義の観点から強く主張しました。この声明は109の団体から賛同を得ました。
会議は冒頭から対立の構図が続く中で行われましたが、市民社会、そしてSGIは、前向きな議論に貢献できるよう、志を同じくする団体と共に取り組みを続けました。他の宗教団体と宗教間共同声明を発表し、核兵器がもたらす破滅的な非人道性を指摘。いかなる理由であれ核兵器の使用や威嚇は許されないと、倫理と道義の観点から強く主張しました。この声明は109の団体から賛同を得ました。
また関連行事として、米国の核時代平和財団と共に「希望の選択」と題するイベントを開催しました。これは、核兵器がもたらす悲惨な人道上の結末に焦点を当てることで、NPT、特に第6条が定める核軍縮義務の履行への流れを再び活性化させることを目指したものです。
ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の松浦秀人代表理事が基調講演し、核兵器は被爆者本人の未来のみならず、家族をも、見えない放射線の恐怖で縛り付ける悪魔の兵器であると断じました。さらに現代の紛争における核使用リスクに強い警鐘を鳴らしつつ、「武器ではなく言葉で話し合おう」とのメッセージを発信し、机上の核抑止論に傾きがちな国際政治の場に、血の通った人間の叫びを届けました。
また関連行事として、米国の核時代平和財団と共に「希望の選択」と題するイベントを開催しました。これは、核兵器がもたらす悲惨な人道上の結末に焦点を当てることで、NPT、特に第6条が定める核軍縮義務の履行への流れを再び活性化させることを目指したものです。
ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の松浦秀人代表理事が基調講演し、核兵器は被爆者本人の未来のみならず、家族をも、見えない放射線の恐怖で縛り付ける悪魔の兵器であると断じました。さらに現代の紛争における核使用リスクに強い警鐘を鳴らしつつ、「武器ではなく言葉で話し合おう」とのメッセージを発信し、机上の核抑止論に傾きがちな国際政治の場に、血の通った人間の叫びを届けました。
さらに、ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェームズ・マーティン不拡散研究センターと関連行事「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」を開催しました。ここでは、核兵器を使用させないという「核のタブー(禁忌)」をどう強化するか、核兵器国間の共感、対話、信頼をいかにして回復させるかという具体的な代替手段について議論を深めました。
さらに、ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェームズ・マーティン不拡散研究センターと関連行事「核兵器の使用と緊張の高まりを食い止める――核戦争の危機の教訓」を開催しました。ここでは、核兵器を使用させないという「核のタブー(禁忌)」をどう強化するか、核兵器国間の共感、対話、信頼をいかにして回復させるかという具体的な代替手段について議論を深めました。
これらのSGIの全ての取り組みに共通している重要な柱があります。それは安全保障、軍事、技術的な観点だけではなく、常に「人間」を中心とした議論を行うこと、どれほど危機的な状況下にあっても、決して諦めずに「希望」をつくり出し、軍縮のための行動を続けていくことです。
成果文書の議論の中で核兵器国が「核兵器の非人道性」という言葉を削除しようとする動きがあったからこそ、国益の前に「人間の生命と尊厳」を中心にした誠実な議論が求められています。
会議の決裂という厳しい現実を目の当たりにすると、無力感に苛まれそうになります。しかし、池田先生はパグウォッシュ会議のロートブラット博士との対談集『地球平和への探究』で、次のように語られています。
「厳しい国際情勢の現実を見ると、核兵器を廃絶することなど、不可能だという人がいます。しかし、そうした人々は、与えられた現在の条件が変わらないという前提のもとに未来を予測するという誤りを犯しています。(中略)核廃絶ができるかできないかも、人間の意志にかかっていることを忘れてはならないのです」
そして、ロートブラット博士もまた、こう訴えられています。
「この新しい世紀を平和の世紀にしようとするならば、そして、世界の様相をずたずたにしてきた恐怖と悲劇を過去のものにしようとするならば、私たちは今一度、人間とすべての生命の尊厳に目を向けなければならない」
環境がどれほど絶望的に見えようとも、それを変えていく力は私たち一人一人の「人間の意志」の中にあります。核兵器の存在を前提とした今の安全保障環境を変えるのは、国家の力だけではなく、生命の尊厳を何よりも重んじる民衆の力であり、連帯です。核兵器のない世界の実現に向け、さらなる対話と草の根の行動を粘り強く続けていく決意です。
これらのSGIの全ての取り組みに共通している重要な柱があります。それは安全保障、軍事、技術的な観点だけではなく、常に「人間」を中心とした議論を行うこと、どれほど危機的な状況下にあっても、決して諦めずに「希望」をつくり出し、軍縮のための行動を続けていくことです。
成果文書の議論の中で核兵器国が「核兵器の非人道性」という言葉を削除しようとする動きがあったからこそ、国益の前に「人間の生命と尊厳」を中心にした誠実な議論が求められています。
会議の決裂という厳しい現実を目の当たりにすると、無力感に苛まれそうになります。しかし、池田先生はパグウォッシュ会議のロートブラット博士との対談集『地球平和への探究』で、次のように語られています。
「厳しい国際情勢の現実を見ると、核兵器を廃絶することなど、不可能だという人がいます。しかし、そうした人々は、与えられた現在の条件が変わらないという前提のもとに未来を予測するという誤りを犯しています。(中略)核廃絶ができるかできないかも、人間の意志にかかっていることを忘れてはならないのです」
そして、ロートブラット博士もまた、こう訴えられています。
「この新しい世紀を平和の世紀にしようとするならば、そして、世界の様相をずたずたにしてきた恐怖と悲劇を過去のものにしようとするならば、私たちは今一度、人間とすべての生命の尊厳に目を向けなければならない」
環境がどれほど絶望的に見えようとも、それを変えていく力は私たち一人一人の「人間の意志」の中にあります。核兵器の存在を前提とした今の安全保障環境を変えるのは、国家の力だけではなく、生命の尊厳を何よりも重んじる民衆の力であり、連帯です。核兵器のない世界の実現に向け、さらなる対話と草の根の行動を粘り強く続けていく決意です。