健康・介護

〈健康PLUS〉 花粉症軽減のために 2026年2月14日

耳鼻咽喉科医 前田陽平さん

 鼻水やくしゃみ、目のかゆみなど、悩ましい花粉症の時期となりました。今年は多くの地域で例年より飛散量が多いと予測されています。耳鼻咽喉科医の前田陽平さんに症状を軽減させるための日常の対策を聞きました。
  

国民の半数が罹患

 日本では、1998年には19・6%だった花粉症の有病率が、2019年には42・5%と2倍以上に増加しました。子どもの有病率も増加傾向にあり、花粉症は国民の約半数が罹患する“国民病”です。
 九州から関東では、スギ花粉が既に飛散しており、東北は2月下旬から飛散の見込みです。ピークは早い地域で2月下旬から、広い範囲で3月上旬から中旬となります。その後、ヒノキ花粉の飛散が続き、5月ごろまで症状に悩まされる人が少なくありません。
 今年は、全国の9割以上の地域で、大量飛散(シーズン合計3000個/㎠以上)が予測され、東日本や北日本を中心に、例年より飛散量が増える見込みです。
 居住地域の飛散状況はテレビの気象情報や日本気象協会の天気予報専門サイト(https://tenki.jp/lite/pollen/)などから確認できます。
  

曝露量が影響

 花粉は鼻や目、喉など、外界と接する粘膜から侵入します。
 花粉症は、本来は体に害のない花粉に対して、免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こるアレルギー疾患です。花粉(アレルゲン)が体内に入ると、一部の人では免疫反応の偏りによって、花粉に対する抗体が作られるようになります(感作)。
 その後、再び花粉が侵入すると、抗体が結合した肥満細胞(免疫細胞の一種)からヒスタミンなどの物質が放出され、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が引き起こされます。これらの症状は、結果として花粉を体外に排除しようとする反応として現れます。
 花粉症そのものは、花粉に対する個人の免疫反応によって起こります。しかし、患者数が増え、国民病と呼ばれるまでになった背景には、個人の体質だけでは説明できない社会的・環境的な変化もあります。

 戦後に進められたスギの大量植林によって花粉の飛散量が増えたことに加え、都市化や生活環境の変化、大気汚染などが、免疫の反応の仕方に影響している可能性が指摘されています。
 そうした中、近年の研究では、花粉の曝露量(体の粘膜などが花粉にさらされた量)が発症に大きく影響することが明らかになっています。
 例えば、福井県内の小学生約2万人を対象にした調査で、コロナ禍を通じて登下校時にマスク着用が習慣化した結果、その児童のスギ花粉症の新規発症率は、平均から見ておよそ半減しました(2022年2月発表、福井大学と福井県の共同調査)。
 発症には外的要因もあり、完全な予防は難しいですが、曝露量を減らすことで発症リスクや症状の軽減につながります。個人でできる症状軽減のための日常的な対策を紹介します(別掲)。
 また症状がある場合は、服薬など適切な治療が欠かせません。一方、1回のステロイド注射でシーズン中の症状を抑えるとされる治療法は、全身性の副作用のリスクが高まるため、学会などでは推奨されていません。
  

○●日常的な対策●○

 ・マスクや花粉対策用眼鏡の着用
 ・けば立った衣服を避ける
 ・帰宅時、玄関に入る前に衣服や髪についた花粉を落とす
 ・帰宅時、洗顔、うがい、鼻をかむことで付着した花粉を除去
 ・鼻うがいは粘膜を洗い流す方法として有用
  

◇◆鼻うがいの方法◆◇

 市販の鼻洗浄器や生理食塩水(約0・9%)を使えば、自宅でも無理なく行えます。

 ① 鼻洗浄器に、専用の洗浄液や、水に粉末を溶かして作る専用液、または生理食塩水を入れる
  
 ② 洗面台やシンクの前に立ち、前かがみの姿勢になる
  
 ③ 口で呼吸しながら片方の鼻の穴にノズルを当て、ゆっくりと洗浄液を注入する

  
 ④ 反対の鼻の穴、もしくは口から洗浄液を出す
 ※「えー」と発声すると、耳に洗浄液が流れ込むのを防げる

  
 ⑤ 反対の鼻も同様に行う
  
 ⑥ 終了後、片方ずつ優しく鼻をかみ、残った水分を排出する

 ※1日1回、帰宅後などに行う。勢いよく洗ったり、強く吸い込んだりすると、中耳炎の原因になることがある
  
  

 まえだ・ようへい 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在、JCHO大阪病院院長補佐・耳鼻咽喉科診療部長。大阪大学招聘教員。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くX(フォロワー4万人)などで発信。メディア出演多数。
  

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