企画・連載

【創価学園NAVI】関西創価中学校 “数学を好きになる”授業改革 2025年1月28日

生徒一人一人が選べる四つの授業スタイル
「分からない」を「分かった!」に変える

 「算数・数学」と聞くと、「苦手」というイメージを持つ人もいるでしょう。2019年の調査では、「算数・数学を嫌いになった時期」について、「中学校在学中」が43%で最多となっています(math channel著『文系オトナですが、今から数学を楽しめますか?』笠間書院)。近年、文系理系を問わず、大学や社会で、データを読み解く数学の力が求められています。関西創価中学校(大阪・交野市)では、数学の授業改革を行い、「数学好きの生徒が増えている」と聞きました。一体、どんな取り組みが行われているのか――同校に足を運びました。

 「この1年間で、嫌いだった数学が大好きになりました!」
 
 はじけるような笑顔で語るのは、関西創価中学校で学ぶ森田遙斗さん(3年)。小学校時代は、算数に苦手意識はなかったという。ところが中学校に進学し、算数が「数学」に変わると、内容が急に難しく感じるように。1年生の間は、懸命に勉強したものの、成績は下がる一方だった。
 
 そんな森田さんに転機が訪れたのは昨年の春。授業改革により数学が四つの授業スタイルに分かれ、自分で学び方を選べるようになったのだ。
 
 森田さんが選んだのは「個別課題解決型授業」。分かるまで丁寧に教えてもらえるのが魅力だという。森田さんは1・2年生でつまずいていた部分までさかのぼり、学び直した。授業のペースもゆっくりで、質問しやすい雰囲気も森田さんには合っていた。
 
 「以前は授業中に質問したくても、周りのペースを乱したくないし、笑われたら嫌だなって思って、できませんでした。でもこの授業では何回質問しても、先生や周りの友達も嫌な顔をせず、分かるまで付き合ってくれます」
 
 2年生までは、毎回の定期試験の結果が芳しくなかった。だが、3年生で自分に合った授業スタイルが選べるようになり、森田さんの成績は飛躍的に伸びた。今では友達と試験の結果で競い合うほどだ。森田さんは語る。
 
 「勝った時はもちろんうれしいし、負けた時も『次こそは!』と、もっと頑張ろうと思える。この変化は、本当に大きいです」

自分に合った授業スタイル

 数学は積み上げ型の教科といわれている。一度つまずくと、その後の学習にも影響が出やすい。そこで、関西創価中学校では2024年度から、「えらべる数学」をテーマに、生徒一人一人の学び方に合わせた四つの授業スタイルを導入した。
 
 一つ目は、森田さんが選択した「個別課題解決型授業」。教員が生徒一人一人に寄り添い、基礎を徹底的に固める。つまずきやすいポイントを丁寧に指導することで、数学への苦手意識を払拭させ、学ぶ楽しさを伝える。時には小学校の算数までさかのぼり、学び直すこともある。
 
 二つ目は「一斉授業」。従来通り、教員の講義中心に授業が進む。それでも、以前より授業の質が向上したという。
 受講する鈴木大河さん(2年)は、「以前までは先生が生徒それぞれの求めるレベル全てに対応されていたので、難しい内容が講義されている時はよく分かりませんでした。でも今は、教科書通りに進むので、しっかり理解ができています」と話す。
 
 三つ目は「主体的課題解決型授業」。課題演習中心の授業で、生徒同士で教え合い、学び合うこともできる。
 「対話による学び合い」を取り入れている関西創価小学校の出身の高岸清美さん(2年)は、このスタイルに慣れ親しみ、大きな効果を実感してきた。
 「一人で考えるよりも、友達と教え合った方が、私はずっと理解が深まります。友達は先生とは違って、同じ目線で考えてくれるので、自分の分からないところが明確になるんです」
 
 四つ目が「レベルアップ授業」。標準レベルを超えた発展的な問題を中心に取り組む。数学への探究心がある生徒に好評だ。

おもしろさを再発見

 柳井美咲さん(3年)は、レベルアップ授業で学んでいる。小学生の時から算数が好きで、積極的に難しい問題集に取り組んできた。
 
 「でも、中学校の数学の授業は、少し物足りなかったんです。教科書レベルの問題はすぐに解けてしまって、退屈で……」
 
 以前は、授業の範囲より先の問題に自主的に挑戦したり、発展問題の解き方を一人で調べたりすることが多かったという。
 
 レベルアップ授業は、授業のスピード、教え合いのレベル、周りの生徒の熱意と、全て柳井さんが求めていたものだった。時には、高校レベルの問題を解く機会もあるそう。柳井さんは言う。
 
 「難しい問題に対して、先生からあらゆる角度の解法を教えてもらうと、数学のおもしろさを再発見したような気分になります」

教員たちの熱意と努力の結晶

 授業改革のポイントは、単元ごとに毎回、生徒が自分の学びたい授業を選択できること。自分に合った授業スタイルを探すことができるため、文部科学省が提唱する「個別最適な学び」(※)に適った取り組みといえる。
 
 この授業改革は、教員たちの熱意と努力の結晶である。数学科の教員5人は約9カ月かけて、何度も教科会を開き、授業内容を練り上げてきた。寺西翔大教諭は語る。
 
 「どうすれば全生徒のニーズに応えることができるのか、あらゆることを想定し、5人で徹底的に議論した結果、現在の四つの授業スタイルにたどりつきました」
 
 この授業改革を通して、教員たちは「生徒の質問が増えた」「苦手意識を持つ生徒の姿勢が変わった」「得意な生徒はもっと難しい問題に挑戦できるようになった」「定期テストを単元テストに変えたことで、計画的に学習できるようになった」などの手応えを感じている。
 
 かつて創立者・池田先生は、創価教育を担う教職員の代表に「何よりも、今いる生徒たちを徹して大切にすることだ」「常に、『少しでもよい授業を!』との挑戦を、頼みます」と期待を寄せた。
 
 教科主任の田中健一教諭は力を込める。
 
 「算数・数学が嫌いな生徒は『好き』に、好きな生徒は『もっと好き』になれるよう、より一層、授業改革やカリキュラムの充実に取り組んでいきます」

 【※個別最適な学び】 新学習指導要領の改定を踏まえ、文部科学省が提唱する学び方。ICT(情報通信技術)を活用するなどして、児童・生徒一人一人の特性や学習進度、学習到達度に合わせた学び方を提供すること。

●まとめ・四つの授業スタイル
個別課題解決型授業

教員が丁寧に個別指導を行い、基礎を固める授業スタイル。基礎からじっくりと学び直し、苦手単元を克服する。

一斉授業

従来の講義形式の授業スタイル。教科書の内容に沿って学び、基本的な問題を解くことができるようにする。

主体的課題解決型授業

課題演習中心の授業スタイル。生徒同士で教え合い、学び合うこともでき、主体的に課題を解いて学力を高める。

レベルアップ授業

高度な問題に取り組むことを中心に進める授業スタイル。数学的な思考力を鍛え、伸ばすことができる。
 
 
 
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