企画・連載

〈SDGs✕SEIKYO〉 私が世界を変えていく 2022年9月19日

池田先生の思想と行動に学ぶ勇気の一歩

 企画「SDGs×SEIKYO」の連載「私が世界を変えていく」では、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを前進させる方途を、池田先生の思想と行動を通して考えます。今回のテーマは「核兵器廃絶と平和」です。

持続可能な地球の未来は核兵器のない未来
「原水爆禁止禁宣言」65年

 誰も置き去りにしない社会を目指す「SDGs」と、「核兵器の廃絶」――この二つは密接な関係を持つ。その深いつながりを浮き彫りにしているのが、「核兵器禁止条約」の前文である。
  
 2017年7月、国連では、市民社会の力強い支持とともに、122カ国の賛成を得て、史上初めて核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約が採択された。
  
 その前文からは、「核兵器のない世界」が、どのような世界なのかが読み取れる。今よりも平和な世界であることはもちろん、人権が守られる世界であること。また人の命だけでなく自然環境も守られる世界でもあり、経済や食糧、健康やジェンダーなど、あらゆる意味で、持続可能な世界につながることを示しているといえよう。
  
 核兵器は、現在、地球上に約1万2700発も存在する。保有と維持だけでも膨大な経済的コストがかかり、脅威と常に隣り合わせの緊張を強いられる社会は、持続可能な社会とは対極にあるといえよう。
  
 池田先生は、この禁止条約の前文に刻まれているさまざまな課題は、「いずれもSDGsの要石として位置付けられている分野」(2021年の「SGIの日」記念提言)であると強調。「核兵器のない世界」は、SDGsの達成に大きく関わることを示した。
  
 今月8日で、創価学会第2代会長・戸田城聖先生の「原水爆禁止宣言」発表から65年を迎えた。
  
 「どれだけ多くの人々が、“社会や世界を良くしたい”との思いで長い歳月と努力を費やそうと、ひとたび核攻撃の応酬が起これば、すべて一瞬で無に帰してしまう」(本年の同記念提言)――恩師・戸田先生の遺訓を受け継ぎ、核兵器のない世界の実現へ行動する池田先生のこうした思いに強く共鳴したのが、核兵器廃絶を目指す科学者の連帯「パグウォッシュ会議」の会長を務めたジョセフ・ロートブラット博士である。
  
 ポーランドで生まれ育った博士は、ナチスの原爆製造を危惧し、アメリカの原爆開発計画「マンハッタン計画」に参加。しかし、ナチスが核開発を進めていないことを知ると、ただ一人、計画を離脱した。
  
 1957年には核軍拡競争を食い止めるため、パグウォッシュ会議の創設メンバーの一員に。核兵器の廃絶に生涯をささげ、95年にはノーベル平和賞を受賞した。
  
 池田先生と博士は、89年に出会いを結び、2006年7月に対談集『地球平和への探究』を発刊している(『池田大作全集』第116巻所収)。
  

パグウォッシュ会議・ロートブラット博士との対談集から
人間の生み出した現実は、人間の手で変えられる

 「その時、私の心を占めていたものは、『絶望』でした」――1945年8月、広島に原子爆弾が投下されたことを知った時の驚愕の思いを、ロートブラット博士はこう振り返る。
  
 「私は希望を持っていたからです。(中略)たとえ爆弾がつくられても、使用されないのではないか、ましてや、一般市民に対して使われることはないであろうという希望でした。(中略)しかし、現実はそうなりませんでした」
  
 博士が当時に抱いた悲痛な思いを受け止めた池田先生は、「核時代」における“一凶”を次のように指摘する。
  
 「人類の歴史を二つに分けるならば、『核以前』と『核以後』になると言ってもいい。核兵器の登場で、人類の『種の滅亡』が初めて現実の問題となったからです。しかし、その核兵器を生み出したのは、あくまでも人間自身であることを忘れてはなりません」
  
 人類によって生み出された核兵器は、人類の手で廃絶しなければならない。
  
 池田先生は、恩師の遺訓を胸に刻み、核兵器廃絶への潮流を起こしてきた。国際情勢が緊迫していた74年、中国、ソ連を初訪問。相互不信を解くために、民衆と交流しながら、国家指導者との対話に奔走した。
  
 学会の青年部でも、「人類の生存の権利を守る運動を」との池田先生の指針に応え、核兵器廃絶のための署名運動を開始。75年、核兵器廃絶を求める1000万人の署名簿を国連本部に提出している。
  
 先生は世界の指導者や識者と核兵器廃絶の重要性を語り合う一方で、83年からは毎年、「SGIの日」記念提言を発表し、核軍縮のための提案を発信し続けてきた。
  
 世界の平和は待っていても訪れない。対談集の中で、先生は、平和を生み出すためには、私たち一人一人の行動が不可欠であり、そこには、「三つの責任」があると語る。
  
 すなわち、戦争で犠牲になった人たちへの「過去への責任」。多くの人の生命を脅かす飢餓や貧困、戦争などを断ち切る「現在への責任」。そして、核戦争や環境破壊を起こさせない「未来への責任」の三つである。
  
 そして、これらの責任を果たせるかどうかは、私たちの「意志」にかかっていると指摘する。
  
 「厳しい国際情勢の現実を見ると、核兵器を廃絶することなど、不可能だという人がいます。しかし、そうした人々は、与えられた現在の条件が変わらないという前提のもとに未来を予測するという誤りを犯しています」「目の前の現実が、いつまでも続くと思ってしまうのは、人間の大きな弱点の一つといえるでしょう。核廃絶ができるかできないかも、人間の意志にかかっていることを忘れてはならないのです」
  
 核兵器廃絶を成し遂げるまでには、無数の困難があるに違いない。そうした現実を直視しながらも、崩れざる平和への基盤を着実に築き上げていく――。その挑戦にこそ、地球上の全ての民衆の生存の権利を守る道があるといえよう。
  

Action 何ができるか
身近な語らいの積み重ねの先に

 戸田先生の遺訓を受け継いだ池田先生のリーダーシップのもと、創価学会の平和運動は世界規模で展開されてきた。
  
 核兵器廃絶を訴える展示を世界の数多くの都市で開催してきたほか、署名活動、被爆証言会、平和意識調査、「反戦出版」の刊行など、核兵器がどれほど恐ろしいかを学び深め、草の根から平和への意識啓発に努めてきた。そして、パグウォッシュ会議やIPPNW(核戦争防止国際医師会議)をはじめ、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)などの市民社会のグループやFBO(信仰を基盤とした団体)など、志を同じくする世界中の人々と手を結び、国連の会議などの場に市民社会の声を届け続けてきた。
  
 戸田先生の原水爆禁止宣言に込められた精神を踏まえ、池田先生はつづっている。
  
 「核時代に終止符を打つために戦うべき相手は、核兵器でも保有国でも核開発国でもありません。真に対決し克服すべきは、自己の欲望のためには相手の殲滅も辞さないという『核兵器を容認する思想』です」(2009年9月の核廃絶提言)
  
 冒頭で述べた通り、「持続可能な世界」は「核兵器のない世界」と密接に関係している。ゆえに、「持続可能な世界」の実現を願うならば、「核兵器のない世界」を築く挑戦を成し遂げることが不可欠となろう。
  
 そのために、まず自身が断じて核兵器を許さないと心を固めることだ。核時代を断じて終わらせるとの誓いを人々の間で広げていくことだ。それには、「核兵器禁止条約には、どのような人々の思いが込められているのか」「この条約は、なぜ核兵器の開発はもとより製造、保有、使用、そして使用の威嚇まで、全ての行為を禁止しているのか」などについて、自分の言葉で周囲の人と語り合うことだ。そうした身近な語らいの積み重ねが、核兵器廃絶への土壌を広げ、「核兵器なき世界」へと時代を動かす力となる。
  
 創価学会の平和運動は、核兵器を容認する「生命軽視」の思想と対峙し、「生命尊厳」の思想を時代精神へと高める挑戦なのである。
  
  
 創価学会公式サイトの特集「戦争証言」のコーナーでは、戦争証言・被爆証言の動画が視聴できます。以下のURLからアクセス可能です。
  
 https://www.sokagakkai.jp/picks/feature/kioku/
  
  
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