企画・連載

【創価学園NAVI】 心通う喜びが語学習得の力に――関西創価中学校の英語教育 2022年1月31日

創大留学生との交流会 英検全員受験 暗唱大会

 「皆さんには、人類全体を平和に統合しゆく尊き使命がある。その大いなる翼こそ、語学力なのである」――創立者・池田先生の期待を受け、東京・関西の創価学園では、長年、英語の学習に力を入れてきた。関西創価中学校(大阪・交野市)は、実用英語技能検定(英検)の高い合格実績を誇り、アメリカ創価大学(SUA)進学者を多数輩出している。今回は、英語への意欲を高める同校の取り組みを取材した。

 昨年12月、関西創価中学校の「英会話」の授業。
 
 ネーティブスピーカーの教員(外国語指導助手)による中学1年生のスピーキング試験が行われていた。プリントに書かれた絵や写真を見ながら、一対一で教員の問い掛けに答えていく。
 
 “OK! Let’s start.Who is this person?”(よし、それでは試験を始めるよ。この人は誰かな?)
 
 “This is Naomi Osaka.……Hmm, she is a tennis player. She is from Osaka!”(大坂なおみさんです。えっとー、彼女はテニスプレーヤーで、大阪出身です!)
 
 “That’s right! Osaka from Osaka, hahaha!”(そう、素晴らしい! 大坂選手は大阪出身なんだね、ハハハ)
 
 教員と生徒の笑顔が、はじける。
 
 英語科の村上武志教諭は語る。
 「生徒たちには、『臆病にならず、どんどん話そう!』と訴えています。正しい英語を話さなければと思うと、どうしても考え込んでしまい、言葉が出なくなりますから。それよりも中学生の時代には、たとえカタコトの言葉や単語を並べるだけだったとしても、“英語を使う楽しさ”や“気持ちが通じ合う喜び”を感じてほしいと思っています」
  
 ◇ 
  
 そんな「伝わる楽しさ」を生徒たちに実感してもらいたいと始まったのが、グローバルキャンプだ。これは、創価大学(東京・八王子市)で学ぶ外国人留学生を同校に招き、交流するイベントである(関西創価小学校・高校でも行われている)。コロナ禍のため、昨年と一昨年はオンラインで実施された。

 交流会の主な内容は、クラスごとで話し合って決める。留学生たちに日本の文化を知ってもらおうという企画も多い。
 
 過去には、日本の「夏祭り」を体験してもらおうと、射的などの屋台を準備したクラスもあったという。また、伝統や文化の違いをクイズにしたり、一緒に簡単なゲームを行ったり、上手に英語が話せなくても、留学生と生徒が互いに楽しめる工夫がされている。また少人数のグループに分かれ、留学生を囲んでの懇談の機会も設けられる。
 
 イベントの最後には、留学生と学園生がそれぞれ、劇や歌、ダンスなどを披露して、友情を深め合う。
 
 このグローバルキャンプは、毎年、1年生を対象に実施され、その後の語学学習への意欲向上につながっている。
 
 3年生の三木陽依奈さんも経験した一人。小学生の頃は、“英語は単語を暗記するばかりで、つまらない”と思っていたが、1年次のグローバルキャンプをきっかけに、英語の勉強に力を入れるようになった。
 
 留学生との交流会で彼女は、韓国の留学生と同じグループに。大好きなKポップのアイドルの話で盛り上がり、一緒にそのアイドルの動画を見て、歌ったり、踊ったりした。
 
 「なかなか英語はうまく話せなかったんですけど、“心がつながった!”と思える経験でした。言葉や文化が違う人と仲良くなることが、こんなにもうれしいものなんだと初めて知りました。創立者が海外に大きく友情を広げておられるように、私も世界中に友達をつくってみたいと、その時、強く思いました。
 何のために英語を学ぶのか、目的がはっきりしたことで、勉強がどんどん楽しくなりました」
 
 三木さんは1年次の2学期に、英検5級を取得するところからスタート。学校での授業のほか、自宅学習や通学時間にインターネット上に公開されている英語学習の動画や、スマートフォンのアプリなども使って自習に励み、わずか2年間で高校卒業相当となる英検2級を取得するまでに急成長した。
 
 さらに世界の諸課題の解決に関心を寄せる三木さんは、「将来は、国際的な舞台で活躍したい」と第2外国語の習得にも挑戦。昨年、フランス語検定5級に合格した。

友達と切磋琢磨

 生徒の英語学習を後押しする関西創価中が、特に力を入れて取り組んでいるのが「英検の全員受験」と「英語暗唱大会」である。
 
 英検は、3年生の8割以上が3級(中学卒業程度)を取得。これは全国平均の約2倍に当たる。さらに、準2級(高校中級程度)の取得者も半数近くに上り、それ以上の上位級に挑む生徒も多い。
 
 また「創立者杯」と銘打って行われる英語暗唱大会は、課題となる英文のスピーチを、原稿を見ずに披露し、きれいな発音や豊かな表現力を競う。クラス予選、学年予選を勝ち抜いた生徒たちの中から、最後は“学校一”を決める。

 「語学は、フレーズを覚えた分だけ、表現の幅が広がります。また、発音を良くするためには、音源を繰り返し聞く必要がありますし、自分で上手に発音ができるようになると、自然とリスニングの力も向上していきます」(村上教諭)
 
 こうした取り組みを通じて、授業以外での生徒たちの“英語熱”が徐々に高まってくるという。
 
 北海道出身で金星寮生の吉川清志さん(2年)も、入学してから、英語学習に励む先輩たちの姿に驚いたという。
 
 「学校の朝礼で英検1級に合格した生徒が紹介されていて、僕もどこまでできるかやってみようと、やる気に火がつきました。また、好きな本を紹介し合うビブリオバトル(書評合戦)で洋書を選ぶ友人や、暗唱大会でネーティブのように流ちょうにスピーチする仲間など、皆がそれぞれ切磋琢磨しながら英語を学ぼうとする雰囲気にも刺激をもらっています」
 
 吉川さんは昨年、2年生で英検準2級に合格。次なるステップを見据え、日々、挑戦の歩みを重ねている。

高校生からの触発

 「関西創価中の生徒が高い目標を持って学習に取り組んでいる要因の一つに、高校が併設されていることが挙げられるのではないでしょうか」と指摘するのは、関西創価高校で教鞭を執る英語科の山岸一紀教諭。アメリカ創価大学(SUA)をはじめ、海外の大学進学を目指す高校生の姿に憧れ、中学時代から高い志で英語を学んできた生徒たちを多く見てきたという。
 
 実際、昨年に関西高からSUAに合格した16人のうち、関西中の出身者は9人になる。また英語で地球的諸課題を研究する関西高の選抜プログラム「ラーニング・クラスター」を受講する生徒も、関西中の出身者が多いという。
 
 今年、SUAを受験した高校3年生の女子生徒も、関西中で学んでいた時にSUA合格者と話をしたことが、目指すきっかけになったという。
 
 「先輩が瞳を輝かせながら、SUA進学を志した理由を語ってくれたことを覚えています。高校では、英語以外の科目や部活など、やりたいことも増えてきました。中学時代に思う存分、英語に打ち込めたことが、SUA進学を目指す上で大きな土台になっていると感じます」
 
 ◇ 
 
 村上教諭は話す。
 「創立者・池田先生は折あるごとに、学園生に語学の重要性を訴え、学園生が“世界に羽ばたく”ことを心から期待してくださっています。AI技術が進歩する現代、機械が瞬時に翻訳してくれる未来もすぐそこまできています。だからこそ、生徒たちには、相手の文化に対する理解や、自分の意見を堂々と語るコミュニケーション力を養ってほしいと思います。今後も生徒たちに英語を使う楽しさを伝えながら、国を超えて友情を広げる『世界市民』を輩出していきたいと決意しています」
  
  
 ◆オンライン留学って何?

 関西創価中学校ではこれまで、SUAでの語学研修プログラムがあり、生徒たちの憧れの的になっていた。参加者は、英検3級以上を取得した2、3年生の中から抽選で選ばれる。ブラジル創価学園の中学生と共に研修を受講し、グローバルリーダーとしての視野を広げる。
 今年度、新たに3年生を対象に実施されたのが、語学学校の運営会社が提供する「オンライン留学」だ。これは、フィリピン在住の講師と一日中、オンラインでつながり、英会話を楽しむもの。語学の勉強だけでなく、現地の文化を知ることができる。

   
   
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